後編】サラリーマンが自分をブランド化するために大事なもの

アウラやタレントといった概念は、企業のマネジメント層や特別な個人にしか関係ない話と思っていませんか? いえいえ、これからの時代では、普通のサラリーマンだって自分をタレント化していく必要があります。白熱した座談会、いよいよ最終回です。

なぜ、日本のメーカーではカリスマが生まれづらいのか?

田端 日本でもエンターテイメントビジネスの分野では、タレントマネジメントが実現しているという話でしたが、よく考えたら、それはタレントがビジネスに及ぼす影響がきわめて大きいからですよね。
 映像業界や出版業界では、クリエイターの才能によって、売り上げが何百倍にもなるじゃないですか。

加藤 たしかに、才能の差がビジネスの成功に直結する分野ですね。

田端 でも、自動車業界で新型車を作るときに、新進気鋭のカーデザイナーを起用したからといって、売り上げが100倍も変わるなんてことはありえませんよ。売れても、せいぜい2倍とか、せいぜい5倍とか。

山口 合理的な機能価値が重視される商品では、タレント以外の部分が重要になりますね。その点、エンタメの商品価値は情緒的な価値だから、タレントがすごく影響する。

田端 機能的価値が大きいんだったら、別にバングラデシュで安く従業員を雇って作るのと一緒だという話になって、結局コモディティ化してしまいますね。だから、タレントマネジメントの必要性が相対的に低い。

山口 合理的に考えたらそうですね。

川上 そのバランスをどう取るかってことなんでしょうね。次に本を書くときは、その辺りを掘り下げてみましょうか。

サラリーマンがタレント化するには「俯瞰力」が大事

田端 タレントマネジメントももちろん大事ですが、日本人の場合はやっぱり、自分がどうタレント化していくかを考えるのが第一ですね。コモディティ化していく社会のなかで立ち位置を守るにはそれしかない。

加藤 でも、みんながみんなタレント化できるわけではないですよね。普通のひとはどうしたらいいですか?

山口 タレントってやっぱり自然と生まれるものであって、育てるものではないんですかねえ。

川上 うーん、僕は、初めは自然発生的に生まれるものだとは思っているけれど、タレントの芽をきちんと見つけて大きくしていく段階はあると考えています。マネジメントができる人は、そういう意味でも必要なんです。

加藤 ああ、育てるのがきちんとできるなら、タレント化できる人はもっと増えるのかもしれないですね。

田端 日本はそもそも、タレントを尊重しようという空気がまだまだ未発達ですから、そこを何とかしないといけませんね。

山口 そういえば、田端さんって、まさに組織の中にいるタレントだと思うんですけど……。

田端 えっ?

加藤 たしかに、田端さんはタレントですね。

田端 何か恥ずかしいですね(笑)。

山口 田端さんは、ご自身の所属されている組織とは関係なく、自由に活動をされていますが、その中で困ったことなどはありましたか?

田端 自分の場合は、ある種、治外法権的な扱いを頂いているせいか(笑)、そこまで窮屈な思いをしたことはないんですよ。
 逆に、会社の足を引っ張っていないか心配で、「迷惑なことがあったら言ってください」って聞いていますね。例えばですが、「もうスマホあるからカメラいらないよね」って僕がつぶやいているときに、ウチの広告営業マンが、広告代理店さんと協力して、カメラメーカーにLINEの広告営業をかけている可能性とかあるわけで。

山口 ああ、コンフリクトは心配ですね。

田端 僕、会社にややこしい感じで、楯突くつもりまではまったくないので。だからコンフリクトがあったようなときにはTwitterとかの発言をさりげなく、後で削除したりする場合もあります。

加藤 さすが。そこはきっちりされている(笑)。

田端 まあ数週間もしたら、忘れてうっかり同じことを言ってしまったりもするんですけども(笑)。でも、そういうガチで好き勝手言っているイメージ自体は、自分のブランディングに重要だと思っているんですよ。そういうイメージがあるからこそ、僕が自社の製品やメディアを褒めているときにその本気が分かってもらえるというか。

川上 田端さんのお話を聞いて実感しましたが、自分をちゃんと冷静に俯瞰することができる人でないと、タレント化したりアウラをまとったりすることはできない気がしますね。

田端 それはそうだと思います。やっぱり、自分の立ち位置を把握できてこそ、タレントやアウラを発揮できるので。

山口 個人もそうだし、企業もそうですよね。まだ自分たちのブランド力が高いと思ったまま衰退していく企業は多い。これは、やっぱり自分の会社のことを客観視できていないということだと思います。

川上 だから、KPI(※)のようなものが必ず必要なんですよね。
 ちょうど6月から日経ビジネスで企業のブランド担当者の方々との対談連載が始まったんですよ。その連載で、いろいろなブランドの担当者に山口さんとインタビューをしているんですが、やっぱり「外から見たKPI」のことが必ず話題になります。

