妊娠して以来、たくさんの育児書を読んだり、ネットや雑誌で育児関連の特集を見かければ目を通すようになった。
出産してからは、区の保健師さんやら小児科の看護師さんやらおもちゃ屋さんのベテラン店員さんやら児童館の人やら親戚やらに、ごく自然なノリで、育児にまつわるアドバイスをされるようになった。
この2年ほど、そんな風にしてたくさんの育児論に触れてきて感じたことがある。
世の育児にまつわるアドバイスは、ベースに「母親業や父親業には向き不向きなど存在しない」という価値観があるように思う。
「人には母性(父性)本能があるから親になれば自然とそれが湧いてくる」「子育ては誰でもできること」「子育ては大変だけど、我が子は絶対に可愛いから、そんな可愛い我が子を育てるのは楽しいことに決まっている、だから大丈夫」だいたいそんな感じ。
私は、そんな世の育児論に違和感を覚える。「子育てには、かなり向き不向きがある」と思うから。
だって全ての仕事には向き不向きがある
息子を産んでから1年3ヶ月が経った。日々育てていく中で、コツコツと「我が子の可愛さ」の詳細を知った。産む前は、どれだけ本を読んでも結局ぜんぜん見当がつかなかった「子どもを育てるということが、どういう作業をすることなのか」も、だんだんと分かってきた。
その結果として、「いや、これ、どう考えても、完全に好き嫌いと向き不向きが分かれるタイプの作業でしょ」という結論に行きついた。
だって、全ての仕事には向き不向きがある。それは、どんな作業でも、それが好きな人と嫌いな人、そして得意な人と苦手な人が必ず存在するからで、全ての人が満場一致で「楽しい!得意!好きです!」と言う作業など、この世に1つも存在しない。
そして育児は、すごく現実的な作業であり、やるべき事の多さは仕事と変わらない。
というか、仕事より絶対に大変。
毎日どころか毎秒という単位で、すごく責任の伴う作業の連続で、とくに乳幼児期においては、本当にちょっとしたことが命取りになったり、取り返しのつかない事故や大怪我につながるから、子育て=命そのものや将来を預かっているという状況で、それは世の中に存在するほとんどの仕事よりも重い責任を伴う任務であり、少しも気が抜けない作業だ。少しも大げさではなく、外科医とか救急救命のドクターくらいに命に関わる仕事だと思う。気兼ねなくお酒に酔えるタイミングがないところも似ているし、決して、愛情でふんわりとやり過ごせるようなものではない。
「この作業は、私の趣味に合っている」
そして育児が現実的な作業である以上、向き不向きは当然にある。
営業に向いている人、向いていない人、事務に向いている人、向いてない人がいるように、育児にも向いている人と向いていない人がいる。
やり方に個人差はあるにしろ、育児は基本的には特定のメニューをこなす作業で、やるべきことがある程度決まっている。だから、その作業の内容が趣味に合う人と合わない人がいる。手芸に夢中になるタイプの人と、ただ気が遠くなるだけの人がいるように。
私は毎日育児をしていて「この作業は、私の趣味に合っている」と思う。
よく、年頃を迎えた女性が「産めばどうにかなるのかなぁ?」「子どもとか全然好きじゃないし、育児も興味ないけど、産めば自然と楽しめるのかなぁ」「産めば母性が湧いてきて感覚が変わるのかなぁ」などと悩んでいる様子を見かける。
彼女たちに直接アドバイスする機会は無いし、もし機会があっても私は他人の人生には有料コンテンツ以外では口出しをしないタイプなので意見を伝える機会は無いのだけど、こういう所に書いておくと巡り巡っていつかどこかで誰かの参考になるかもしれないから、この場に、その手の悩みに対しての私なりのアンサーを置いておこうかと思う。
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