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年上だから、
男だから、
タチだから、
自分から告白したんだから、
自分からプロポーズしたんだから、
自分がいないとダメな人なんだから、
自分はこの人がいないとダメなんだから、
自分のために犠牲になってくれた人なんだから、
幸せにしてあげなくちゃ(それはぼくの責任だ)
って。
鎧着込んで武装して、ゴツゴツに重たくなって、身動きが取れなくなって、鎧越しにしか人に触れられなくて。どんどんわからなくなって、どんどん孤独感が増して、「この人とも分かり合えないなら、他の奴らなんかもっと分かり合えない」って。
みたいなあなた、今日もおつかれさまです。ちょっと脱ご、鎧。というお誘いを申し上げたく、今日は筆をとっています。っていうか、キーボードを叩いています。
叩くな! うっせえ!
ってお思いになられるかもしれないんですけど、すいません。わたしはあなたのすぐ隣にいるわけではありません。つまり、あなたの話を「うんうん、秘密は守るよ」って聞いたくせに「実はね……」って横流ししたり、「お前そういえば前もさあ(笑)」って直接は関係ない昔の話を掘り返してまとめて否定したり、そういう系のことはしないし、しようがない、ってことです。
直接は影響が及ばない程度の距離感を保って、安全な遠さから、あなたにじゃなく、なんとなくあなたが、あなたのような人がいそうなほうに向けて、そーっと、話しかけています。
だってあなたは、わたしだと思うからです。
「幸せにしてあげなくちゃ」 そう思って義務感で鎧を着込むあなたと、
「一人じゃ幸せになれない」 そう思って好きでもないドレスを着込んでいたわたしは、たぶん、実は、どうしようもなく、同じなんじゃないかなって、思ったからです。ひとりで、ですけど、思ったからです。
鎧を着込む王子様。ドレスを着込むお姫様。
それぞれがそれぞれの役をやって、幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。で、結婚して終わるおとぎ話を、わたしたち、子どもの頃からめっちゃ聞かされてきたと思いませんか。それとも、そういうのは女々しいって、男らしくないからダメだ、って、あなたは言われてきたのかなあ。「魔王を倒し、さらわれた姫を助けるぞ」とか、「心を失くしたヒロインを支えながら世界を救うんだ」とか、そういう物語のほうが、正しいとされてきたのかな。
強くなろうと、あなたは努力してきたのかな。
幸せにしてあげなくちゃ、って。
年上なのに、
男なのに、
タチなのに、
自分から告白したのに、
自分からプロポーズしたのに、
自分がいないとダメな人なのに、
自分はこの人がいないとダメなのに、
自分のために犠牲になってくれた人なのに、
リードできないなんて、ふがいない、って思っちゃうのかな、きっと。
わからない。ごめんなさい。
「なのかな、きっと」みたいな推測形でしか話せなくて。
それは、「わたしばかだから、ごめんなさい」って振る舞いを正しいものとして、わたしが学習してきたからだと思ってました。
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