クライシスを超える「カタストロフィー」

国民の半数が被災者になる可能性がある南海トラフ大地震。それは「来るかもしれない」のではなくて、「必ず来る」。関東大震災の火災、阪神・淡路大震災の家屋倒壊、東日本大震災の津波。その三つを同時に経験する可能性がある。首都圏を襲う大地震も懸念される。
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日本から始まる世界恐慌

 南海トラフ巨大地震は、今までの地震の延長で考えてはいけません。これまでがリスク(危険)やクライシス(危機)だとすれば、次はカタストロフィー(破滅)になるでしょう。
 通常の災害では、災害復興で建設業を中心に内需が潤い、産業が再生します。しかし、南海トラフ地震では国内の産業がズタズタになり、復興するための人的、物的資源がなくなる可能性があります。

 さらに最悪のケースを考えてみましょう。南海トラフ地震の前に都心を直撃する首都直下地震が来ることです。歴史的には十分あり得ます。江戸時代中期には、1703年に元禄の関東地震が起き、その4年後に宝永の南海トラフ地震が発生、続いて富士山が噴火したという歴史を忘れてはなりません。

 現代の東京を直下地震が襲ったら、最悪、首都機能は壊滅。政治、経済は麻痺します。東京の復興は簡単には進まないでしょう。東京は海抜ゼロメートル地帯に100万人以上が住んでいます。万一、沿岸の堤防が壊れて水が入ると、街は水没。災害後には、そこから水を出さなければなりませんが、そのためには堤防をもう一度つくらなくてはなりません。ポンプ車で水を出すのは相当に大変です。道路や水道が復旧するまで、どれだけの時間とコストが掛けられるでしょうか。事実上、その地域は放棄して、もう二度と人が住めなくなるかもしれません。

 そんな中で東海・東南海地震が起きたら……。
 世界はその後に南海地震が続くと警戒。まず経済面で日本は売り叩かれます。株安になり、日本の高度技術を海外企業が安く買い叩くかもしれません。そうすれば、日本そのものの衰退につながるでしょう。耐震化などによって地震被害を減らし、軽く大地震をいなして、さすが日本だ、と思ってもらうしか道はありません。

 私は、日本の屋台骨でもある中部地区の製造業をいかに残すかがカギだと思っています。産業立国の我が国では、製造業で稼いだお金でサービス業が成り立っています。
 来たるべき震災に備えて周到な対策をしておかなければなりません。工場を安全な場所に移転したり、堤防や建物、生産設備を徹底的に耐震化したりして、企業活動への影響を最小限に食い止め、次の地震が来ても大丈夫だと世界に見せ付けることが必要です。

 国難とも言える被害に対応するためには、災害対応や復興にも「トリアージ」が必要です。トリアージはもともとブドウの選別を意味するフランス語で、災害時に多数の負傷者を選別し、治療の優先順位をつける行為です。赤や黒のタグを負傷者に付けて、助かる可能性の高い重傷の人から優先します。
 カタストロフィーのさ中、優先順位をつけ、大事なところを選別するという考え方。非情ではありますが、仕方ありません。

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次の震災について本当のことを話してみよう。

福和伸夫

国民の半数が被災者になる可能性がある南海トラフ大地震。それは「来るかもしれない」のではなくて、「必ず来る」。関東大震災の火災、阪神・淡路大震災の家屋倒壊、東日本大震災の津波。その三つを同時に経験する可能性がある。首都圏を襲う大地震も懸...もっと読む

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