歴史が変わる?

【第12回】2019年から1989年にタイムスリップしたトリコは、この時代の流れについていくべく、以前よりニュース番組を見るようになった。だが、たびたび「ゴゴゴゴ」という耳鳴りが聞こえてくるようにもなった。まさか、自分がこの時代に来たことで、歴史が変わることはあるのだろうか。

12 コンクリートとヘッド博士

 私は以前よりニュース番組を見るようになった。この時代の流れについていきたかった。勉強はさっぱりだったが、記憶力は良かった。つまらないことほどよく覚えていた。私はこれからこの時代に起こる事件や出来事を思い出すたび、できるかぎり正確に、ノートに書き留めるようにした。

 あるときのことだ。東京都足立区で、女子高生が行方不明のニュースを伝えていた。私にはピンときた。あの事件だと。

 少年四人が少女を監禁し、殴り、犯し、火をつけて、また姦した。ソドムの市は四十日間続いた。少年たちは生きた性玩具で遊ぶことに飽きると、ドラム缶に入れ、コンクリートを流し込み、埋め立て地に棄てた。逮捕後、少年たちは未成年のため、テレビや新聞は実名報道を控えたが、一部週刊誌が顔写真とともに掲載した。そのうちのひとりが、私の友達と同姓同名だったから、はっきりと記憶していた。

 事件が明るみに出るまで時間を費やした。自宅で少女を監禁していた少年の親が黙認していたためだ。しかし一本の通報から、ようやく警察が少年たちの家にガサ入れして逮捕に繋がったと、何かで読んだことがある。

 そのときだった。またしても、ゴゴゴゴと自分にしか聞こえない耳鳴りが遠くから吹いてきた。

 —まさか。

 私がこの時代に来たことで、歴史が変わることはあるのだろうか。

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