※牧村さんに聞いてみたいことやこの連載に対する感想がある方は、応募フォームを通じてお送りください! HN・匿名でもかまいません。
「愛し合う二人のために♡同性婚を認めて!」
っていう感じの方がわかりやすいのはわかってますが、あえて言いたい。日本が同性婚を認めることは、配偶者暴力防止法、いわゆるDV防止法によって守られる人が増えることをも意味する、と。
ふたりの愛、の前に、ひとりの命。
同性カップルの間で、何か問題が生じても、そもそもふたりが同性カップルであることを周囲に言えないので、もちろん問題も相談できず、時には命に関わるレベルまでエスカレートしてしまう。このことは、「ダブル・クローゼット・フェノメノン」……日本語で言うなら、「二重閉じ込め現象」と呼ばれます。同性カップル間のDVについて研究した、ノースウェスタン大学フェインバーグ医学院、リチャード・キャロル教授による命名です。
日本の内閣府では、「女性に対する暴力」「配偶者間暴力」「男女間における暴力」といった言葉遣いでの調査が行われています。調査タイトルの時点で既に、日本における同性カップル間の暴力は見えづらくなっています。
日本の結婚制度を利用できない、法律上同性同士の関係にある人にも、DV防止法に基づく保護命令が出た例はあります。が、日本経済新聞で記事になるレベルのレアケースです。
同性を愛しながら、「二重閉じ込め現象」の中にある人が、どうすれば自由になれるのか。どうすれば、本当に自由に愛せるのか。こちらのご投稿を受けて、考えていきましょう。おそらくご本人たちは、この関係を暴力的だとは認識してはおられなかったのでしょうが……もしも男女間であれば、これは「愛の名を利用した支配」だと気づけたかもしれない、こちらのケースです。
牧村さん、こんにちは。いつも連載拝見しています。
私はバイセクシャルで、彼女がいます。私はオープンですが、彼女はLGBTの人に対して心無いことを言う人のことを気にしていて、彼女の親の前で私たちは友達同士として振舞っています。彼女と付き合ってから、自分がバイセクシャルであることが悪いことであるかのように感じてきました。
彼女は見た目が男性みたいで、女性に対する態度で「もしかしたらレズビアンなんじゃないか」って推測できるような感じの人です。夜遊び好きで、帰りが遅く、心配する私に嘘をついてまでクラブに行っていたこともありました。「自分はジェントルマンだから」と言って女友達に優しくしたり、「自分は女だから女友達といくら仲良くてもただの友達だ」と言って女友達と一緒に住んだりしています。元カノとも全部繋がってます。
私は彼女に余計な心配をかけたくないので、元彼・元カノとも連絡していません。彼女の親の前では、恋人ではなく友達として振舞っています。彼女の兄弟とも、あまり仲良くなって欲しくないと言われてしまいました。好意を寄せてくれる人が居ても、気まずくなって友達になんてなれません。一度新しく男友達が出来た時、彼女にすごく怒られて、その後からはあまり男性と話していません。
私が気になることを伝えると、彼女はいつも「理解してくれない」と言い怒り、私が泣いて謝ってしまいます。
私たちは多分別れた方が良いのだと思います。
私はどうしたらよかったのでしょうか?
お話を聞かせてくださってありがとうございます。
ちゃんと無事に別れられました?
・大声でどなる
・実家や友人とつきあうのを制限したり、電話や手紙を細かくチェックしたりする
このへんは、内閣府男女共同参画局公式サイト「ドメスティック・バイオレンスとは」のページに上記のままの表現で載っている立派なDV行為です。が、あなたは「泣いて謝って」おられた。「男友達と付き合うな、兄弟とも仲良くなってほしくない」と言われ、いわば二重閉じ込め状態にあった。その状態から、人に相談することで脱出した、あなたの勇気をまずは讃えたいと思います。
あなたが好きだった人を、DV加害者扱いしてほしくないかもしれない。
ならば言葉を変えますと、その人ね、あなたに甘えていたんだと思うんですよ。
支配って、甘えなんです。
人生初期の親子関係において、「言うことを聞くのが愛の証だ」と刷り込まれてしまうことが、人にはあります。
・勉強しなさい。私の子として恥ずかしい成績をとるな。
・うるさい。わがままばかり言って。誰が産んでやったんだ。
このような「勉強しろ」「黙れ」といった命令の根拠を、「そうすれば物事を知れるから」「そうすれば衝突が避けられるから」などといった、命令実行の結果想定される収穫ではなく、「自分の子ならば、やれ」「親を敬っているならば、やれ」といった関係性証明に求める。「言うことを聞く子はいい子」論が、いつしか「言うことを聞くのが愛の証」と信じる大人を作ってしまいます。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。