「そうね。私もまた同じ航空会社の飛行機に乗って沖縄に行くのは嫌だから、フェリーで行こうかしら」
アキは事もなげにそれを言ったため、ユウカは目を丸くした。
「じゃあ、アキさんも残るんですか?」
「1、2日なら、居てもいいわよ。ユタばあさんには、電話して伝えればいいだけだし」
「よかったぁ。私も一人で残るとなると不安だったんですよね」
アキは喜ぶユウカを傍目でみながら、ベッドで寝ている女の子に視線をうつしていた。
「あなた、お金あるの?」
「……ない、と言ったらくれるの?」
「正直にいいなさい」
ユウカは2人のやり取りを見ていた。 ベッドで寝ていた女の子はそばにあったバックから財布を取り出して数枚のお札を数えた。
「たぶん、沖縄についてから実家までの交通費くらい」
「保険証はあるの?」
「あるけど、実家に置いてある」
「じゃあ、鹿児島の病院へはとりあえず自費で入院しないといけないのね。わかったわ。あなたも同じ妊婦だし、見て見ぬふりもできないから、ここの入院費はユウカと私で払うから、安心しなさい」
「え、私も……?(アキさんが払ってくれるかと思ったのに)」
「ユウカ……。人助けができて本望でしょ」
アキとユウカのやり取りをみていたベッドで寝ていた女の子が、ユウカの手をグッと握った。 ユウカは、自分が頼りにされたと思い、少し強くなった気がした。 自分のことより人のことの方が一生懸命になってしまうユウカのオバサン気質を、女の子は見抜いていたのかもしれない。
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