決意

【第8回】2019年からバブル真っ盛りの1989年にタイムスリップしたトリコ。伝説のユニット「ドルフィン・ソング」の運命を変えるべく、街を歩き始めた。だが自らを証明するものがなく、日々が淡々と流れることに焦りを覚えはじめ……。

8 決意

 日々は淡々と流れていった。下北や渋谷の懐かし散歩にも飽きると、「このままでは何も始まらない。どうにかしていまの生活から抜け出さなければ」と焦り始めた。幸い仕事はある時代だ。けれども私はこの時代に来て、自分を証明できるものが何もなかった。お堅いところや上場企業に就職したいわけではないが、このままでは銀行のカードはおろか、レンタルビデオの会員証一枚作れなかった。

 それに私には伝手が必要だった。足掛かりと言ってもいい。ドルフィン・ソングの事件を阻止するにも、婦警でも事件記者でもない素人が、ひとりでどうするつもりなのか。

 先述した通り、ドルフィン・ソングについては事件後、数多の映像や文献が世に溢れた。

 一部のゴシップ誌は「島本田恋と三沢夢二はホモセクシャルだった」と、スキャンダラスな見出しを躍らせたが断じて違う。BLは嫌いではないが、私の夢二がそんなはずはない。それに生前ふたりは、何人もの女優やモデル、アイドルと浮名を流していた。

 私は思う。

 島本田恋を殺したのは、本当に三沢夢二だったのか? 実は真犯人がいて、夢二は絞首刑の階段を上ってまで、その人物のことを隠し通したのではないか?

 それとも、もっと大きな謎が隠されていたのでは?

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ドルフィン・ソングを救え!

樋口毅宏

林真理子さん、燃え殻さんも才能を認めた著者の会心作を限定公開!  2019年、45歳独身で人生に絶望したフリーターのトリコ。睡眠薬で自殺をはかって目覚めたのは、1989年の渋谷だった! トリコに幸せは訪れるのか?  「めちゃくち...もっと読む

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