脳内経験 実践編
「発見する」→「疑問を持つ」→「感想や意見を持つ」→「疑問を持つ」→
この繰り返しこそが「脳内経験」。実際の経験だけでは、なかなかいっぱいにならない脳内データベースを、簡単に拡充できる方法だ。
人も社会も、疑問や発見や驚きを提供してくれる。いつでも、どこでも、誰でも、何に関してもできる。必ずクセになる。しかもタダだ。
その実例を2つ。
つり革自問自答
以前電車の中で「つり革」のことを考えたことがあった。 電車の車内にぶら下がるアレである。ふと見上げると急にソイツが気になった。名称からしてツッコミどころだ。
(なぜ「つり革」なんだろう? 重要なのはむしろ輪の部分だ。同じような形状のものを体操競技では「つり輪」と呼んでいる)
(つり革が必要なのは立つ客がいるから。通勤とも関係があるはず。事実JRの新幹 線や特急にはない。つり革が生まれたのは電車通勤の始まりの頃。もしかしたらそんな昔は革だけだったのかも←アタリ)
(輪の直径は決まっているのだろうか? あるとすれば誰の手を基準にしているのだろう? 革部分の長さや左右の間隔の基準は? 何kg くらいの負荷まで耐えられるのか?)
(値段はいくらくらいなんだろう? 一般人でも買えるのかな?)
(なぜ白が多いのだろう? 汚れが目立ちそうな気がするが。まあ、黒だと車内が暗くなるか)
(近頃は三角形のものや白じゃないものも見かける。変更の理由があるとすればなん なのだろう? 三角形にどんなメリットがあるのか)
(輪の握り方も人それぞれだなあ。輪の内側を握る人。上側に手をかける人。輪に 「グー」を通す人。一度ハンカチを巻いて持つ老婦人を見たことがある。潔癖症なのだろう。潔癖症の人はオレの好きなラーメン二郎なんて行けないな)
(子どもの頃ぶら下がったことがある。そう言えば電車の中で騒いだりふざけたりす ると、知らない大人からも怒られたな。今はよその子どものことは叱れない。「よその子どもを叱る」ことに関わる数値をまとめた統計などはないものか。そこから社会の変化を読み取れれば面白いかも)
(お相撲さんがぶら下がったらどうだろう? 大勢のお相撲さんが楽しそうにぶら下 がって揺れながら、全員で「マダムバタフライ」でも歌ったら面白いだろうな。テノ ールで)
(そんなテレビCMはどうだろう?)
(うーん、ないな)
ぼーっとつり革を眺め、そんなことを飽きずに考えていた。
「ついに、お相撲さんオペラCM化!」なんてことは今のところないが、そんな「脳内経験」している方が、スマホの画面に顔を伏せるよりも楽しいと思うけどな。
哀愁の消しゴム
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