近藤麻理恵の片づけに逆らえるのか

『人生がときめく片づけの魔法』がシリーズ累計800万部の大ベストセラー、アメリカでも100万部を突破し、現在活動の拠点をアメリカに移した片付けコンサルタントの近藤麻理恵。先ごろNetflixで始まった『KONMARI ~人生がときめく片づけの魔法~』も、アメリカで大反響を呼んでいます。とはいえ、その独特な片付けメソッドに、批判も多い彼女。特に本に対して冷淡な彼女を、武田砂鉄さんはどう見ているのでしょうか。

想定されうる批判をかわす

近藤麻理恵の本を4冊熟読し、アメリカで流行っている彼女の番組『KONMARI ~人生がときめく片づけの魔法~』を観た上で思うのは、あらかじめ予測される批判を軽やかにかわしたり受け止めたりする近藤の巧妙さである。私は決して片づけを強制しているわけではない、というスタンスをところどころに挟み込むことによって、実質的に敷かれている色濃い強制性をはぐらかしてみせる。片付けを好まない人は、条件反射的に「片付けなんかじゃ変わんねぇよ!」と凄む。すると、近藤から聞こえてくるのは「他人に片づけを押しつけてはいけないのです。自分とは違う価値観の人も、そのまま受け入れられるようになって初めて片づけの完了といえるのかもしれません」(『人生がときめく片づけの魔法2』)である。「違う価値観を受け入れること」と「片づけの完了」って、冷静に考えればちっともリンクしない概念だが、それも片づけと関係しているんです、と匂わされると、議論がひとまず沈静化する。

片づけられるか不安になる依頼者に向けては、自分でも片づけられないことがあると慰め、たとえ、片づけに失敗したって、「家が爆発することはありません」と添える。どうにかして皮肉をぶつけようと試みる人(たとえば私)は、近藤が複数冊の本を出版していることに対して、何冊も読んだらモノが増えるじゃん、片づけの心意気と矛盾しているじゃん、と突っ込んでみたくなるが、「私が書いているこの本も例外ではありません。手にとってときめかなったら、迷わず捨ててほしいと思います」(『人生がときめく片づけの魔法』)と言われてしまう。このようにして、理解しない人たちに対しての牽制が著書や発言に散りばめられている。それを使い、信奉者が、いたずらな悪口をつかまえて、「読んでから言うべき」とのパトロールをする。その指摘は確かに有効である。読めば読むほど、想定されうる批判をかわすための文言に出会う。その姿勢は『KONMARI』でも同様で、とにかく隅々まで行き届いている。

「積ん読」に対する冷たい考え方
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ワダアキ考 〜テレビの中のわだかまり〜

武田砂鉄

365日四六時中休むことなく流れ続けているテレビ。あまりにも日常に入り込みすぎて、さも当たり前のようになってしったテレビの世界。でも、ふとした瞬間に感じる違和感、「これって本当に当たり前なんだっけ?」。その違和感を問いただすのが今回ス...もっと読む

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コメント

3839Ay https://t.co/7AEOnBCQdR 「本という代物は、260ページまで一切ときめなかったけど、261ページで突然ときめいたり、2ページでときめいたけど、あとは一向にときめかなかったりする」 「この1杯のために生きてる」… https://t.co/wAVlAMacLV 4ヶ月前 replyretweetfavorite

cobol_amaki 武田砂鉄さん、今回稀に見るほどストレートに逆らってますよ。読書家はみんな「こんまり」を破滅的脅威に感じるのか。 なんか、反乱軍に入って「ときめき帝国」に抵抗の狼煙を上げているという感じ。 ーー https://t.co/KTkIuMdjcr 4ヶ月前 replyretweetfavorite

ell_talk 代弁されててすっきりした! 4ヶ月前 replyretweetfavorite

_mrkzk_ |武田砂鉄 @takedasatetsu |ワダアキ考 〜テレビの中のわだかまり〜 A.逆らえる https://t.co/lT98zvOi5I 4ヶ月前 replyretweetfavorite