曜日ごとに部署も変えられる、ヒエラルキーのない新しい組織の形

長野県東御市で急成長を続け注目を集める「パンと日用品の店 わざわざ」の新しい形の会社組織の話をお届けします。「評価しない人事制度」のもと、ヒエラルキーのない組織をつくった「わざわざ」代表の平田はる香さん。社員全員が会社全体の業務の流れを理解し、部署を越えて助け合う。そして、部署間を自由に行き来することもできる長屋型組織とは?


「わざわざ」のパンは薪窯で焼いている。今は正月休みで窯もお休み中。

ミクロな視点、マクロな視点

明けましておめでとうございます。正月からパン屋が組織論語りましてどーもすいません。今回も引き続き、「わざわざ」で行っているヒエラルキーのない新しい形の組織について。小さな組織でありがちな少人数での業務の取り回し方を考えます。役割を緩やかにクロスさせることで、会社という枠の中で想定した以上の業務を行うことができるのです。

わたしは10年前に開業した時に、パンと日用品の店を一人で始めた。これが紛れもなく原点である。一人で店をやるには、全てを一人で行わなければならない。パンを焼き、パンを梱包して、パンを売り、パンを送り、日用品を仕入れ、支払いをし、店で接客し、販売し、オンラインストアを作成し、情報発信をして、経理をやり、掃除をしてというように、必要なことを探しては全てを自分で行う。誰かに何かを頼むことも役割分担することもなく、全業務を負担する。個人事業主になるとわかるが、これは並大抵のことではない。苦手や得意を通り越して、全てを一人で行わなければならず、さらに全責任が自分にかかってくる。

だが、この経験が今でも宝物になっている。どの業務のしくみも粗方わかるということは素晴らしい。全体の流れを把握しているため、俯瞰で物事を考えることができ、人数が増えた今でも他部署とどうやって連携していけばいいのかがよくわかる。

例えば、就職して大きな会社に入ると、一つの部署に配属されてしまう。最初から視点がミクロになって専門的なことから覚えることになる。広報に入れば広報でどうやって物を売るか?ということに特化して、パン製造に入れば、パンをどうやって作るか?ということに特化する。そうなると、パンを作って広報して売り、会社の利益が得られ、自分の収入になっていくというマクロ志向で全体の流れを読むことが難しくなってしまう。全体の流れが大凡わかるということは、長年会社に勤めていないと、なかなか捉えられないスキルになっていってしまうことが多いのだ。


全体の流れを先に知る大切さ

個人事業主からスタートしている「わざわざ」が大切にしていることは、先に全体の流れを徹底的に伝えることである。アルバイトも正社員も関係なく、日々売上や販売数、利益などの数字に触れてもらっている。事務所のホワイトボードには日々の数字が書き込まれ、社内LINEでは日報が回ってくる。

さらに、部署の垣根をなくすために、全員でご飯を食べる「賄い制度」でコミュニケーションをとり、年に数回の全員参加の1日研修、さらに週1回の全体ミーティングで否応無しに各部署の様子が伝わってくる。会社としては、兎に角、部と部が分断しないようにコミュニケーションの機会を沢山作るように心がけている。

出荷に携わっている「おとどけ部」のメンバーは、オンラインストア制作の「つうしん部」がどのような工夫をして注文を取ってきているか知っているし、実店舗を運営する「おみせ部」は「つうしん部」が配信した内容を元に、店舗レイアウトを組んでいく。「つうしん部」はオリジナル製品を企画販売する「ものづくり部」に入荷情報を聞き販売方法を考え、「おみせ部」は仕入れや商品管理を担当する「おしなもの部」から在庫をもらい実店舗で販売していく。

陣頭指揮を取る人材はほぼ介在していない。各部署が話し合ってどんどん勝手に連携していくのが一番スムーズなため、リーダーが連絡窓口になることだけ決めて後は自由に任せている。


人を時間で分割する

「わざわざ」で最も特徴的な働き方が「人を時間で分割する」という概念だ。これはわたしが個人事業主だった頃の働き方を、そのままスタッフに流用していったのだが、これが特徴的な働き方を生み出している。まずわたしは個人事業主の時に一人で全業務を効率よく行うために、曜日と時間で仕事を区切ることにしていた。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

この連載について

初回を読む
わざわざ平田の思索日記

平田はる香

長野県東御市にある「パンと日用品の店 わざわざ」。山の上の長閑なこの場所に、平田はる香さんは2009年にひとりでお店を開きました。平田さんがnoteで公開した記事「山の上のパン屋に人が集まるわけ」が大いに反響を呼び、独自の経営スタイル...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

DMG_Macoto 【全部の業務を、考える作業、ルーティン作業などとジャンル毎にまとめて1週間の中に配置すると、驚くほどの時間が生まれてくる】 11ヶ月前 replyretweetfavorite

paseri_mom 数字のことや他部署のこと、上からただやれって言われると嫌になる。 わざわざではそれらを自然と取り組める仕組みができている。 誰でもできるようになる工夫がすごいなぁ。 https://t.co/Liq3do54Eo 11ヶ月前 replyretweetfavorite

taroshin999 組織が大きくなるとどうしても小さな歯車になりがちで、全体が見えず仕事のモチベーションが上がらなくなる。 その問題の答えの1つがここにある。 @wazawazapan | 12ヶ月前 replyretweetfavorite

yuuki_chihiro_ |平田はる香 @wazawazapan |わざわざ平田の思索日記 https://t.co/PGNAuQif4h 12ヶ月前 replyretweetfavorite