違和感を大事にする。

建築家をめざしていたのに、なぜか建築とはまったく関係のない広告会社に就職した小野さん。「クリエイティブなことがやりたい」という思いはありましたが、配属されたのは、自分の希望とは違う想定外の部署でした。ここから「自分の求めるクリエイティブとは何なのか」を探すための小野さんの長い旅が始まります。話題の書籍『会社を使い倒せ!』から〈STAGE1 本気でやりたいことを見つける。〉編の第3回をお届けします。

想定外の配属でも、必ず学びはある。

 就職先に選んだのは、建築とはまったく関係のない広告会社でした。

 結果的にそうなってしまったわけですが、僕は、博報堂に入ると決めた限りは、逆に建築に近いことはやりたくない、と思っていました。

 なんとなく頭のなかにあって、採用試験のときにも話していたのは、リアルな場を介したコミュニケーションを生み出すことに自分は興味がある、ということ。

 建築でも広告でも「コミュニケーション」という言葉がよく使われるのですが、両者では意味合いが微妙に違っていました。

 建築の場合は、どちらかというとコミュニティに近いと僕は感じていました。

 建築は「場」なので、環境をつくっていく。公園でも、ビルでも、家でもいいのですが、そこに人が集まることでリアルなコミュニケーションが生まれていく、そんな文脈でコミュニケーションという言葉が使われます。

 一方で、広告の場合は、企業のメッセージを伝えるという意味でのコミュニケーションが中心。

 そこで、広告でも、もっとリアルな場を介したコミュニケーションができるのではないか、と漠然と考えていたのです。

 そういうクリエイティブができるのではないか、と。


 博報堂では総合職で入社したので、適性を見て配属が決まることになっていました。

 大きく分けると3つで、営業、本社系と呼ばれるいわゆるバックオフィス、そしてMDと呼ばれている部門です。

 僕はMDを志望していたのですが、そのなかでさらに、コピーライターやデザイナーなどのクリエイティブ職、マーケティング戦略を考えるストラテジックプラニング職、PRプラニング職、プロモーションプラニング職と大きく4つの職群に分かれます。

 僕はクリエイティブ職がいいな、とは思っていたのですが、文章を書くのは苦手だったのでコピーライターというのはないと考えていました。一方で、グラフィックが得意なわけでもないのでデザイナーも違う。

 どっちも違うわけですが、それでも、入社してからも漠然と、平面のデザインや言葉とかではないクリエイティブがやりたい、と言い続けていました。

 あまりに漠然としていて、「こいつ、なに言ってんだ?」と思われていたかもしれません。


 そして配属が決まり、僕が配属されたのは、さきほどの4つの職群のどこにも当てはまらない空間プロデュースの部署でした。

 プロモーションのイベントよりももう少し大規模な、EXPOやモーターショーなどの大がかりなイベントを手がけたり、企業ミュージアムや店舗をつくったり、といった仕事を担当する組織です。

 正直「まじかー」と思いました。

 建築に近いことはしたくなかったのに、ちょっと建築に近い。

 せっかく建築と違うことをやろうと思っていたのに……と、早くもモヤッとした気持ちを抱いてしまいました。

ただ、採用試験のときにリアルな場を介したコミュニケーションをやりたいと言っていたので、会社からすると希望を叶えてやったと思っていたかもしれません。


 希望の配属とは違っていたのですが、ここで僕は、ふたつの幸運な出会いをすることになります。

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会社を使い倒せ! (ShoPro Books)

小野 直紀
小学館集英社プロダクション
2018-12-20

この連載について

初回を読む
会社を使い倒せ!

小野直紀

会社で「自分のやりたいことができない」と感じたら、どうしますか? 広告会社の博報堂に勤めながら「モノづくりをしたい」と考えた小野直紀さんは、辞めて転職するのでも、起業するのでもなく、あえて会社に残ることで、人・資金・ネットワークなど、...もっと読む

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