お金をかけると、覚悟が決まる。

会社では新人コピーライター、社外ではデザインスタジオ「YOY」(ヨイ)の活動、と同時に2つの事柄に全力を懸けて取り組むことになった小野さん。その根底には小野さんの本能的な欲求、そして覚悟がありました。会社の外で自分の力を試すにあたって大切な2つのポイントとは? 話題の書籍『会社を使い倒せ!』から〈STAGE1 本気でやりたいことを見つける。〉編の第7回をお届けします。

お金をかけると、覚悟が決まる。

 YOYに全力を尽くすことの証明は、もうひとつありました。

 それは、お金をかける、ということです。

 お金をかけると本気になるからです。

 実際にモノをつくるわけなので、一見ちょっとしたものでも、プロトタイプをつくるのには、結構な額がかかります。また、出展するのにも100万円以上かかりました。小さなお金ではありません。だから、必死になります。費用はもちろん自腹でした。

 3年で使った費用は、1000万円を超えたと思います。一人500万円。それなりの金額です。


 YOYでお金儲けをする、という考えも持つことはありませんでした。幸い会社員なので、給料は毎月振り込まれますし、お金に困ることはない。

 そもそもそんなにお金が必要なのか、という思いも持っていました。

 僕は、仕事はやりたいことを実現するための手段だと思っています。

 仕事自体が目的になったり、食べるために働くという考えはまったくありませんでした。それこそ食べるだけなら、どうにでもなると思うのです。

 僕が求めているのは、本能的欲求です。自分がいいと思って全力でつくったものを他の人にもいいと思ってもらうこと。

 それは、僕にとってものすごく気持ちのいいことでした。その本能的欲求に素直に従いたいと思ったのです。

 「世の中を変えてやる」とか、そういうことを考えていたのでもありません。

 結果的に世の中にいい変化をもたらすことができればいいと思っていますが、そんなに大きな野望があるわけでもない。

 でも、子どもが喜んでくれたり、おばあちゃんが「これ、欲しい」と言ってくれたりするものがつくれることこそが、喜びだったのです。

 だいいち、博報堂では副業は禁止されているので、他のビジネスを手がけて収益を上げる、ということは認められていません。ただ、社外でいろんな取り組みをすることは推奨されていました。


 振り返れば、年1回の出展、というのも良かった。いいアイデアは無尽蔵に出てくるわけではないので、自分たちのペースでやらなければうまくいかないのです。

 実際、今では出展とは別に、世界中の企業からデザインの依頼がくるようになりましたが、なかなか対応ができていません。自分たちのペースを守ることを重視し、思いついたら提案します、というスタンスをとることがよくあります。

 なにより、YOYでは制約が「自分たちがいいと思えるか」だけです。クライアントの要望を満たしたり、予算や期限に追われたりしだすと、自分たちがいいと思えるものがつくれなくなるのではないか、と考えていました。

 ただ、本当に自分たちの力だけで勝負せざるを得ない。なんの制約もないから、なんの言い訳もできないのです。

 完全なるエゴイスティックな自己表現。しかもお金がかかる。

 当時は独身でしたし、一方で忙しくて時間もないので遊ぶことはできないし、お金を使う場もなかった。

 YOYの活動くらいしか、お金が必要なところはありませんでした。物欲もそんなにあったわけではないし、旅行も行かないし、車も欲しいとは思わなかった。

 3年で1000万円使った、というと驚く人もいますが、車を買ったり旅行に行ったりしていたら、意外とそのくらいは使ってしまうのではないでしょうか。

 貯金しても、それで何かが生まれるわけではありません。それなら、そのお金を、自分を試すために使う、というのは、全然アリだと僕は思います。


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会社を使い倒せ! (ShoPro Books)

小野 直紀
小学館集英社プロダクション
2018-12-20

この連載について

初回を読む
会社を使い倒せ!

小野直紀

会社で「自分のやりたいことができない」と感じたら、どうしますか? 広告会社の博報堂に勤めながら「モノづくりをしたい」と考えた小野直紀さんは、辞めて転職するのでも、起業するのでもなく、あえて会社に残ることで、人・資金・ネットワークなど、...もっと読む

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コメント

unison_mino https://t.co/LGZFu4bUFO 約2ヶ月前 replyretweetfavorite

megamurara 「求められているのは最高度の強度であると同時に最高度の不可能性だったM・フーコーとの対話」今日偶々見たこの言葉を思い出しました。 約2ヶ月前 replyretweetfavorite

34colorchoice79 一年早くこの記事に出会いたかった。。 約2ヶ月前 replyretweetfavorite