第1回】生ハムと一緒に、氷を浮かべてロックで……いま、日本酒がおもしろい!

夏本番。暑くてのどが渇くぶん、お酒の美味しい季節です。ビールやワインを飲むのもいいけれど、日本酒はいかがですか? 「和食しか合わないんじゃない?」「値段が高そう」「すぐ酔いそう……」とお思いのあなた、お待ちください。すこし日本酒のことを知るだけで、ちっともそんなことがないとわかりますよ。そして、その魅力をより深く知りたくなること間違いなし。自由大学で「入門日本酒学」を教え、数々の蔵元とも交流する日本酒ライター・杉村啓さんの案内で、奥が深い日本酒の世界をのぞいてみましょう。全6回の集中連載です。 (日本酒のここが知りたい! というご要望がありましたら、是非こちらへお寄せください。)

みなさま、日本酒を飲んでいますか? 最近は日本酒に関するニュースもずいぶん増えてきました。さまざまな日本酒のイベントや、日本酒にこだわったお店も増え、実は気軽にいろいろな日本酒を味わえるようになっているのです。僕自身が日本酒好きであるというひいき目なしに、いま一番面白いしわくわくすることができるお酒は、日本酒であると言ってもいいんじゃないでしょうか。そう思えるほど最近の日本酒は美味しいですし、多彩です。

でも、まだまだ日本酒を楽しむ人はそう多くはありません。また、興味はあるけど日本酒がよくわからない。好きだけれども漠然と飲んでいて詳しいことはあまりよくわかっていない。どんな日本酒が好きなの? と聞かれてもうまく説明できない。そういう人も多いのではないでしょうか。

そこで今回より数回にわたって日本酒初心者のために、日本酒業界がどれだけ盛り上がっているのか、どれだけ多彩な日本酒があるのか、どう飲めばいいのか、食べ合わせはどうしたらいいのか、ラベルはどう読めばいいのかといったことをお話していきたいと思います。ここで知ったお話を、是非今晩の飲み会で、もしくは明日人に会ったときに話しちゃってください。

最近はこんなにも日本酒が面白い!

では最近の日本酒がどう面白いのか、ちょっと紹介していきましょう。まずはこちらの写真をご覧下さい。

よくよく目を凝らしてみると、ラベルの上に斜めに貼られているシールの文字が見えるかと思います。左から順に紹介していきますと、このように書いてあります。

・エビのアヒージョに合う愛媛のお酒
・完熟トマトのオリーブオイルかけに合う愛媛のお酒
・生ハムに合う愛媛のお酒
・スパニッシュオムレツに合う愛媛のお酒

そう。これらは和食ではなく西洋料理、それもスペイン料理に合う日本酒なのです。日本酒と言えば魚とか珍味と一緒に飲むもの、というわけじゃ無いのですね。この「mar」シリーズは愛媛県酒造共同組合が作っているシリーズで、愛媛県にある各日本酒蔵に愛媛県のお米と酵母でお酒を作ってもらい、その味わいや香りがスペイン料理との相性がいいと認められたものに「mar」の認定と名称が与えられるというものです。

例えばエビのアヒージョはニンニクが効いたオイルがたっぷりとからんでいるので、旨味や酸がしっかりとして、なおかつキレのいいタイプのお酒が合います。トマトのオリーブオイルがけでしたら、華やかな香りで口当たりが軽快なお酒が合う、というように相性を審査されるのです。そうして選ばれた「mar」は、同じ名前で色々な蔵の日本酒がある、愛媛県の統一ブランドといった感じなのですね。

また、このお酒。ずいぶんとラベルがオシャレな感じがしませんか。最近はいわゆる日本酒の名前がどーんと書かれているラベルだけではなく、さまざまなデザインが登場していたりします。

こちらは「玉川 Ice Breaker」(木下酒造有限会社・京都)というお酒です。ペンギンのラベルがかわいいですよね。夏向けのお酒で、ロックで飲むことが推奨されています。その名の通り氷を浮かべて飲むのです。非常にしっかりとした味なので、ちょっとやそっと氷が溶けても味が薄まったりはしません。なので、氷を浮かべ、だんだん溶けていくとともに変わっていくのを味わう日本酒なのです。

