性同一性障害を救った医師の物語⑫

たとえ罰せられても医師として覚悟の上。国や法律ができる前から医療は存在してるんだ」。性同一性障害の手術を約600例執刀した医師・和田耕治の知られざる物語。 日本国内で性転換(性別適合)手術がタブーの頃から自らの哲学のもと、性に悩める患者を救い続けてきた伝説の医師が今蘇る!書籍「ペニスカッター」より、本文を抜粋してお届けします。

性同一性障害を救った医師の物語⑫


前回からのあらすじ
耕治の手がけた性転換手術は、瞬く間にニューハーフの中では有名になっていった。その分、社会からの偏見を受けることも多くなった。しかし、誰に脅されても屈しないという覚悟で、その身を性転換と美容整形に投じていく。

第9章 性転換・美容整形へ全力投球ー2

患者層の多様化

ニューハーフ以外の一般のGID患者の性転換治療をしたことで、耕治は一からまた性同一性障害、ことにMTFの場合について真剣に勉強していくようになった。

この頃からインターネットで直接色々な情報が得られるようになり、目を通した方がいい書物や文献、ビデオなども検索しやすくなっていましたし、TSやTV、ゲイの人のホームページも激増してきていました〔註参照〕。 平成九年〔一九九七〕末から当院のGIDの職業分類は多岐にわたるようになり、また個々人のパーソナリティの違いも様々であることが現実に痛感され、オカマでも何種類もあるのに、GIDも一筋縄で行くわけなく、患者さん一人一人を短時間で理解することがいかに難しい作業であるか思い知らされました。 ただそういうことは実際に患者さんに直接接してわかるようになることですから、患者層が多様化したことは自分の経験値を高め、理解力を増すことに大いに役に立ちました。

註 
TS( Transsexual 、トランスセクシャル):性転換を望む人。性転換手術を強く希望する。
TV( Transvestite 、トランスヴェスタイト):異性の服装を好む人。 なお、ここでは出てこないが、TSとTVとは別の概念にTG( Transgender 、トランスジェンダ ー)がある。こちらは異性装を好み、そのうえ社会的役割も異性として見られたい人。しかし、性転換手術までは望まない。また、広義には性別に違和感を持つ人の総称としても使われる。

独自のガイドライン

耕治はもともとこの手術を始める時から、倫理委員会などが参考にしたと言われるハリー・ベンジャミンの論文などを研究し、すでに自分なりにアレンジして取り入れていた。 耕治の独自のガイドラインについては、本人が具体的に書き残したものはないが、ナースが事情聴取で供述した記録がある。

1  精神治療は受けているか、または精神的におかしい異常な考え方がない人。

2   ホルモン治療を受けているか、急激なホルモンの変化は危険があるため、本人がホルモン治療をしてるといってもあやしい(男性ぽすぎる)感じの人には血中ホルモン濃度検査をする。和田院長的に信頼できない人には、何時間でもカウンセリングしたりして信頼関係のある人。

3   社会的に認められる年令で、社会的知識があって、自立したり前向きな人。生活保護を受けていたり、親や性同一性障害という病気にあまえ、仕事できないとか言う人には、しなくてよい説教をしていた(私的にはそんな人に説教してあげるのは、先生は優しいと思う。でも、そんな人の中には、説教をありがたく思わず、ひらきなおり、キレたりする)。

4   家族構成や境遇。学歴や職歴。友人関係。

5  好きな性別の対象(男と女の両方好きとか言う人もいれば、自分が女の体になってみたいだけで好きな対象は女だとか、女の体になってオナニーしたいとか色んな変な事を言う人がいたりすることもあるので確認する。変な事を言う人には手術は絶対しないが、そういった患者は自分を変だと思っていないので、とりあえずまずはじめに、 なぜ、手術をしたいか患者の要望や要求を聞いて、先生が判断している)。

6   他にも多くの和田院長的ガイドラインはあると思いますが、院長の判断で、その時その時で、トータル的に患者とかかわる。先生は「自分が生きている限り一生自分の責 任をもってアフターフォローをする」と言っています。 (ナースの供述より)

一九九七年に正式なガイドライン(性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン)が作成されたが、それを受けて、改めて同ナースは一人で最後まで面倒を見る耕治のやり方が、一貫した整合性がとれていたと支持している。

三年前、埼玉医大のガイドラインが出た時は院長が言ってる内容とほとんど一緒の部分を含んでいた。院長は、そのガイドラインより、一人で全てを管理・状況把握が出来るとの事だし、その方が一貫してると私も思う。やはりウチは、してはいけない手術という簡単に単純な法律問題とは関係しているようでも、日本の性転換に対する対応が他国よりも理解力がわるく、そういう意味で日本は遅れているとも、私的には感じた。

この時あらためて先生が、Sメディカルの時からニューハーフと知り合い、日本〔数十文字程度欠損〕の事を考え、ニューハーフの人達の為に金もうけは一切考えず、三〇〇万 ぐらいの貯金で、ニューハーフの人たちが生きやすくする為にだけの病院を設立した事、 患者さんのみんなに信頼され「神様」と言われて、患者さんにとって本当にオアシス的な病院を完成させた事に本当に感動した。 (同前)

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

この連載について

初回を読む
性同一性障害を救った医師の物語

和田 耕治/深町公美子

「たとえ罰せられても医師として覚悟の上。国や法律ができる前から医療は存在してるんだ」。 性同一性障害者の手術を約600例執刀した医師・和田耕治の知られざる物語。 日本国内で性転換(性別適合)手術がタブーの頃から自らの哲学のもと、性に...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

hojosha 絶賛発売中の新刊『ペニスカッター: 性同一性障害を救った医師の物語』本文をcakesにて公開中!公開から1週間は無料でお読み頂けます。→性同一性障害を救った医師の物語12『第9章 性転換・美容整形へ全力投球ー2』をUPしました。 https://t.co/0hFeRoHVJA 9ヶ月前 replyretweetfavorite