第21回 父と別れて、母はどんな王国を作ったか【あるキモい男の出自 ⑨】

AV監督の二村ヒトシさんが自身の子ども時代や父、そして母について綴ってきた「あるキモい男の出自」幼少期シリーズがいよいよ完結です。「なぜ自分はヤリチンになったのか」「なんでこんなに女性たちから【好かれたい】のか」。AV監督・二村ヒトシの原型が生まれた経緯について、語ります!

ファミレスで見かけたとある家族に、「ゾッとした」

母親の話や子どものころの話を何回か書き続けてきたので、そろそろ、いったん締めたい。

次は、そうやって産まれて育ったヒトシが童貞を失ったりAV男優になっていったりした過程が書きたいし、その前に、いろんな方と対談させていただいて【女と男】【男性性と女性性】【セックス】【男のファイナル・オーガズム】といった話題について意見を交換したりしたいので、とりあえず締めの原稿を書いてしまおう、とパソコンを持ってファミレスに入ったら、すぐ隣りの席に、小学2年生か3年生くらいの男の子をずっとどついている父親らしい関西弁のおっさんと、男の子の母親らしいねえちゃんと、母親の母親らしいおばはんがいた。

おっさんは口髭を生やして服装もぴしっとしているが、まだ30代だろう。どついているといってもブン殴ったり蹴ったりしてるわけではないのだが、5分に1回くらい手をだして、男の子の頭や頬を、こづいたり、はたいたりしている。そして、なにしろずっと「コラなめとんのか」「なんぞ言うてみい」などと、やくざのような口調で男の子を叱り続けている。

最初その父親の声だけが聞こえて、僕は(おっケンカか)と思ってそっちを見たのだ。

男の子は、こづかれて叱られながら、やや卑屈そうな目で父親を見上げて、ずっとニヤニヤしている。

僕が驚いたのは母親と祖母の態度で、父親を、まったくたしなめないのである。この家族にとって日常なのだろう。関西弁ではなく東京のことばで世間話をしている。まあまあ良い身なりをしている。父親も、祖母つまり自分の義母に対しては「おかあさん、いかがですか?」などと敬語である。子どもも泣いたりはしていない。つまり、この家族は一見【すさんでいる】わけではない。

なるほど。こうして男性性(インチキの)というものが作り出されていくわけか。

僕は、こういうのを見ていて、いやなかんじがする。たとえばこの親たちのような人たちのことを称して『恋とセックスで幸せになる秘密』(イースト・プレス)や『すべてはモテるためである』(文庫ぎんが堂)に【インチキ自己肯定】ということを書いたのではなかったか。

もし自分がこの家庭に息子として産まれていたらと考えると、ゾッとする。

ゾッとはするけれど、思わず立ち上がってその父親の胸ぐらを摑んで「いいかげんにしろ!」とすごむ、といった行動に出ることはない。たぶんケンカしたら負けるから。

それも、どうなんだ。

中途半端な反応なのは、この男の子を見て「彼は、俺だ」というふうには思わないからかもしれない。僕は、子どものころ彼のような目には、あわなかった。

ヒトシの幼少期は『ガープの世界』の世界だった

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キモい男、ウザい女。

二村ヒトシ

アダルトビデオ監督・二村ヒトシさんが、男女の関係性を探り、自分自身を語っていく連載です。現代の日本に生きる私たちほぼ全員が「キモチワルい男」であり「めんどくさい女」であるという、恐ろしすぎる【見立て】からはじまるこのお話。なぜ現代の恋...もっと読む

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コメント

Baba_Ippei キモい男、ウザい女。 力の経済の世界から全てを見る父、愛を取引に使う私。 2年以上前 replyretweetfavorite

m_um_u ケイクス購読しようかなぁ QT この話、ものすごいです。「つまりヒトシは、女の王国の王子様だった」というプロローグから心の穴の話に。圧巻です。 5年弱前 replyretweetfavorite

akikomitani 今回もすごく納得の内容。 5年弱前 replyretweetfavorite

nimurahitoshi ヒトシの少年時代の物語の最終回です【父と別れて、母はどんな王国を作ったか/あるキモい男の半生 ⑨】cakes(ケイクス)連載/キモい男、ウザい女。 5年弱前 replyretweetfavorite