吉田沙保里「骨折したのに出場」トークは美談か

女子レスリングで13大会連続世界一のギネス記録、オリンピックで3つの金メダルと1つの銀メダルを獲得、国民栄誉賞を受賞し、「霊長類最強女子」と呼ばれた吉田沙保里が、ついに引退を発表しました。テレビのバラエティ番組で軽快なトークを見せることも多い吉田ですが、そこに感じるなんとなく言いにくい違和感について考えます。

「気合いでどうにかなる」のだろうか

吉田沙保里が、トーク番組で、厳しかった父の話をする場面を何度か見かけたことがある。その鉄板トークのひとつに、中学3年生の全国大会に、骨折したまま強行出場した話がある。練習中に左手首を脱臼骨折してしまった吉田は、緊急手術を受け、手首の折れた部分を3本のボルトで固定した。当然、出場を見送るかと思いきや、その様子を見た父が「片手でも戦える」と言う。左手首からボルトが2センチほど出ていた状態だったので、母に連れられて病院へ行き、そんなことはできないと渋る先生を繰り返し説得、はみ出ている部分を削ってもらったのだという。結果は吉田の優勝だった。

レスリング競技からの引退を発表後、『メレンゲの気持ち』に出演した吉田は、この日も「片手で優勝」話をしていたが、実は、相手の選手は盲腸の症状が出ていたという。本来ならば休むところだが、吉田が休むとの情報を掴んで強行出場に踏み切ったところ、なんと、吉田も強行出場。「骨折vs盲腸」の対決になり、結局は骨折が勝った、とスタジオ中がゲラゲラ笑っていた。バラエティ番組で見せる、「元々バラエティ好きの人がバラエティに出ていることに喜びを隠せないでいる」様子を見せる吉田沙保里の佇まいが好きなのだが、この手の、「気合いでどうにかなる」エピソードを持ち出す様子はやっぱり苦手だ(持ち出すというか引っ張り出されるのだろうけれど)。

「女性としての幸せを絶対につかみたい」

吉田の母・幸代が書いた『泣かないで、沙保里 負けても克つ子の育て方』の後半には、「結婚して子どもを」という、ものすごく直接的な見出しが出てくる。「母としての願いは沙保里が妻として母としてその性格を生かし、女性として幸せになってほしいということです」とし、理想の出産年齢なども記されている。そういう決めつけ、よくない、と思う。

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日本の気配

武田砂鉄
晶文社
2018-04-24

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武田砂鉄

365日四六時中休むことなく流れ続けているテレビ。あまりにも日常に入り込みすぎて、さも当たり前のようになってしったテレビの世界。でも、ふとした瞬間に感じる違和感、「これって本当に当たり前なんだっけ?」。その違和感を問いただすのが今回ス...もっと読む

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コメント

GJnagaishi 尖った人は存在していい。ただし、尖って成功した事例を一… https://t.co/STQtusdsxx 5ヶ月前 replyretweetfavorite

eminyan75 ほんまに。 https://t.co/t5MCPE4Abq 5ヶ月前 replyretweetfavorite

tsuki_no_tsu モヤる理由が分かった(-ω-) 幸せは人それぞれなのになーほんと。 5ヶ月前 replyretweetfavorite

Neishan48 ほんとだよ。。。 5ヶ月前 replyretweetfavorite