小さな「もやもや」からなくしてみる

SNS、人づき合い、仕事、家事…。毎日の暮らしのなかで「もやもや」した感情が沸き上がることはありませんか?これは暮らしの滞りのサイン。アーティストでイラストレーターの松尾たいこさんがたどり着いた、心地よく生きるためのヒントを著書『部屋が片づかない、家事が回らない、人間関係がうまくいかない 暮らしの「もやもや」整理術』の中からご紹介します。

「もやもや」は暮らしの危険信号

 日々の暮らしのなかで、ふとわき上がってくる「もやもや」という感情。一例を挙げてみましょう。

「洗剤が入っている袋、あけにくいなあ」

「バッグを重ねて収納しているから、お気に入りを探しにくい」

「仕事関係でおつき合いのある人に飲み会に誘われた。あまり気乗りしないけど、一応は顔を出しておいた方がいいかな……」

どれも些細なことで、今すぐどうにかしなきゃいけないわけじゃないし、絶対に嫌!というものでもありません。洗剤は洗濯の時に、「もやもや」するだけ。バッグはお出かけの時に見つけにくくてちょっと慌てるだけ。飲み会も参加者が嫌な人というわけじゃないし、たった数時間のこと。 「もやもや」は小さなものから大きなものまでさまざま。その時ふと思うだけのものもあれば、のどに小骨が引っかかった状態みたいに、しばらく気になってしまうものもあります。

時間がたつうちに、いつしか消えてなくなればいいけど、残念なことに「もやもや」はそうはならないことがほとんど。むしろ、放置しておくと、どんどん大きくふくらんでいったり、積み重なっていったりして、あとあと大変なことになる可能性の方が高いのです。

「もやもや」はいわば、自分の中の〝注意信号〟のようなもの。危険を予期していち早く知らせてくれるサインです。掃除に例えるとわかりやすいので、リビングルームのフローリングを想像してみてください。フローリングは1日で汚れるものではありませんし、見た目もさほど変化がありません。ところが、掃除をした直後は快適でも、見えないホコリがたまっていき、次第に床はザラザラになっていきます。 すみに綿ボコリがたまり始めると、「掃除機を出して掃除するのは面倒だなぁ」と思ってしまうもの。でも、部屋を歩いていて少し気になった時に、すぐモップなどで軽くふいておけば、手のつけようがないほど汚れることはなかったはずなのです。

「もやもや」を感じる時は、一瞬憂鬱な気分になりますが、これを前向きに「気づきのサイン」ととらえています。自分の心が、せっかく「気をつけて」と教えてくれているのだから、これを「嫌だなぁ」で終わらせてしまうのはもったいない!

もちろん、すべての「もやもや」が大きくなって、〝重症化〟するわけではありませんから、「そのままにしておいても問題ないのでは?」と思うものもあるでしょう。でも、小さい「もやもや」であれば、それを改善するための労力も小さくてすむはず。押し入れからわざわざ掃除機を引っぱり出してきて床掃除をするよりも、気がついた時にモップで汚れた部分だけさっとふくのが簡単なのと同じようなものなので、「もやもや」が小さなうちに向き合って、対処しておいた方がいいと思います。それは何よりも自分のためでもあるのだから。


自分の中にわき上がった「もやもや」とどう向き合うか?

気づきのサインである「もやもや」を感じ取ったらどうすればいいかを考えていきます。「もやもや」は、そもそもがうまく説明できない感情で、「何かスッキリし ない」「納得できない」といったあいまいな部分が多いもの。言葉で説明できないけど、「もやもや」する気持ちだけは確かに存在している、という感じです。

自分の中で現状をきちんと把握できず、気持ちの整理整頓ができていないからこそ「もやもや」しているわけですから、そういう時はその対象は何なのかを把握し、それから理由を考えてみることにしています。例えば朝、コーヒーを飲んでいる時 に「もやもや」したとします。お気に入りの豆で淹れたコーヒーだから、コーヒー自体はおいしくて大満足。でも、マグカップの取っ手の部分が持ちづらかったとしたら、気になるものです。「なんだか飲みにくいかも」という気持ちが割り込んできたことで、コーヒーを楽しむ気分の何%かが削がれてしまったかもしれません。 ここまで事細かに分析しないまでも、私がここで言いたいのは、「もやもや」という気持ちをそのままにせず、原因を突きとめることが大切だということです。

もちろん忙しい時もありますから、いちいち「今、私がもやもやしているのはなぜだろう?」なんて考えていられない場合もあります。でも、自分が何に対して、どうして「もやもや」したかを考えた方が、あとあと生きてくるのではないかと思うのです。「もやもや」には単純なものもあれば、複雑なものもあります。特に人間関係に関する「もやもや」はやっかいなものです。そうであれば、難しそうなものはとりあえずおいといて、原因がわかりやすいものから向き合っていけばいいのです。また、「もやもや」をそのままにしない方がいい最大の理由は、何もしなければ単純に「もやもや」だらけになってしまうから。例えば自分のリビングルームなのに、どうもくつろげなかったとします。原因を掘り下げてみると、

