私が10年勤めた山小屋を辞め、ライターへの一歩を踏み出した理由

昨年までの10年間、山小屋で働いていた小屋ガールの吉玉サキさん。3年前、諦めかけていた物書きへの夢が再燃するも、「まだ山小屋の仕事をやりきってない」という気持ちを抱えていた吉玉さん。逃げで終わりたくないという思いから、もう一年山小屋で働いてみることに。そして…。

新しい年になって3日目。「今年はどういう一年にしようかな」と思いを巡らせている人も多いだろう。

中には、新しい一歩を踏み出す決意を固めている人もいるのではないだろうか?

私はというと、昨年のお正月がそうだった。約10年勤めた山小屋を辞め、ライターの道に向かって一歩踏み出したタイミングで新年を迎えた。

……と言うと、まるであっさりと転身したみたいだけど、実は「ライターになりたい!」と思いはじめてから山小屋を辞めるまで、2年近く思い悩んでいた。

今回は、そのときのことを書こうと思う。


秋になると飛び交う「来年どうする?」という言葉

たびたび書いているとおり、山小屋はワンシーズンごとの契約だ。来年も山小屋で働くかどうかは本人次第。

そのため、秋が深まって下山が近づくと、あちこちで「来年どうする?」という台詞が聞かれるようになる。すっかり秋の風物詩だ。

「来年どうする?」に対する回答は下記の3パターン。

①来年も来るよ
②来年は来ないよ
③どうしようかなぁ

①の人は、来年も働きたい旨を支配人に伝えてから下山することが多い。だけど、必ずしも下山までに決断しなければいけない、というルールはない。「来年は来ない」と言っていたのに、翌春になって「やっぱり今年も雇ってください」と言い出す人もいる。

②は、山小屋が合わなかった人や、最初からワンシーズン限りと決めて働きに来ている人。

③は逆で、未来がノープランの状態で山小屋に来た人。だいたいの人は、山にいるうちに来年のビジョンが見えてくる。けれど、やっぱりノープランのまま下山していく人もいる。

意外かもしれないけど、長く働いているスタッフにも③のタイプはいる。

毎年のように「来年どうしよう、今年で最後にしようかな」と言いながら、翌年もやっぱりいるのだ。特に女性スタッフに多い。狼少年みたいなもので、毎年言っていると「あー、はいはい、でも来年もいるんでしょ?w」「辞める辞める詐欺じゃんw」などとからかわれる。

私はというと、ずっと、下山の段階で来年のことを決めているタイプだった。

けれど、決めかねてしまう人の気持ちもわかる。

最後の2年は、ひどく迷ったからだ。


諦めていた物書きへの夢が再燃。山小屋を辞めようか悩む

山小屋を辞めることを考えはじめたのは2016年だった。

実はその年、私はエッセイ本を出版した。吉玉サキ名義ではなく、別の名前で出している。

高校生のときからずっと、作家になりたかった。専門学校では文芸創作を学び、小説を書いては新人賞に応募した。けれど、結果は良くて二次選考止まり。25歳のとき、夢を諦めて書くことをやめた。

再び書きはじめたのは30歳のとき。長旅から帰国し、その体験を半年がかりで書いた。原稿を知人のフリー編集者に見せたところ、運良く出版に漕ぎ着けた。

そのことにより、諦めていた物書きへの夢が再燃した。

また、その頃はじめてwebライターという職業を知り、「そっか、小説家のほかにも文章を書く仕事はあるんだ」と気づいた。

書くことを仕事にしたいなぁ……。

漠然とそんな気持ちを抱きながらも、例年通り山小屋で働いていた。

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小屋ガール通信

吉玉サキ

第2回cakesクリエイターコンテスト受賞作! 新卒で入った会社を数ヶ月で辞めてニート状態になり、自分のことを「社会不適合者」と思っていた23歳の女性が向かった新天地は山小屋のアルバイト。それまで一度も本格的な登山をしたことのなかった...もっと読む

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コメント

etozudeyoshida 📷 https://t.co/Uo1mXA4y0v https://t.co/hWxPN9ES9Y 約2ヶ月前 replyretweetfavorite

etozudeyoshida イラスト、描かせていただきました。 3ヶ月前 replyretweetfavorite

POTAKA3k190M パソコンに向かう姿から静かな決意が伝わってくる 3ヶ月前 replyretweetfavorite

ikb 『嫌いになってから辞めるより、未練があるうちに』この発想・視点はなかったなあ…… 3ヶ月前 replyretweetfavorite