第1回】”第一の革命” ~世界の勢力図が一変

必死のロシア、焦る中東・豪州 シェールガスが起こす地殻変動

 今年の2月、東京・竹橋の丸紅本社に、凍てつく眼光を放つ屈強の男が足を踏み入れた。「まるで恐竜のような顔つきだ……」。出迎えた丸紅関係者は思わず身をすくませたという。
 男の名は、イーゴリ・セーチン。現在は、ロシアの国営石油会社「ロスネフチ」の社長を務めるが、もともとはKGB(旧ソ連国家保安委員会)に所属していたとされるプーチン大統領の側近中の側近だ。昨年までプーチン政権で副首相も務めていた。
 セーチン社長はその後も、都内のホテルなどに、伊藤忠商事や国際石油開発帝石の幹部を呼び、次々と面談を行った。
 ロスネフチは昨年、石油・天然ガスの生産量で石油メジャーの米エクソン・モービルを抜き、世界1位となった成長企業。そんなロシア政府の中枢を担う企業の社長がなぜ、日本を訪れたのか。

 LNG(液化天然ガス)の日本への輸出──。日本は世界最大のLNG輸入国で、その巨大市場に狙いを定めているのだ。

 具体的には、現在はもっぱら石油を生産している油田「サハリン1」で産出する天然ガスを、サハリン近郊の港町デカストリから輸出することが構想の一つだった。
 約1カ月後の3月13日。東京・霞が関の経済産業省では、茂木敏充大臣に向かう、ロシアのノバクエネルギー担当相の姿があった。
 その傍らには、1人の男がどっしりと腰かけていた。会談では、口を開くことはなかったが、ノバク大臣が持ち出したLNG事業への協力の話題をうなずきながら聞いていた。

 この男は、ガス会社大手「ノバテク」のミケルソン社長。同社はプーチン大統領の旧友で、長者番付で世界10位に入る大富豪のティムチェンコ氏が大株主となっており、これまた政権との関係が深い。
 ノバク大臣らはその後、自ら三井物産、丸紅、東京電力などの幹部と面談し、北極海に面したヤマルのLNGプロジェクトの売り込みを行った。

 同じ時期に、またもやロシアの国営ガス会社「ガスプロム」のシンガポール支社の担当者が、複数の電力会社を訪問した。
 さらに、ガスプロムは4月8日と次の週に、それぞれ東京と福井に、別の幹部らを訪問させる方向で調整を進めている。
 ガスプロムは、極東ウラジオストクに年間1600万トンのLNGを生産するプロジェクトの立ち上げを決め、昨年秋には日ロ両政府が覚書を締結。現在は買い主の確保を急いでいる。

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