担当編集氏に「冬山シーズンですし、安全登山についての話なんてどうでしょう?」と言われ、無言になった。
実は、私は冬の北アルプスに登ったことがない。
驚かれるのだけど、私は山の仕事や暮らしが好きなだけで、登山はそこまで好きではない。嫌いではないけど、通勤以外の登山はそれほどしないのだ。
そんな私でも、安全登山について書きたいことはある。
それは、山で亡くなった知人のことだ。
死亡事故の少ない山だったけど……
私がいた山は初心者向きで、滑落するような場所や道に迷うような場所が少ない。
働いていた約10年の間、死亡事故はほとんど起こらなかった。私が山にいるのが春~秋ということもある。
だけど、死亡事故ではないレスキューならよくある。だいたいは転倒による捻挫・骨折など。あとは体調不良だ。
そういうときの対応はケースバイケース。自力での歩行が困難な場合、登山者を背負って下ろすことが多い。
もちろん「一刻も早く下ろさなければ命に関わる!」といった場合はヘリを呼ぶけど、そこまでの緊急性がない場合は、登山者側もヘリを呼びたがらない。「県警」「救助要請」という言葉が出ると、だいたいの人は「そんなおおごとにしなくても大丈夫です」と尻込みする。
ヘリを呼ばなくても、誰かが背負って下ろす行為は山岳救助なんだけどなぁ……。
じゃあ誰が背負って下ろすかというと、これもまたケースバイケースだ。県警の救助隊員だったり、遭対協(遭難防止対策協会)の隊員だったり。
※遭対協は民間人による救助組織。漫画『岳』の主人公・三歩さんが所属していたことで一躍有名になった。夏は隊員があちこちの山をパトロールしている。
近くに県警や遭対協の人がいない場合は、山小屋スタッフが背負って下ろすこともある。
もちろん私にはできないので、できる人のことは尊敬する。私にできることは、帰ってきたスタッフに「お疲れ様」とおにぎりを差し出すことくらいだ。
山岳事故=山を舐めてる……とも限らない
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