美しい“ひれ”には要注意(写真はオニカサゴ)
当連載でも紹介してまいりました通り、ぼくはこれまで野食ライフを送る中で、何度も「痛い目」にあっています。
会社で就業中に肛門から油を漏出させたり、ウツボに咬まれて深手を負ったり、毒キノコを誤食したり、あるいは毒とわかっておきながら食べて中毒したり(最後のは完全におバカですが)など、失敗談には事欠きません。
そしてこれらは、いずれも普通の食生活を送っていれば出会わずに済む被害と言えます。というかごく一般的な注意力と危機管理意識をもっていさえすれば、野食をされる方でもこのような事故には合わないものです。あくまで茸本が油断しすぎなだけであるとご理解ください。ダイジョウブ、ヤショクコワクナイヨ!
一方で、野食家に限らずとも、自然の食材を扱う中で危ない目に遭うことはないわけではありません。
アニサキスのような人間がコントロールできない寄生虫や微生物による被害がわかりやすい例ですが、そうでなく野食材そのものでも危ない目に遭うことはあり得ます。
彼らは家畜と異なり、ヒトに食べられるために存在しているわけではないので、それぞれが自分の身を守るための武器を持っているものです。例えばそう、あなたがさきほど鮮魚店で購入してきたその魚のひれ、やたら尖っているようには見えませんか……?
刺毒魚の棘は予想以上に危険
ちょっと待て! そのひれ大丈夫?(写真はミノカサゴ)
ぼくは数年前のある日、近所の海に魚釣りに行きました。
冬の夜風に吹かれ凍える中、釣れてきたのは、20㎝ほどのカサゴ。小魚ながら食味の良さから人気が高く、活け物はちょっとした高級魚です。喜びながらクーラーボックスにしまい、持ち帰ってきました。
帰宅し、死後硬直が始まりつつある魚体を捌こうとして、鱗を取っていた時。
鱗取りを持つ手が滑り、背びれの先端がドスっと人差し指に刺さったのです。
短く鋭さもないように見えるけど
見た目にはそうでもないカサゴのひれですが、実はちょっと触っただけでも刺さるくらいに鋭いようで、水仕事でふやけた皮膚に容赦なく突き刺さり、鮮血が滲みました。
慌ててキッチンペーパーでふき取り、そのまま圧迫止血をすると、1分ほどで血は止まりました。ほっと一安心……
……ところがそのころになると、なぜか傷口を中心に「ズンッ……!」と重低音を感じるような鈍い痛みが発生。はじめは「傷口に海水が染みているのかな」程度に思っていたのですが、その割にはなぜか痛みに波があります。
その痛みは徐々に強まり、しまいには細かく連続する強烈な鈍痛に変わりました。