「デザイン優先で買ったソファだけど、座り心地がイマイチ」

「ソファに置いたクッションも、かわいいんだけど肌触りはチクチクする」

「ソファとテレビの距離が近くて、テレビが見づらい」

などと思い当たる節がいくつか見えてきます。人は原因がわかっただけでも、落ち着きを取り戻すもの。もしも、「もやもや」をそのままにしていたとすれば、「なんで私はいつもこの部屋でくつろげなくて、イライラしているんだろう?」という 気持ちだけが自分を悩ませることになってしまうのです。


小さな「もやもや」からなくしてみる

自分の心にふとわき上がった「もやもや」した気持ちに気づき、その対象や理由が見えてきたところで、次はそれをなくしてしまいましょう。今まではそのまま見て見ぬふりをしたり、忙しさにかまけてスルーしてやり過ごしてきたかもしれないけれど、せっかく原因がわかったのだから、小さな「もやもや」をひとつだけでいいので、実際に片づけてみて、解消された時の気分のよさや快適さを味わってほしいものです。

例えば、インクぎれをしたわけではないけど、いつも書きづらいと感じていたボールペンを新しいものに替えてみたとします。スラスラと文字が書けるようになり、小さなストレスが解消されます。 どうもくつろげないと思っていたリビングルームも、ソファを買い替えるのは難 しくても、肌触りのいいクッションカバーに交換したり、家具の配置換えをしてソファとテレビの位置を適切な距離にしたりするくらいなら簡単にできます。 そのままにしていたとしてもさほど困らないような、小さな「もやもや」であっても、いざ解消できると気分がいいものです。そして、

「こんなに簡単なことで解決できるなら、もっと早くやればよかった」

 と思うはずです。この小さな〝成功体験〟こそが、ごきげんで楽しい人生への小さな第一歩。これはけっして大げさなことではありません。私が30 代の頃、できないことよりも、できることに目を向けられるようになり、できることを増やしていったことが自分への自信につながったように、人は小さなことの積み重ねによって少しずつ変わっていくものだと思うのです。

たとえ小さくても、「もやもや」をなくしていい気分になれたら、不思議なことに、自然と「じゃあ、ついでにあれも変えてみようかな」と思うようになります。 小さな成功体験が、次の行動へのあと押しとなるのです。

私が初めて解消した「もやもや」が何なのかは、些細なことすぎて覚えていませんが、「スッキリ」して「楽しく」なった気持ちだけは、しっかりと心に刻まれています。そんな気分を味わいたくて、次々に小さな「もやもや」をなくしていくようになりました。ひとつ解消すれば、心の中に滞っていた何かが消え、風通しがよくなったような気がしたのです。

小さな「もやもや」がいくつも減っていくにつれ、「ちょっと大変そうかな?」 と躊躇するような中くらいの「もやもや」を解消することにも挑戦したくなってきました。そうしたことを繰り返していくうちに、不思議なことに「もっともやもやをなくしたい!」と加速がつくようになったのです。

 今では自分から「もやもや」を見つけ出して、どう改善すればよくなるかを考えること自体が楽しみのひとつになったほど。工夫ひとつで、自分の暮らしがもっと心地よくなる。この快適さをぜひ多くの人に知ってもらいたいという思いから、ブログでその過程をつづり、実際に使って便利だったグッズを紹介し、それがこうして一冊の本という形にまでなりました。


挑戦に年齢は関係ない

コツコツといろんなことをやってみて実感したのは、人は、何事もいっぺんにがらりと変えるのは無理だということ。ダイエットなんていい例で、「今日からがんばる!」と決めた時はやる気がいっぱいだから、ハードな運動や食事制限だってやってしまいそうですが、長くは続きません。自分に無理を強いることは長続きできないように思います。極端な例ですが、引っ込み思案な私が今日いきなりクラブに行って、フロアの真ん中で踊ろうとしても無理に決まっています。想像しただけで、「ムリムリムリ!」と尻込みします。 でも、今日はクラブの前まで行ってみる、来週はクラブに入って1杯だけお酒を飲んでみる、再来週は友達と一緒にフロアに立ってみる……という感じならできるかもしれません。それに、「クラブって怖いところだと思っていたけど、案外楽し いかも!」となったらチャンス! その「楽しい」が、自分に浸透するまで繰り返しているうちに、自然と継続できていきます。

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生きるのがラクになる 暮らしの「もやもや」整理術

松尾たいこ

SNS、仕事、家事など、毎日の暮らしのなかで「もやもや」した感情が沸き上がることはありませんか? これは嫌なことを我慢していたり、抱え込んでいて、暮らしが滞っているサイン。「もやもや」した感情を手放して心地よく生きるヒントを『部屋が片...もっと読む

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