記者が残したもう一組の暗号はナチスが隠した金塊を意味している!?

【第17回】
殺された記者が残した暗号のうち、最初の3つは終戦時にフィリピンに隠匿された山下奉文大将の隠し資金らしい。となると、残り3つの暗号が指し示すのは、ナチスの金塊に違いない! FBI捜査官・鈴木の推理はどんな結論を弾き出すのか?

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◆いよいよ6つの暗号の真実が明かされる!?


パリの同時多発テロの衝撃に押されて、我々は大きな間違いを犯したのだろう。

記者が残したメモは、当時記者が力を注いでいた本の内容をより興味深いものにするために記者が思い付いた、独裁者の隠し財産に関するものだったのだ。

明らかに一つ目のメモは、山下財宝を持ち出したアメリカ空軍の特殊任務を示している。
だとすれば二つ目のメモ、

CRIS
YG F
SKL O GW

はナチスの金塊に関する情報であるに違いない。

第二次大戦末期、ヒットラーの暗殺計画が実行されたことはよく知られている。成功していればドイツの辿った道も違っていたのだろう。

一方、ナチスの衰退時にその諜報機関がヒットラーの助命を求めて連合軍と交渉をしたという記録はない。結局ヒットラーは自害している。だとすればナチスの金塊は埋蔵されたままであることになる。

第二次大戦の敗戦国であった日本とドイツが残した隠し財産のうち、日本のM資金と山下財宝は米国のものとなった。しかし、ナチスの金塊は未だにどこかに眠っている可能性が高いのである。

もしかするとナチスの金塊探しは水面下で長年行われてきたのかもしれない。連合国側の国家はもとより、今ではテロリスト集団ですら暗躍している可能性がある。アメリカも例外ではなく、FBIには知らされていなくともCIAや国防総省の秘密事項として遂行されているのかもしれない。

記者のメモが山下財宝と同じような記載法を取っていたと考えると、ナチスの財宝に関する情報が書かれていると思われる二つ目のメモの最後の行は、金塊の埋蔵場所そのものを表しているはずである。

つまりは、ナチスの金塊はウィーンの中央墓地に、それもボルツマンの墓そのものの中に隠されているとの情報である。

ナチスの復興を考えたとすれば、ポーランドではなくヒットラーの故郷であるオーストリアに隠すことは十分に考えられる。むしろその方が自然で納得できることである。

誰が隠したか?
ナチスが隠し資金を動かしたとすれば国家秘密警察であったに違いない。ナチスの国家秘密警察、つまりはゲシュタポである。

(そうか、二行目のYG Fとはyoung Gestapo F(ヤング ゲシュタポ エフ)、つまりは、若きゲシュタポFの意味なのだ)

鈴木は、改めてGestapo Fとサーチエンジンに打ち込んだ。返って来た情報は、これもまた納得のいくものだった。

ゲシュタポ組織の中でFと呼ばれる部署は、パスポートと身分証明を管理し、かつ、外国人の監督を担当する部署だったのである。ユダヤ人虐殺に直接かかわった部署であり、ナチスの金塊の基になったと言われるユダヤ人から没収した財産管理にも当たっていた部署である。

ゲシュタポのF課に所属する誰かがウィーンの中央墓地、ボルツマンの墓の中に金塊を隠した。
十分納得のいく話である。

そうなると、恐らく最初の行のCRISは名前である。
つまり、二つ目のメモ、

CRIS
YG F
SKL O GW

は、秘密国家警察F課に所属した若いクリスという将校がウィーンの中央墓地、ボルツマンの墓の中に金塊を隠した、と解釈できるのだ。

鈴木は明らかに興奮していた。

ナチスの金塊は、一兆円以上の価値があるといわれている。記者はこの情報のために殺害された。そして、神父もこの情報を共有していたがために殺された。

鈴木がFBIに入ったのはプロファイリングが面白かったからである。そして今度の謎解きには、理論展開のプロとしてかなりの自信があった。

確認できれば宝探しのおまけが付いてくる。
まさか自分自身でウィーンの中央墓地の墓を掘り返す訳にもいかないだろうが、報告すればアメリカ政府が動くことは必至である。

確かポーランドのトレジャーハンターは十パーセントを要求していた。
FBIの職員として報奨金の要求はできないとしても、自分の立場はかなり強くなるはずである。少なくとも日本への転属願が受理される可能性が相当高くなる。

しかし、この推理を正しいとするためには、アメリカ軍のバタックにおける特殊任務が金塊の移動であったことの確認が必須である。恐らくは最高レベルの機密事項であろうこの特殊任務の存在を、どのようにして確認すればよいのか。

(ハッチしかいないな)

鈴木はそう考えた。

携帯を取り出すと、パリに配属される前にFBIの仕事のイロハを教えてもらったBAUでの上司、伝説のFBI特別捜査官ジェイソン・ハッチスターに電話を入れた。

呼び出し音が二回鳴って、ハッチが出た。
鈴木はこれまでの事情を話し、当時行われた特殊任務について空軍からの情報が欲しいことを告げた。


“We have to deal with DOD. So, it will take a bit longer time. Especially, they are busy for the rescue operation, you know?”
(国防総省が絡むからちょっと時間が掛かるぞ。特に今は例の救出作戦のことで頭が一杯のようだからな)

“I am counting on you, Hutch.”
(ハッチ、頼りにしていますよ)


電話を切るなり、鈴木はワシントンのLEGAT総轄官にメイルを書いた。

>>>
There has been a new development for the case. With your permission, I will be staying in Tokyo for a while.(捜査に進展がありました。許可を頂ければしばらく東京に残りたいと思います)
<<<

書き終わると携帯を取り出し、今度は菜月にメイルを送った。

>>>
明日は暇ですか?
<<<

すぐに返事が来た。

>>>
明後日(あさって)から大学出勤なので明日は一日大丈夫。
どこか行きたいところはある?
<<<

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中田力

“神の遺伝子”をさがす謎の中東系の男と米国人記者に始まる連続殺人事件。若き遺伝子学者・高山菜月は、FBI捜査官の日系人・鈴木とともに二つの謎を追いかけていく。Y染色体ハプロタイプ分析から導かれる人類の歩み。日本古代史の謎。そして救世主...もっと読む

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