童貞を更新していくことが現代美術

とびきりかっこいいデザインだけでなく、還暦目前のプロ童貞としての独自の視点に基づく発言とライフスタイルも多くの業界人から支持されている山口明(58歳)の自伝『ワイルドチェリーライフ 山口明 童貞力で一億総クリエイター時代を生きる』。YouTuber、プロトーカー…パソコンも携帯も持たず、現代美術を体現するグッチーのリアルナウ!

お尻に虫がいるのかな

──山口さんはデザイナーを引退するかしないかぐらいの時期に、YouTuberになろうとしてた時期もありましたよね。

山口 ネット使ったことないのに、周りの人が「やりなよ」って言うから始めてみたんだよ。「アナーキー・イン・ザ・駄菓子」っていう駄菓子を紹介するやつと、いろんなゲストを呼んでトークする「明の部屋」ってやつね。どっちも数回で終わったけど(笑)。あと、チェリーガンっていう童貞ビジネスを始めたんだよ。全国童貞連合、略して全童連っていう団体があるんだけど、そこの会長が「会いたい」って接触を試みてきてさ。そこから立ち上がったプロジェクトなんだけど、名刺を作った時点で飽きちゃったんだよな。

──山口さんはどんな肩書きなんですか?

山口 「切り札」。

──なんですかそれ……。

山口 今はネットでTシャツ売ったり、あと他の奴が勝手に野菜売ったりしてるよ。わけ分かんねーけど。

──山口さん自身がデザインしたTシャツブランドも立ち上げましたよね。

山口 そうそう。ついにブランドを始めたんだよ。オールド・チェリー・パンクね。童貞がアパレル業界に進出だよ(笑)。あと、これは発案しただけなんだけど、「PICASOKKO」っていう子供のお絵かき投稿サイトとかね。石原まこちん先生の『にぎっとレゲエ寿司』もオレが原案っつーか、企画協力もやったし、デザイナーを引退してからのほうが楽しくて充実してんのよ。昔っからアイデアを出すことだけは好きだったしさ。今もずっと何かしら考え続けてるよ。なんでだろうな。子供の頃から空想好きで、突飛なことより実現できそうなことを考えるのが好きだったな。

──デザイナーを引退してからの山口さんは、ますます何をやってる人なのか分かりにくくなりましたよね。

山口 それが理想だよ。小学校の時の通信簿に、「山口くんは落ち着きがありません。お尻に虫がいるのかな」って書かれたんだよ。でも落ち着かないって別にいいだろ。職業だって転々としたっていいし、肩書きがひとつってのもありえないだろ? やっぱり人間、好きなことを仕事にしたいじゃん。で、オレはなにが好きかって、喫茶店でダベってることなんだよ。実際に、引退後のある時期から「漫画のアイデアをくれませんか?」って編集者に呼ばれて、金もらって喫茶店でだべったりさ。喫茶店のおしゃべりが金になっちゃってるのよ。もうこれは職業、喫茶店プロトーカーだな。

──頭の悪いネーミング(笑)。

山口 ゆくゆくは一時間に500円とか取って、喫茶店でレンタル童貞として話し相手になったりね。

──どんな人でも話ができる強みがありますもんね。

山口 そうなのよ。これ、なんでかっていうと、オレが「童貞です」ってカミングアウトしてから始まるんで、その人の趣味とか関係なくたいてい食いつくんだよな。あと、いくら下ネタを喋っても、しょせん童貞の下ネタだから、子供のたわごとにしか聞こえないんだよ(笑)。

──リアリティも危険性もないから安心ですね。

なにかにものすごく感動して生き方が変わったことはない

──一通り山口さんの人生を振り返ったうえで聞こうと思っていた質問なんですけど、これまで人生観に影響を受けた出来事ってあるんですか?

山口 オレ、なにかにものすごく感動して、そこから自分の生き方が変わったりすることってないのよ。そこはコンプレックスというかさ。例えば音楽でも、ビートルズの登場も少し上の世代だし、パンクが日本に来た頃はちょっと大人だったし、ヒップホップも大人になりすぎてたしな。異常に冷めてんのかな……。

──そこに関してはようやくちゃんと共感できますよ! それゆえ、何か面白いことを探すために本とか音楽とか映画とかにお金をつぎ込んでディグり続けてるっていうか。

山口 そうそう。オレもそんな感じよ。死んだ弟が言ってたんだけど、オレが家に帰ってくると、「なんかおもしれーことないか?」って毎日必ず聞いてたらしくてさ。「もう聞かないでくれよ!」って言われたよ(笑)。あと、オレは毎日のようにいろんな人に電話するんだけど、一言目はだいたい「最近なんか面白いことありました?」なんだよ。

──たしかに必ず言ってますね!

山口 まぁ何が面白いことなのかよく分かってないんだけどな。でも、ひとつ明確に面白いことがあるんだよ。

──なんですか?

山口 人の不幸よ。

──やっぱり悪魔だ!

山口 童貞だからか分かんないけど、イイ思いしてないっていうのが根底にずーっとあるんだよな。だからワイドショーとか週刊誌が大好きでさ。あれって基本的に人の不幸話しかないじゃん。楽しくってしょうがないよ。調子ノッてる奴が足をすくわれる話が大好物でさ〜。あと復讐劇ね。

──あ! マカロニ・ウエスタンが好きな理由はそこですか?

山口 そうなのよ。カッコいいだけじゃなく、満たされない気持ちを満たしてくれるじゃん。

頭が悪いから、知性を否定するしかない
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ワイルドチェリーライフ 山口明 童貞力で一億総クリエイター時代を生きる

山口明 /市川力夫

とびきりかっこいいデザインだけでなく、還暦目前のプロ童貞としての独自の視点に基づく発言とライフスタイルも多くの業界人から支持されている山口明(58歳)の人生を追い、劇的に変化を続ける男女問題、やがて人口の約4割が独身世帯「ソロ世帯」に...もっと読む

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コメント

MOBSPROOF 次回はついにcakes編集版の最終回! 1年以上前 replyretweetfavorite

iha_tobugame https://t.co/LTpbhqXa7n バレンタインデーですね。今日も更新日な人は芸術を磨いていきましょう。 1年以上前 replyretweetfavorite