もやもや」の感情に気づけば生きるのがラクになる

SNS、人づき合い、仕事、家事…。毎日の暮らしのなかで「もやもや」した感情が沸き上がることはありませんか?これは暮らしの滞りのサイン。アーティストでイラストレーターの松尾たいこさんがたどり着いた、心地よく生きるためのヒントを著書『部屋が片づかない、家事が回らない、人間関係がうまくいかない 暮らしの「もやもや」整理術』の中からご紹介します。

「もやもや」した感情、抱えていませんか?

 私たちは普段、いろんな感情とともに暮らしています。お気に入りの服を着ている時はごきげんな気分になりますし、仲のいい友達と一緒にいる時は楽しくてうきうきします。一方で、部屋が散らかっていると憂鬱になり、それを自分一人で掃除しなくてはならないとなると、ますます気がめいってしまいそうです。

 私は、このごきげんとは反対の、心が晴れない感情を「もやもやする!」という言葉で表現しています。これは言葉ではなかなか説明しづらい、感覚的なものなのですが、

 「本当は大のお気に入りというほどでもないけど、なんとなく使っている」

 「壊れているわけではないけど、使い勝手がイマイチ」

 「誘われると一緒にご飯を食べる友達なのに、なぜか気疲れする」

 「本当は気乗りしなかったのに、押しきられて仕事を引き受けてしまった」

 といったものです。自分の感情にかすかな違和感を覚えるのですが、それを取り除くために、すぐに行動に移したり、わざわざ相手に伝えたりしなきゃいけないほどではなく、心の片すみに小さな何かが引っかかっているようでもあります。

 病気に例えると、もっとわかりやすいかもしれません。明らかに高熱で、咳やのどの痛みがあれば病院に行き、薬を飲んで体を休めます。ところが、少し体がだるいくらいでしたら、「今日は早めに寝た方がいいかな」と思うことはあっても、病院に行くほどではないと判断するはずです。中医学の世界では、病気というほどではないものの、病気に向かいつつある状態を〝未病〟というそうですが、私が日常生活でときどき感じる「もやもや」も、もしかしたら暮らしの〝未病〟ではないかと思うのです。


小さい頃から漠然と感じていた「もやもや」

 じつは子どもの頃からずっと「もやもや」を感じてきました。私は「もやもや」という言い方をしていますが、「イライラする」「なんか違う」「スッキリしない」などと、人によって表現は違うかもしれません。でも、気持ちが澄みきった青空のような状態ではなく、雲に覆われているような感じです。

 私は体が弱かったので、すぐに疲れが出てしまいます。そのため、ほかの人が簡単にできることでも、できないことがたくさんありました。だから自分に自信がもてないまま、大人になっていきました。学生時代を振り返ってみた時、「もやもや」を感じることがあっても、

「自分さえ我慢すればいい」

「そんなことに『もやもや』する自分の方が変なのかもしれない」

 と、心の中に抑え込んでしまっていました。大人の言うとおりにしていれば間違いないだろう、と思っていたところもありました。かといって、周囲に当たり散らしたり、友達に愚痴を言ってスッキリしたりすることもできませんでした。

 ふと感じた「もやもや」を発散できず、ため込む一方だったのは、自信のなさに加え、自分を大切にできなかったことの表れだった、と今となってはよくわかります。スムーズに物事を運ぶために、周りの人の意見や価値観に合わせて、自分の素直な感情を封じ込めていたからです。でも、当時の私は「もやもや」した感情を自分からどうすることもできませんでした。

そんな私の支えは、絵を描くことと、本を読むこと。いろんなことに「もやもや」していた私にとって、唯一楽しかったのが絵を描いている時。今はイラストレーターとしてさまざまな活動をしていますが、当時はそれを仕事にできるとは夢にも思わず、ただ好きだから描いていました。本も暇さえあれば読んでいて、気づいたら1日に文庫本を3冊読み終えていたこともありました。当時の私にとって、絵は、自分の心の中から「もやもや」を吐き出すために描いていたし、読書は「もやもや」から逃れるために、物語の世界に入っていたのです。とはいえ、絵や読書に逃げたところで、私がその時々に感じていた「もやもや」が根本的に解決されたわけではありません。


何歳からでも人生は変えられる

 たくさんの「もやもや」を抱え、自分に自信がないまま大人になった私ですが、社会人になってもあまり変わりはありませんでした。地元の広島では大きな企業に就職したものの、「私の人生、こんな感じで終わるのかなあ」と思うほど、悶々とした気持ちで毎日を過ごしていました。自分のやりたいことを見つけられず、周囲で「私もこんな人になりたい」と目標にしたくなるような人と出会うこともありませんでした。「もやもや」があまりにも多すぎて、私の気持ちはどんよりしたまま。

