ウケる人、スベる人の話し方ーマニアックな笑いに走ってませんか?ー
ウケる人は王道ギャグ
スベる人はマニアック
時々、「今はツッコむところだろ!」とか、「今のツッコミは普通すぎ」などと、お笑いのテクニック論ばかり語っている人に遭遇することがあると思います。
しかし、そういった「お笑いわかっている感」を出している人が、本当に面白い人であるケースは稀です。そういう人は、たいてい自分の親しい仲間ぐらいしか笑わせていなくて、その他の人から見ればむしろスベっている人だったりするものです。
ではなぜ、「自分は面白い」オーラを出す人ほど、スベった印象を持たれてしまうのでしょうか? それは、マニアックな話題で笑わせれば笑わせるほど偉い、という錯覚をしてしまっているからです。
いかなる趣味もそうですが、他の人が知らないマニアックな情報を知っている人こそ、その趣味の達人という共通認識があります。そのため、お笑い好きが集まると、「よりマニアックな笑いのテクニックに価値がある」という暗黙のルールができてしまうのです。
このルールを無意識に盲信している人は、特に、松本人志さんに強い影響を受けたお笑いファンに多いように思います。松本さんは、笑いが発生する現象・言葉の中に、自分なりの序列を作っていて、他の人がやらないネタで取る笑いを、より価値のある笑いと定義しているように見えます。
しかし、ここで1つ、多くの人が勘違いしていることがあります。
それはマニアックな発言を愛する松本さんは、1人だけではなく、ダウンタウンというコンビで笑いを取り、世の中に出てきたということです。つまり、相方の浜田雅功さんのツッコミという通訳の力が大きく機能しているのです。
例えば、松本さんが、マニアックで普通の人には到底理解できないボケを言ったとします。すると、浜田さんは、お腹をかいたりしながら険しい顔で「あ? それ、どういうこと?」と、松本さんに一般人がわかるレベルまで、話を嚙み砕いて説明させています。
このように、天才・松本さんですら、天才・浜田さんの力を借りて、マニアックなことを、一般人にわかるように説明するというプロセスを経て、笑いを生んでいるのです。
ましてや、普通の素人が、マニアックな話題をマニアックなまま調理して、笑いを取れる確率は低いと言わざるを得ないでしょう。
というわけで、普通の人が目指すべきは、「王道ネタ」です。決して一見カッコよく見える、マニアックな笑いではありません。今回はその一例として、明石家さんまさんが、頻繁に使う王道ギャグを紹介します。
さんまさんは、テレビで何かを試食する時、たいてい、「ホンマに美味いんか?」と疑った雰囲気で口に食べ物を入れ、その後すぐに、急に明るい顔になって「ホンマや!」と言って、スタジオを笑わせています。
実はこれ、先に感情を下げておいて、急に上げるという、定番の笑いのフォーマットです。
使うにしても、最初に、「本当なの?」と疑い、その後に「本当だ!」と喜ぶだけですから、真似しやすいテクニックです。食べ物に限らず、色々な場面で使えるはずです。
こういった王道ギャグは前提条件なしに誰でも笑えるものばかりなので、マニアックであることを信条とするお笑い好き以外の普通の人からは、確実にウケる人と認識されていくでしょう。
というわけで、テレビなどを見ている時は、誰でも真似ができそうだなと感じるほどの、シンプルな「王道の笑い」を見つけ、それを真似てみるようにしてみましょう。
ウケる人の考え方 「ベタな王道ギャグ」こそ役に立つ!
次回は、1月28日に更新予定。「ウケる人はプロレス的な笑いを作っている?!」
※『ウケる人、スベる人の話し方』PHP研究所(渡辺龍太)より、一部抜粋。