同じく涼しげな夏の日本酒です。「十九 Il Cumulonembo」(尾澤酒造場・長野)は「イル・クムロネーンボ」と発音します。意味は「入道雲」なので個人的には入道雲と呼んでいたりします。とても香りが豊かなのですが、酸がきいていてすっきりとした味わいの日本酒です。入道雲の見える青空の下で、汗をかきながら焼いたはまぐりやさざえと合わせて飲みたい。そんな日本酒です。とてもおしゃれな瓶&ラベルですよね。

次は、ワインのような瓶の日本酒を紹介しましょう。

「笑四季モンスーン」(笑四季酒造株式会社・滋賀)です。笑四季は「えみしき」と読みます。青っぽいラベルの方が「玉栄(たまさかえ)」というお米を、赤っぽいラベルの方が「山田錦(やまだにしき)」というお米を使っています。こちらは貴醸酒(きじょうしゅ)という、水の代わりに日本酒を使って日本酒を造るという、なんとも贅沢な造り方をしているお酒になります。とても甘口な白ワインのような風味の、美味しいお酒です。

さらには、低アルコールの日本酒カクテルや、微発泡のスパークリング日本酒といった、お猪口よりもカクテルグラスやシャンパングラスが似合うような日本酒もずいぶんと増えています。

左から順番に紹介しましょう。

1. サムライロック(日本盛株式会社・兵庫)
2. 茜彩(沢の鶴株式会社・兵庫)
3. ぷちぷち(末廣酒造株式会社・福島)
4. きららきくすい(菊水酒造株式会社・高知)
5. ラピスラズリ(中埜酒造株式会社・愛知)
6. Zipang(月桂冠株式会社・京都)
7. 星の流れ(黄桜株式会社・京都)
8. チーズとよく合うお酒(小西酒造株式会社・兵庫)

「サムライロック」は日本酒のカクテル。「茜彩」は赤米を使った赤い色の日本酒。「ぷちぷち」から「星の流れ」まではしゅわしゅわとした微発泡なスパークリング日本酒。そしてチーズとの相性を考えて生み出された日本酒となっています。このジャンルでは「すず音」(株式会社一ノ蔵・宮城)がとても有名なのですが、こんなにも増えているのですね。

ちなみにこの8本は、日本酒専門の酒屋で買ったわけではありません。全て近所のイトーヨーカドーで購入しています。スーパーのお酒売り場にこういうお酒が並んでいるのです。個人的にお気に入りなのは「チーズとよく合うお酒」ですね。キレのある甘口で、チーズだけでなくサーモンのマリネなどとも相性が良く、ついつい買ってしまいます。

このように、伝統的な味わいの日本酒だけではなく、色々な種類の日本酒が今はあふれています。日本酒の味の幅はとても広いので、きっと好みの味のお酒が世の中には存在していると思います。本連載が自分にとっての一本を探す一助になれば幸いに思います。

実は値段もリーズナブル!

日本酒に対するネガティブなイメージを持っている人にお話を聞くと、大抵は「高い!」「悪酔いをする」という言葉が返ってきます。はたして日本酒は高いのでしょうか。これはなかなか難しい問題です。

現在市販されている日本酒は、四合瓶と一升瓶が主流です。四合瓶とは、一合が180mlなので720mlの容量。一升瓶は十合になりますので1800mlの容量になります。四合瓶はワインとほぼ同じ(ワインのボトルは750ml)と思うといいでしょう。

四合瓶と一升瓶の価格比は、だいたい1:2です。同じお酒だったら、一升瓶の半分の価格が四合瓶の価格になることが多いのですね。なので一升瓶の方がコストパフォーマンスはいいのですが、保管の問題とか、飲みきれないとか、なかなか悩ましかったりします。

だいたいの価格帯ですが、四合瓶の場合は1000円から3000円ぐらいが主流と考えればいいでしょう。その中でも、日本酒ファンが普段から多く飲んでいるお酒はだいたい1000円台が多かったりします。そして、味のバリエーションが多いのも1000円台のお酒です。3000円ぐらいするのは、蔵の技術の粋を尽くした大吟醸酒や純米大吟醸酒といったお酒になります(この辺のお話は次回以降に登場します)。これらはさすがに高いのですが、日本酒ファンが普段から高級酒ばかり飲んでいるわけじゃないのですね。今回紹介したお酒も、四合瓶で1500円前後だったりします。