 でも、たくさんの「もやもや」をかき分けて、心の中を掘り下げていくと、子どもの頃から好きだったイラストをちゃんと勉強したいという自分の本心に気づき、私はどうしてもその強い思いを実現したくなりました。なんと入社して10年以上。もっと早く気づけばよかったですよね(笑)。会社員生活は安定していたため、周囲の人には驚かれましたが、私は会社を辞めて上京し、イラストの学校に通うことにしたのです。32歳の時のことでした。

 いざ、東京の学校に通い始めたら、クラスメイトは10歳以上も若い人たちばかりで、私がクラスの最年長。絵を描くのが好きなだけで、専門的な技術も知識もありません。年下のクラスメイトたちは絵画の歴史や画家の名前をよく知っているし、美術館や映画館に足を運んでいろんな情報を吸収し、私には全然わからない話が飛び交っていました。

 でも、私の唯一といってもいい美点が、「素直」というところ。私はそこで、「何も知らないなんて恥ずかしくて言えない」「かっこ悪い」とは思わずに、「それって何?」「教えてくれる?」と言うことができました。「こうしたらいいんじゃない?」「こんなモチーフを描いてみたら?」という学校の先生や周囲の人からのアドバイスは素直に受け取り、まずは描いてみました。そうしてひとつずつ知識が積み重なり、新しい世界が広がり、楽しいことも少しずつ増えていったのです。

 もちろん、すぐにがらりと変わるわけではありません。でも、どんなに小さなことでも、昨日の自分が知らなかったことやできなかったことが、今日の自分ならちゃんと知っていて、できるようになる。この喜びの大きさは、言葉で表しようがないくらいのものでした。こうして私は少しずつ自信をつけ、失敗を恐れず新しいことに挑戦できるようになっていきました。小さな挑戦であれば、失敗しても大したことはありません。何度でもやり直せばいいし、もし自分に合わないなと気づけたら、それはそれで立派な収穫です。

 この繰り返しが、やがて35歳でのイラストレーターデビューにつながり、今もこうして大好きなことを続けていられるようになったのです。地方出身で、32歳まで会社で働き、それから本格的にイラストの勉強を始めたので、人にはよく「遅咲きですね」と言われますが、人と比較して早いか遅いかではなく、私にとってのタイミングがたまたまそうだっただけなのかなと思っています。実際に、10代のうちに美大や専門学校に通わなくても、イラストレーターとして第一線で活躍している人はいますし、それはほかの分野でも同じことが言えるはずです。むしろ、遅咲きだった分、小さなことでも変化が新鮮で楽しく、それがかけがえのないものであることを実感できました。


できないことを手放すという選択

私を変えてくれたきっかけが、もうひとつあります。それは夫に出会ったことでした。私は自分のできないところや、だめなことばかりが気になっていたのですが、そんな私を見た夫は、

「君はあんなに素敵なイラストが描けるじゃないか。それは君にしかできないこと

なんだから、ほかはできなくてもいいんじゃない」

 と言いました。その言葉を聞いた時、私の心の中に、「たったひとつでも、自信をもてることがあればいい」ということが染みわたっていったのです。

 それからは、できないことを気にするのではなく、できることに目を向け始めるようになりました。確かに、自分にないものを欲しがったり、持っていないことを愚痴ったりするよりも、できないことや自分には向いていないことはすっぱりあきらめた方がいいはず。それよりも、自分にできることを少しずつ増やしたり、もともとできるものをもっと伸ばしていったりした方が自分にとってラクだし楽しいんじゃないかということに気づきました。このように考えられるようになってから、私の人生は大きく、そしていい方向に変化していったのです。私が30代後半の頃のことでした。

「大人になってからでも、自分を変えることができる!」

 この気づきは、小さな頃からずっとため込んできた「もやもや」にも影響を及ぼすようになりました。「自分さえ我慢すればいい」「そう感じる自分の方が変なのかも」と思ってフタをしてしまうのではなく、小さな「もやもや」を解消させて、楽しいことや、自分の好きなことに置き換えていけば、もっと人生は楽しくなる! そう思えるようになったのです。

これからの人生を心地よく生きるためのヒントが満載!

この連載について

生きるのがラクになる 暮らしの「もやもや」整理術

松尾たいこ

SNS、仕事、家事など、毎日の暮らしのなかで「もやもや」した感情が沸き上がることはありませんか? これは嫌なことを我慢していたり、抱え込んでいて、暮らしが滞っているサイン。「もやもや」した感情を手放して心地よく生きるヒントを『部屋が片...もっと読む

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