私達、100人前のごはんをつくっていました

10年間、山小屋で働いていた小屋ガールの吉玉サキさん。食事を提供する際には、一度に70人分もの食事を作ることも。その裏側では食欲旺盛な登山客におかわりを食べ尽くされそうになるなど、スタッフのてんやわんやが幾度もあったといいます。

突然だけど、あなたは最大で何人分のごはんを作ったことがあるだろうか?

マウンティングしたいわけじゃないけど、山小屋時代の私は100人分以上のごはんを作っていた。もちろん、ひとりで作るわけではない。スタッフみんなで協力して作る。

スタッフにとって客食(お客様の食事)の提供は一日のメインイベントで、無事に終えられると「あ~、今日もいい仕事ができた!」とほっとする。

山小屋を辞めた今も、あのほっとする瞬間は少しだけ恋しい。

とはいえ、またあれをやるとなったら……考えただけでぐったりするのだけど。


70人分の料理をアツアツで提供。その裏側は……

食事のとき、お客様から「これって手作り? それとも冷凍食品?」と聞かれることがある。

そのたびに曖昧に誤魔化していたけど、ぶっちゃけると業務用の冷食(冷凍食品)も使用している。

私がいた山小屋は、夏山シーズンの週末だと100人以上、平日でも60~80人くらいのお客様が宿泊する。それに対し、スタッフはわずか7人。食事作り以外の業務も多々あるわけで、オール手作りは叶わなかった。
※私は複数の山小屋で勤務経験があり、今回は中規模な山小屋でのことについて書いています。もっと大規模な山小屋で働いたこともあります。

では、その人数でどうやって100人分以上のごはんを作るのか?

端的に言えば、流れ作業だ。

昼のうちに仕込み(キャベツの千切りとか、煮物を作っておくとか)をしておく。多いときだと10玉ものキャベツを千切りにするわけで、そういうときは電動の千切りマシンを使う。

夕食が始まる1時間前に盛り付けを開始。作業台にずらりと皿を並べ、ひとりがキャベツを盛ったら次の人がトマトを盛っていく……といった感じ。

メインは冷食なので、人数分を業務用の巨大な鍋に入れて湯煎する。

食堂のスペースには限りがあるので、一度に食事をとれるのは70人まで。お客様がそれより多い日は、食事を複数回に分ける。

つまり、多くて70人分の冷食を一度に湯煎・開封・盛り付けするわけで、これはなかなか手間のかかる作業だ。

だから、なるべくなら時間に余裕を持って取り掛かりたいところ。だけど、食事時刻の10分前までは冷食を湯煎の鍋から出さない。料理をアツアツの状態で提供したいからだ。

10分前になると、みんなスイッチが入ったように真剣な目つきになる。厨房に張りつめる、「少しでも気を抜くと間に合わないかもしれない」という緊張感。

息を止めるようにメインを盛り付け、完成した皿から食堂に運んでいく。このときのベテランスタッフのスピードと集中力は凄まじいものがあり、新人はアワアワしてしまうことが多い。

すべての皿が揃ったところで、私が食堂のドアを開ける。

それが時間ぴったりだと、「どうよ、この完璧なタイミング!」と誇らしい気持ちになった。


彼女ができて米が炊けなくなった?

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小屋ガール通信

吉玉サキ

第2回cakesクリエイターコンテスト受賞作! 新卒で入った会社を数ヶ月で辞めてニート状態になり、自分のことを「社会不適合者」と思っていた23歳の女性が向かった新天地は山小屋のアルバイト。それまで一度も本格的な登山をしたことのなかった...もっと読む

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コメント

etozudeyoshida 📷 https://t.co/XGJTiPRLcp https://t.co/qCooqS53Ra 9ヶ月前 replyretweetfavorite

__comfort__ 心がほんわかするエピソードでした 9ヶ月前 replyretweetfavorite

caramelian 主婦歴7年、この前息子が初めて私のハンバーグをうまいうまいと食べてくれて泣きそうになった。 おかわりされると嬉しいよね。 9ヶ月前 replyretweetfavorite

tokizo 山小屋は本当にありがたい! そこで働く方々は神! 9ヶ月前 replyretweetfavorite