さて、これを高いと思うか、安いと思うか。さすがにコンビニで300円前後で買える缶ビールに比べると一度に払うお金は多いです。それでも1000円台で、じっくりと、何人かと楽しめる日本酒は、決して高いとは思いません。一人で飲む場合も、飲みきれなかった分は冷蔵庫に保管して明日飲めばいいわけですし、一晩で1本飲みきってしまう人は、きっとビールも一度に数本飲むでしょうから、払う金額はほとんど同じになるでしょう。

もうひとつ注意したい点として「高いお酒が必ずしも自分にとって美味しいとは限らない」ということが挙げられます。日本酒は嗜好品です。そして人の好みは千差万別。自分の好みに合うお酒が、必ずしも高いお酒とは限らないのですね。なのでまずは、1000円台で手に入るいろいろな日本酒を試して、自分の好みを探すことをお勧めいたします。

悪酔い防止には「和らぎ水」

日本酒に対するもう一つのネガティブイメージ「悪酔いをする」ですが、もしかして、一気にたくさん日本酒を飲んでいたりはしないでしょうか。

いやいや、お酒ぐらい好きな飲み方で飲ませてくれよという人もいるでしょう。でも、ちょっとだけ確認したいのは、ビールと同じような勢いで飲んでいませんか? ということなのです。

ビールのアルコール度数は5%です。それに対して日本酒は15%から20%近いものもあったりします。ということは単純に、ビールの3倍以上のアルコールがあるということです。

暑い夏の盛りとかに、喉がからからになって、グイッと飲むビールは最高です。でもこれを同じように日本酒でやると、ビールの3倍の量を一気飲みするのと同じになってしまうのです。ビールをゴクゴクと、だいたい100ml飲んだとしたら、同じ量の日本酒を飲むと300ml分のビールを飲んだのと同じになってしまうのです。この量を一気飲みするとなると、身体にいいわけはないですよね。

なので日本酒は、一度にたくさん飲まないで、ちょっとずつゆっくりと飲むようにしましょう。その方が身体にも優しく、悪酔いをしません。お猪口が小さいのは、昔の人はそれがわかっていたからなのかもしれませんね。

汗をかいて喉がからからだったら、まずは水を飲んで、それからお酒を味わうようにするといいでしょう。日本酒を飲んでいる時に悪酔いを防ぐには、合間に水を飲むことが重要です。アルコールを分解するには水分が必要なので、水を飲めば飲むほどスムーズにアルコールを分解でき、悪酔いをしないのですね。日本酒の世界ではこれを「和らぎ水」と言います。目安としては、よく飲んだ日本酒と同じ量の水を飲んだ方がいいと言われていますが、実は倍の量の水を飲む方が確実です。

最後にちょっとした豆知識を。ビールを分解するために必要な水分は、ビールに含まれている水分よりも多いです。なので、暑い夏にビールだけ飲み続けていると、脱水症状を起こしたりします。どんなお酒を飲むときでも、合間に水を飲むようにしましょう。

本日のまとめ

和食だけではなく、スペイン料理などの洋食にも合う日本酒が登場している。
・ラベルもさまざまなデザインのものが増えてきている。
・四合瓶(720ml)は1000円〜3000円台が主流。1000円台は味のバリエーションが豊富。
・日本酒のアルコール度数は15度から20度ぐらい。ビールの約3倍ということを忘れない。
お酒を飲むときには合間に和らぎ水をしっかり飲めば、悪酔いせずに楽しめる。できれば飲んだお酒の2倍の量の水を飲もう。


次回は「日本酒を味わってみよう」ということをテーマに、日本酒の味わいのお話をしていく予定です。それではまた次回お会いいたしましょう。


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この連載について

今宵語りたくなる日本酒のはなし

杉村啓

夏本番。暑くてのどが渇くぶん、お酒の美味しい季節です。ビールやワインを飲むのもいいけれど、日本酒はいかがですか? 自由大学で「入門日本酒学」を教え、数々の蔵元とも交流する日本酒ライター・杉村啓さんの案内で、奥が深い日本酒の世界をのぞい...もっと読む

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