日本はぬるま湯になりやすい
——いわゆる優秀とかエリートの概念も、海外とかでは変わり始めているんですか。
尾原和啓(以下、尾原) わかりやすい話で言うと、グーグルにしてもフェイスブックにしても、シリコンバレーの会社って大学なんか出てなくても就職できます。一部のリーガルとかのプロフェッショナルは別ですけど。
インターネットの画面の向こうにいる人が、中学生なのか60歳のお年寄りの方なのかなんて関係ない時代なんです。インターネットのなかで、何かプロジェクトをやって成果を出して、みたいなエビデンスがあれば、もういくらでも自由に動ける時代になっています。
——尾原さんは海外と日本を行き来されていますが、日本と海外のギャップを感じることはありますか?
尾原 日本ってどうしても言葉で守られていますから、言い方は悪いですけど、ぬるま湯になりやすいところがありますね。やっぱり例えばアメリカは広いし、国としての平均年齢がいまだに30代前半をキープできている。日本は47歳になろうとしているわけです。これでは、ガツガツして新しいものをやらないと外から来た人に負ける、という感覚は生まれにくい。逆に言うと、日本全体がぬるま湯だから、一人だけ熱い異分子がいれば、その人は貴重です。つまり、日本を使い倒せってことでいいと思うんです。
日本を使い倒せ!
小野直紀(以下、小野) 日本を使い倒せって、ほんとにそうだと思います。次は会社を、じゃなく、社会を使い倒せ、という思いは僕にもあって。僕がそれをやるかはわかんないんですけど、そのぐらいのことをみんなやれるようになってきてるんじゃないかな、と思います。
左:リモートロボでご登壇の尾原和啓さん 中央:著者の小野直紀さん 右:ブックライターの上阪徹さん
実際、僕の周りには政治家よりも発信力がある人もいますから、政治家よりも世の中に対する影響力を持ったりするようになってきている。そういう世の中で、自分はどう生きるのかと考えた時、会社はひとつのコミュニティだし、街とか家とか恋人とか、自分を形作る要素がいろいろあって、それをどう人生に掛け算していくかを考えていくんだろうなと思っています。
そうやって世の中を動かしていく人たちが増えてきている印象があるので、会社を使い倒せなんて、ちっちゃいこと言ってんなーって思われてるのかも(笑)。
尾原 いやいや、だからこそ社会を使い倒せ、日本を使い倒せっていうチャンスが増えてるってことなんだと思いますよ。全然ちっちゃくないと思いますけどね。
失敗を許容できる社会
——では、会社なり社会を使い倒すためには、どんなマインドセット、マインドチェンジが必要なのか。何が阻害しているのか、お二人の見解をお聞きしてみたいですね。
小野 一昨年、僕はシリコンバレーに4カ月くらいいたんですけど、起業家がいっぱいいるんですね、スタートアップの人たち。その人たち、みんな失敗してるんですよ。すごい損失を負ってるんだけど、「いや別に俺が借金したわけじゃないし」ってみんな明るいんです。まぁ天気がいいからかもしれないですけど(笑)。
日本で何十億って借金を個人でしたら、なんかもう立ち直れないというか、首くくるみたいな、そういう空気感が出そうですけど、まったく違う価値観なんだなーと思って。それってたぶん社会の包容力や許容力なんです。そういう感覚を持ってる人たちが集まってる。
もうひとつは、世の中動かすにしろ、会社動かすにしろ、一緒に動いてくれる人をいかに動かせるか、ですよね。僕は一回言っても聞いてくれなかったら10回は言おうと思ってたりするんですけど、要するに人との付き合いの中で物事が動いていくんです。
自分のやりたいことだけ言ったりやるだけじゃなくて、実現させるためには、人を動かしていかないといけない。そういう人へのリスペクトとか人への向き合い方っていうのがマインドセットとしてはすごい重要だし、僕もまだまだ足りてないなと思うところだったりはしますね。
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