この道じゃない、と思ったら逃げる。

ドイツでの生活を経て、異なる価値観を知った小野さん。高校卒業後は、幼いことから関心があった建築家をめざして大学に入学します。しかし、そこには思わぬ落とし穴が待っていました。「この道じゃない」と思った方向に人生が進みかけてしまった時、小野さんがとった行動とは? 話題の書籍『会社を使い倒せ!』から〈STAGE1 本気でやりたいことを見つける。〉編の第2回をお届けします。

この道じゃない、と思ったら逃げる。

 次こそは「家から通える国公立」だと決めていたので、今回は私立も受けませんでした。すでに人より1年遅れていたのもあり、浪人はしないと考えていたので、もともと京都大学を志望していたのですが、ギリギリの線よりは確実なところを狙おうと、最終的に大阪大学を受けることにしました。

 そういう意味では、大学は偏差値で決めたようなところがあったのですが、学部学科は自分が興味のあったことから決めました。

 工学部に行って建築を学ぼう、と。

 もともと絵を描いたり、なにかモノをつくったりするのが好きで、なんとなく、その頃からクリエイティブなものへの関心がありました。

 小学校の卒業文集でも建築家になりたいと書いていたこともあって、工学部の建築工学科を志望することにしました。

 高校受験の苦い思い出があったので、今回は最後の最後まで気を抜かず受験勉強に取り組み、無事に合格。


 こうして、僕は2001年に大阪大学工学部に入学しました。

 さあ、建築をやるぞ!という気持ちでいたのですが、ここで思わぬ落とし穴がありました。

 大学が楽しすぎたのです。

 今までは進学校にいて、まわりも自分も当たり前のように勉強している環境だったのに、大学に入って、勉強しなくてもいい、という初めての状況に置かれた。

 「もういいだろう」というような気持ちもあり、すっかり大学の楽しい雰囲気に持っていかれてしまったのです。

 だから本当に、まったく勉強せずに毎日遊んでいました。

 そしてショッキングな事態が起こります。

 建築工学科に進むためには、1年生のうちに、ある程度の成績をとる必要があるのですが、「これはとっておかなければならない」という大事な単位を落としてしまったのです。

 志望していた建築工学科に進むことが、できなくなってしまった。

 自業自得といえばそれまでですが、やりたいことができなくなったとわかって、僕はますます勉強しなくなりました。

 阪大時代は、人生のなかで最も勉強しなかった時期だったと思います。


 建築家になる目標は失われました。

 僕が進むことになったのは、船舶海洋工学科でした。造船を学ぶ学科です。

 このまま造船を学んでいけば、将来は造船系の会社に入るか、流体力学の知識を活かして自動車や航空、機械の世界に行くか。

 先輩たちの進路を見て、なんとなくそのへんなのかな、というフワフワした気持ちで、僕はあまり深く考えてもいませんでした。

 そしてそのまま3年になり、造船会社にインターンに行くことになりました。

 そのインターンで、ようやく僕は目が覚めます。

 「この道じゃない!」

 現場の雰囲気も、仕事の内容も、僕のやりたいこととは違う。

 ルールもガチガチに決まっていて、とにかくつらかった。

 ここは僕のイメージとは違う、とはっきり思ったのです。

 そもそも僕はクリエイティブなことが好きで、やりたかったはず。

 造船も、もちろんクリエイティブのひとつではあるけれど、僕にとってはこれじゃない、という確信がありました。


 そう思ったときに、就職を強く意識しはじめました。そして、普通の企業に就職してサラリーマンとして働く、という未来が迫ってきている感覚になりました。

 ただ、僕は常々、母から「サラリーマンはやめとき。大変やで」ということを言われていたのです。

 母もずっと大学にいて、会社に就職したこともないので、あくまでイメージで言っていたのだと思いますが、いわゆる典型的なサラリーマン—汗水たらして、頭下げて、みたいな姿を思い浮かべると、そんな大変なことが、自分にできるのか?という恐怖心のようなものが湧き起こりました。

 どうしようもなくなって、あることを思いつきました。


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小野 直紀
小学館集英社プロダクション
2018-12-20

この連載について

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小野直紀

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コメント

tatsunyan1230 逃げる選択肢を選べる裕福さがあっていいなぁという印象。 1年以上前 replyretweetfavorite

feilong https://t.co/XJhVA86NV0 1年以上前 replyretweetfavorite