過干渉は遺伝する!?
【登場人物】
清田隆之
桃山商事・代表
1980年生まれの文筆業
森田雄飛
桃山商事・専務
同じく1980年生まれの会社員
ワッコ
桃山商事・係長
1987年生まれの会社員
清田 桃山商事の恋バナ連載、今月は「恋愛と親子関係」について語ってます。
森田 前回は、恋人に見られる「親からの影響」という話題からの流れで、清田代表のお母さんが子供の頃から過干渉だったという話になったんだったね。そして清田本人には、イヤだと思っていた母親の過干渉グセを、実は恋愛で自分が再生してしまっているんじゃないかという懸念があると。
ワッコ 具体的には、どういうふうに過干渉になってるんですか?
清田 これは昔5年半お付き合いした恋人との話なんだけど、カノジョには過干渉な姉と叔母がいてね。例えば外泊する時にはなぜか必ずお姉さんの許可が必要だったし、叔母は叔母で、結婚をめぐる話し合いが行われた際、うちの実家の土地とかを調べ上げて「あの家はあなたが相続するの?」と聞いてきた。
森田 それはすごいな。
清田 俺は、カノジョにとってその二人は悪影響でしかないという認識を持ってたのよ。「ずっと苦しめられている!」みたいな。だからそこからの脱出を盛んに勧めていた。
ワッコ ナイトみがありますね。
清田 カノジョは実家に住んでたから、「一人暮らししたほうが絶対いいよ!」と、頼まれてもないのに物件を調べたりしたこともあった。高校時代からの古い知り合いだったから、「赤ちゃんの頃から育ててきたのはそっちかもしれないけど、俺は思春期から今までいろいろ悩んできた彼女を知ってる!」みたいな姿勢で、姉や叔母に戦いを挑んじゃった感があった。
森田 なるほど。それはそれで過干渉になってるということか。
清田 そうなのよ。最後は向こうの親族に返り討ちにあって干されてしまい、振られたんですけど。
森田 清田は自他の区別が曖昧で、身近な人に自分の期待を一方的に押し付けがちなところは確かにあるよね。桃山商事の佐藤広報にもそういうプレッシャーかけていた。
清田 そうなんだよ! 佐藤広報とは中学生のときから一緒で、彼の父親からも「息子を頼む」とか言われたこともあった。それもあって俺には 「こいつの人生に一番コミットしてるのは自分だ」という謎の自負があった。
ワッコ 前のカノジョに対する考えと、ほぼ同じ発想ですね……。
清田 そういう、恋人や近しい友人に対する俺のノー・ボーダーの干渉は、母親が俺にやってきたことと関係あるのかも──って、そのことに気付いた時は背筋が凍りました。自分は母親のことを客観的に見れてる気でいたけど、実際には母親と同じことを無意識でやってしまっていた。頭ではわかってるはずなのに……。
ワッコ これはもうタトゥー入れるしかないんじゃないですか。
清田 腕にリメンバー・マイマザーって彫り入れるか……。
森田 まあ、そういう落とし穴みたいなことは誰にでもあると思うよ。
清田 ただ、前のカノジョや佐藤広報との関係性の反省や学びが、今の結婚生活に多少は活かされている感覚がある。妻に干渉したいって気持ちはほとんどないし、向こうの家族に対しても、俺の方がこの人のことを知ってるなんて一度たりとも思ったことはない。
森田&ワッコ ほ——う。
森田 その考え方も、ちょっと極端過ぎる気はするけどねえ。
清田 まあ、それはそれで関心が薄いように感じられているかもしれないし、「もっと踏み込んでこいや!」と思われているかもしれないけど……このくらい意識しておかないと、いつまた過干渉の悪い虫がわいてくるかわからない(涙)。
森田 良かれ悪しかれ、無意識のうちに親からインストールされてる価値観って絶対あるよね。恋愛や夫婦関係は客観的になりづらい閉じた関係性だから、ネイティブなその価値観を知らないうちに再生してしまうことも多いのかもしれない。
更新されない物語を生きる母親たち
ワッコ 森田専務は、結婚して自分の親子関係で気づいたことはありますか?
森田 それでいうと、妻が実家に来た時に、母親のいかにも親っぽい一面が見えたことがあったなあ。
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