デザインのアイデアとモテと全体主義

とびきりかっこいいデザインだけでなく、還暦目前のプロ童貞としての独自の視点に基づく発言とライフスタイルも多くの業界人から支持されている山口明(58歳)の自伝『ワイルドチェリーライフ 山口明 童貞力で一億総クリエイター時代を生きる』。
コミックスの装丁デザイナーとして、業界内で名を馳せたグッチーのアイデアの源とは? デザイナーを目指す人は必読のエピソードです。

余計な情報を入れずにアウトプットしていく

──装丁する漫画って事前に読むんですか?

山口 オレ、基本的に漫画は読まないんだよ。

──でも事前にゲラは送られてきますよね?

山口 送られてくるし、例えばタイトルとかロゴを作る時はネームを読まされたりするんだけど、ネームが読めなくてさ(笑)。内容がよく分かってない状態でやっちゃったりしてたな。単行本の時も全然読んでないから、編集者に「どんな内容か話してくれよ」って喫茶店であらすじ聞いたりしてやってたよ。

──そんなに材料が少なくて大丈夫なんですか?

山口 読んでやったら頭で考えたデザインになるじゃん。編集者のイメージを聞いて、あとはオレがタイトルを聞いた時の直感だな。それぐらいで作った方が、面白いものができる気がするんだよな。 あと、オレの持論なんだけど、なんでも時間かけたらイイのなんてできないよ。これは食い物も同じだと思っててさ。中華とイタリアンが好きなんだけど、強火で一気にパッと作るほうがイイのよ。ダラダラ時間かけたフランス料理なんて気持ちわりぃじゃん。デザインも時間かけていじくりまわしたってイイのはできるわけないよ。あと、自分に自信がない奴は余計なものを足しちゃってダメになるんだよ。熊田さんも言ってたな。「ダメなデザイナーは余計なこと足してっちゃうのよ。むしろ削っていけ」って。だからオレも、もうすぐ全裸で歩き回るよ。オシャレなんてやめて。

──それ、ただのボケ老人ですよ。とはいえ、良いアイデアがなかなか浮かばないってことはなかったんですか?

山口 オレ、アイデアが涸れたりとかないのよ。デザイナーになったのが遅いじゃん。35歳までインプットだけで、アウトプットしてなかったから溜まりに溜まってたっていうのもあるんだろうな。あと、下積み時代とかはなかったけど、写植屋の頃から画集とか写真集、美術関係の本を買いまくってたのでそれがよかったっていうのもあるかもね。周りの奴には「デザイナーでもないのに、そんな写真集やらアート本を買ってどうするんだ」って馬鹿にされたけど、今思えば勉強になってたんだな。 ちなみにアイデア出しは事務所に行くまでの時間だったな。行き帰りって大事でさ、駅まで歩いて15分、電車に乗って30分、この時間の中でアイデアが頭の中に浮かんで、それを事務所で具現化するって感じだったね。よく「クリエイターは脳に刺激を与えるために毎日違うコースで帰ったほうがいい」とか言う人いるけど、あれはダメだな。毎日寸分違わないコースで、同じ場所、同じ道を歩いて、同じ時間の電車、同じ車両に乗っていったほうがオレにはよかったな。余計な情報が入ってこないから。

──なんとなく山口さんがクレイジーな理由のひとつが分かりましたよ。

山口 え? そうなの?

オヤジ的な文化はもう終わる
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ワイルドチェリーライフ 山口明 童貞力で一億総クリエイター時代を生きる

山口明 /市川力夫

とびきりかっこいいデザインだけでなく、還暦目前のプロ童貞としての独自の視点に基づく発言とライフスタイルも多くの業界人から支持されている山口明(58歳)の人生を追い、劇的に変化を続ける男女問題、やがて人口の約4割が独身世帯「ソロ世帯」に...もっと読む

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shigekey "デザインも時間かけていじくりまわしたってイイのはできるわけないよ。" |山口明 @53sai_doutei /市川力夫 @ichikawarikio | 2ヶ月前 replyretweetfavorite