私には関係のない世界だと思っていた
私が中学生だったころ、父の実家で親戚の集まりがあった。20人ほどいただろうか。普段はあまり顔を合わせないメンバーもいたので、私は帰りの車の中で「奥に座っていた人はだれ?」「その隣の女の人は?」などと父に質問していた。その話の流れで、とある親戚のおじさんについて父がこんなふうに言った。
「あのおじさんは、若い頃に奥さんを亡くして、そのままでは今後の人生が寂しいから後妻を迎えたんだよ」と。
そのとき、私は反射的に「え、そのおじさんの後妻、かわいそう!」と思った。
そして帰宅してからも、「寂しいから後妻」というフレーズが頭の中をぐるぐるとめぐっていた。
「後妻って寂しいからという理由で…つまり妥協で選ばれるものなんだな」
「よく考えたらそうだよね。第一希望は前妻であって、前妻が亡くなっちゃったから第二希望で迎えるのが後妻というものだもんね」
「つまり、前妻の穴埋めポジションってことじゃん」
「まあ私には関係ない世界の話だけど」
そう思いながら、すやすやと眠りについた。
——その十数年後、まさか私がその「後妻」という立場になるとは思いもせずに……!!
cakes読者のみなさま、はじめまして。私は栗村さやかと申します。30歳になったばかりの専業主婦です。2018年の秋に13歳年上の夫の後妻になりました。
夫と出会ったのは、遡ること約1年半前。当時の夫は前妻を病気で亡くしたいわゆる「没イチ」の状態で、その後私と恋愛関係になりました。
後妻は「かわいそう」?
あなたは、結婚相手を亡くした人が、新たなパートナーと再婚する「死別再婚」やあるいは「死別後の再婚妻」についてどのようなイメージをお持ちですか?
中学生のころの私のように「寂しいから選ばれるもの」「前妻の代わり」「後妻ってなんか気が弱そう」「かわいそう…」というイメージをお持ちの方も多いですよね。
また、日本では「病気の妻を看取る過程」をテーマにした映画なども公開されており、そのどれもが感動的でドラマチックな結末を迎えるものばかり。そういった作品のイメージから、「パートナーを亡くした人は、亡くなった相手を一生思いながら生きていく」というのが美談とされるムードもあります。
私自身も、夫に出会うまでは、「(ある程度若い男女が)死別すること」や「死別後の再婚」をどこかフィクションのような、別の世界のことのように感じていました。
死別を経験した男性の後妻になるということは、「私は前妻の代わりです」というレッテルを貼られにいくようなものです(と私は思っていました)。あなたは自ら進んでそのような「駅から遠い中古物件(しかも亡霊つき)」と結婚したいでしょうか?
「できれば駅チカ新築マンションがベター」が本音だと思います。
しかし、私は、そんな夫を自ら選んで結婚しました。そして、ほんの少し前までは前妻への嫉妬から多くの揉め事があり、「やっぱり結婚をやめたい」と思ったり、「彼の心の中にはずっと前の奥さんがいるんだろうな。ツライ」と思いつめたりする日々の連続。しかし、今はそれらをすべて乗り越えて幸せな結婚生活を手に入れています。
この連載では、そんな私から、死別再婚妻予備軍のみなさんに向けて、「死別再婚だからこそ起きたトラブル」と、「それらをどう乗り越えてきたか?というアイディア」をお伝えしていきます。
また、この考え方は、「死別後の後妻」という括りにとどまらず、たとえば男性側に離婚歴があるケースにおいて、「うちの旦那、いまでも、前の奥さんを想っているフシがある!」という疑いの目をお持ちの方や、あるいは「私の彼氏、元カノが忘れられてないっぽい。どうせ私なんて…」という不安をお持ちの女性たちにとっても、応用ができるものだと思います。
私は、すべての「前の女よりも愛されたい」女性たちを応援します。
次回「奥さんをなくした彼と出会ったときのこと」は2/18更新予定。お楽しみに!