第2回】閉じられた趣味的なもので終わらない、日本の「ものづくり」

「丸若屋のシツラエ」前回の第1回に続く第2回。伝統工芸から最先端工業技術まで、日本最高峰に特化したものづくりを続ける丸若屋代表・丸若裕俊氏が、雑誌「ELLE DECOR」編集長の木田隆子氏とトークイベントを開催。誌上で「丸若屋×井浦新“新しい手が、生み出すモノたち”」を連載する2人が、日本のものづくりを源流から最先端まで、歴史的背景や西洋との比較から捉え直す。

日本の「ものづくり」を牽引してきたもの

丸若裕俊(以下:丸若)
最近よく思うのですが、日本人にとっての「ものづくり」全般—つまり伝統工芸から最先端の工業製品まで—が、どこか閉じられた、趣味的なものと見なされているようになってきたのではないでしょうか。つまり、美しい「もの」を育んだり残していくことを美徳のように思っている。 日本の「ものづくり」は、その作業工程が複雑だから美しかったり、非人工的だから美しいといった、単純な図式で成り立っているのではありません。そこに存在するものが単純に美しいからこそ、海外から評価されているのです。わたしはこれまで伝統工芸から最先端工業まで、幅広く仕事をしてきましたが、美しいかどうかだけで評価される、言い訳ができないメディアで日本の「ものづくり」を魅せていきたいという思いが強くなりました。そんな矢先、ありがたいことに『ELLE DECOR』さんで俳優の井浦新さんと一緒に日本の美しい「ものづくり」を紹介する連載を持たせていただき、もう1年以上になりました。

                          

木田隆子(以下:木田)
丸若さんのお仕事の中にスペイン人デザイナー、ハイメ・アジョンとコラボした九谷焼がありますよね。日本の伝統工芸と海外のデザイナーのマッチングは80年代にたくさんあり、誤解を恐れずにいえば、すごく不幸な出会いも多かったように思います。海外のデザイナーが好きなものをつくって終わり、といいますか。結果として産地にはなにも残らないという残念な事例がしばしばありました。そういう時代を超えて、丸若さんが「日本の伝統工芸×海外デザイナー」という組み合わせををどう生かして、プロダクトに落とし込んでいくのか、とても興味がありました。

丸若
ハイメを選んだのも、海外のデザイナーを選ぼうと思って選んだわけではありません。九谷焼のもっているポテンシャルを最大限に活かしきれるデザイナーはどこにいるのだろう。そう思ったときに自然に思い浮かんだのが、たまたまハイメだったんです。ハイメは著名なデザイナーで、実績もありますが、昔のようにスターデザイナーを起用してその目新しさで利益を得ようという意識はありませんでした。
日本の美意識は、大きくふたつに分けられると思っています。
ひとつは〝和〟の風合いや、ちょっとした古い感じを日本的に見せる手法。もうひとつが、とても人間業とは思えないほど高い精度を極め尽くす手法です。
そして実際には、後者の美意識が日本の「ものづくり」を牽引し、高めてきたという歴史があります。この点をしっかりと伝えていかないと、〝和〟の風合い的なものさしで日本の美が測られ、ごく一部の趣味的で小さなものになっていってしまうのではないかと思っています。

世界が求める、日本人の美意識とデザイン感覚

木田
日本人には絢爛豪華な美意識もあるわけですが、「ものづくり」に関してはシンプルかつミニマルで、素材のよさを引き出していこうとする、すばらしいデザイン感覚を持っています。資源もなく、ものが少ない環境のなかで、その不便さをも愛でる余裕をもち、特有の美意識を生み出してきました。西洋の人間にとって、日本人の持つデザイン感覚は、20世紀になってから初めて出会ったものでした。日本人が自然に積み重ねてきた美意識が、時代が変わってゆく中で注目されるようになってきています。

                         

丸若
西洋が石材やレンガによる建築の歴史を築いてきた一方、日本は木材による建築の歴史を築いてきました。これは日本が不安定な国であることに直結していて、地震や、火事が起これば建物は崩壊し、焼失するわけです。
たとえば、江戸時代の浮世絵。なぜ江戸期の日本において浮世絵という版画が大量に制作されたのかは、火事によってすべてが失われる日本の風土と深く結びついています。不安定な時代の中で楽しもうとなると、短期間楽しめるものになり、必然的に無駄を省く「ものづくり」が必要でした。ですから、「コンパクト」「リーズナブル」「使い勝手」といった、現代で求められているものと江戸時代に求められていたものはすごく近しい関係にあるんです。