※重要業績評価指標(key performance indicator)企業目標やビジネス戦略を実現するために設定した具体的な業務プロセスをモニタリングするために設定される指標のうち、特に重要なものを指す。

山口 出ますねえ。

田端 あとは、タレントには覚悟も必要だと思うんですよ。雑誌の編集長とかは、例えがちょっと悪いかもしれないけど、組長の代替わりぐらいの感覚は持った方がいいです。

山口 代紋を背負う気持ちで、ですよね。

川上 前回もちょっと話しましたけど、プラットフォームの責任者も、それくらいの覚悟が必要ですよね。あくまで「透明なガラス」ではあっても、やはり「代紋背負っています」という意識がないと。

ライブドア事件の結果、ホリエモンは最強の「アウラ」を身につけた

加藤 では、個人が個人で活動する場合はどうでしょうか。やっぱり、代紋を背負うぐらいの覚悟が必要ですかね?

川上 それはそうですよ。特に僕みたいにメディアに記事を書いている人間は、常に自分の名前という代紋を背負っているわけです。「その代紋で自分は何をなしたいのか」をたえず意識していなければならない。

田端 その点で言うと、やまもといちろうさんは本当にすごいと思っています。ほら、この間なんて、アブラハム社に「いつかはゆかし」の件で公開質問状を送りつけて、自分の会社名義でプレスリリースまで出したじゃないですか。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1303/07/news127.html

加藤 ああ、あれは格好よかったですね。

田端 本当にシビれました。ただグチグチ言っているんじゃなくて、自分の主張を実際の行動に反映している。最悪、訴えられることもあるわけで、そういうときに100万でも500万でも払ってもかまわないという姿勢、本当に格好いいですよね。

山口 経済合理性を越えていますね。

田端 アウラですよ、あれは(笑)

山口 他の人にはちょっとできないと思いますけど……(笑)。

田端 あのガチンコ感はマネできないですよね。堀江(貴文)さんなんかもそうですけど。

川上 ああ、たしかに。

田端 そうそう、堀江さんに関しては、以前、岡田斗司夫さんが「『ホリエモン』という個人ブランドにとっては、ライブドア事件は超ラッキーなことだった」と言っていて。

加藤 おお……その発想はなかったですね。

田端 「あんなに知名度を上げてくれる美味しい話はないよ」と。僕はライブドアの元社員だからさすがに同意はできないんですが(笑)、たしかに否定できないところがある。

山口 アンチの強いブランドほど、存在感が引き立ちますしね。

田端 ストーリーテリングとしては、最強ですよね。

川上 投資の世界では国に逆らうなというのは基本鉄則なんで、絶対マネはできませんが。

加藤 不経済な部分がでかすぎますからね。

川上 それでも、究極のラスボスである国を相手にした人であるということは、確実に堀江さんのアウラを強くしたとは思います。その辺の話も、ちょっと書いてみたくなりました。

田端 いやー、メディアだけでなく、企業を語るにしても個人を語るにしても、アウラに触れずにはいられない時代ですね。

山口 アウラとメディアの話から始まって、アウラと企業、アウラと個人、「アウラ」づくしの2時間でした。

川上 次の本を書きたくなるネタばかりでした。

加藤 そのときにはぜひまた座談会を開催させていただければ!

 

 

 

プラットフォーム ブランディング プラットフォーム ブランディング
川上 慎市郎,山口 義宏
ソフトバンククリエイティブ
 


 

 

MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体 MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体
田端信太郎
宣伝会議

 

ケイクス

この連載について

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アウラ」の時代がやってきた—田端信太郎×川上慎市郎×山口義宏座談会

山口義宏 /田端信太郎 /川上慎市郎

cakesで「R30::リローデッド」を連載中の川上慎市郎さんが、ブランド戦略コンサルタントの山口義宏さんとの共著『プラットフォーム ブランディング』(ソフトバンク パブリッシング)を出版しました。本書では、海外の強大なブランドや新興...もっと読む

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コメント

Akio9304 https://t.co/GP1rIyG5Ch 12ヶ月前 replyretweetfavorite

mipo518 田端 でも、そういうガチで好き勝手言っているイメージ自体は、自分のブランディングに重要だと思っているんですよ。そういうイメージがあるからこそ、僕が自社の製品やメディアを褒めているときにその本気が分かってもらえるというか。 https://t.co/9S9vRvODkg 12ヶ月前 replyretweetfavorite

blogucci そういえばタレントマネジメントの話は、昔の記事でも触れておりました…→ 約3年前 replyretweetfavorite

yoshnor 堀江さんがライブドア事件で最強のアウラを手に入れたってはなしは、斬新だった > 約5年前 replyretweetfavorite