木田
日本と世界の関わりが増える中で、いまは一人ひとりがそれぞれの分野で試行錯誤を重ねる時期だと思います。具体的にいえば、伝統工芸はこれからもう一度進化していかなければならないし、サポートを必要としている伝統工芸は世界中にある。それぞれ暗中模索する中で、おもしろさを感じてやってみるしかないんですよね。

丸若
加えて、日本の技術者が海外で「ものづくり」をすることに挑戦してみる必要性も感じています。たとえば 「曲げわっぱ」は日本の秋田や長野でつくられますけど、フランスの森林の木でつくる「曲げわっぱ」にチャレンジしてもいいじゃないですか。世界中の人とコミュニケーションをとることで広がる新しい「ものづくり」を、これからもっと見てみたいんです。

                        

木田
丸若さんがやってらっしゃることって、日本をもう一回、自分がおもしろいと思う視点から捉え直す試みじゃないかと思います。

丸若
そうかもしれません。歴史を振り返ってみると、その時代における最高峰の技術と、昔のすばらしいものを組み合わせる試みは、うまくいっていた時期も多い。でも、いまは隔たりがあるような気がしています。そこを突破していく必要性を感じています。

木田
いまの時代に「よい」とされているものが、いつまでも「よい」とは限りません。過去に優れた職人たちが取り組んできた最高の仕事に立ち戻って、そのエッセンスを自由にくみ上げ、未来に向けてまったく違うプロダクトをつくっていくことができてもいいはずです。今後もぜひ、丸若さんと一緒になにか新しいことをやっていきたいですね。

※丸若屋の魅力をお伝えしたく、記事化をコルクが協力しました。



木田隆子:雑誌『エル・デコ』編集長
(株式会社アシェット婦人画報社)。 1990 年『フィガロジャポン』(株式会社阪急コミュニケーションズ、旧TBSブリタニカ) の創刊 に関わり副編集長に。同社にて1998年『ペン』の創刊に関わり、のち編集長に就く。 2006年3月からアシェット婦人画報社にて 『エル・デコ』の編集長に就任し現在に至る。
http://www.elle.co.jp/decor


丸若裕俊
:株式会社丸若屋代表、シツラエルヒト
1979年東京生まれ。2010年、株式会社 丸若屋を設立。 「時代に従うモノづくりではなく、時代を創造するモノづくり」をテーマに プロダクト・プロデュース、プロジェクト・プランニングを日本最高峰に特化した、 伝統工芸から最先端工業技術との取り組みまでを行う。
http://maru-waka.com

■雑誌「ELLE DECOR」
丸若氏が俳優の井浦 新氏と国内を旅する中で出会う"匠"たちを通して、今も存在する日本の美意識と偽りの無い心を伝える「丸若屋×井浦 新 "美しい手が、生み出すモノたち"」を連載中。
http://www.elle.co.jp/decor

■ iPhone5 cover 「Collect of Japan」発売中
レーシング界で名を馳せるモリワキレーシングと丸若屋がコラボレーション制作。
アルミ総削り出しオリジナルフレームに、鹿革の印傳プレートを合わせ、美麗かつ耐久性にも優れた最高峰のiPhoneカバーが誕生。
http://maru-waka.com/online-shop

■ 代官山 蔦屋書店限定セット(限定100セット)
モリワキ製フレームと、ヨーロッパ高級レザーにロゴを刻印した背面プレートが2枚入っています。
※お問い合わせは代官山蔦屋書店文具フロアフロア、または蔦屋書店オンラインショップから
http://tsite.jp/daikanyama/ec/tsutaya/word/103/%E4%B8%B8%E8%8B%A5%E5%B1%8B/

コルク

この連載について

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丸若屋のシツラエ

コルク

伝統工芸から最先端工業技術まで日本最高峰に特化したものづくり続ける丸若屋が、レーシング業界でトップランナーであり続けるモリワキレーシングと共に、日本の美を結集したiPhone5 cover「Collect of Japan」を制作。代...もっと読む

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コメント

gotoichi1003 自分の面白いと思うところから捉え直すことで、開いていく感じは、興味深いでし。→ 4年以上前 replyretweetfavorite