グッチーはマンガの装丁デザイナー

独立したグッチーは、いきなり黄金時代=グッチー的バブル期に突入。今回はその仕事の数々のエピソードを語る。
とびきりかっこいいデザインだけでなく、還暦目前のプロ童貞としての独自の視点に基づく発言とライフスタイルも多くの業界人から支持されている山口明(58歳)の自伝『ワイルドチェリーライフ 山口明 童貞力で一億総クリエイター時代を生きる』。

フライング気味でスタート!

山口 95年にフリーとして巣鴨に事務所を借りるわけだけど、最初の仕事がいきなり単行本の装丁だったのよ。熊田さんが部下に「山口に仕事をふれ」って言ってくれたみたいでね。担当の人はかなり不安だったろうな〜(笑)。しかもまだ電話も引いてなかったし、名刺も、買った机もまだ事務所に届かないうちに仕事がきちゃったのよ。

──すごいフライング。誰の単行本だったんですか?

山口 今、山崎紗也夏っていう名前でやっている沖さやか先生の『ななコング』っていう漫画だったよ。

──スタイル抜群なのに顔はブスで、しかも当人は自分のことをかわいいって思い込んでる女の子の漫画ですね。

山口 熊田さんに「これハズしたらどうなるのかな?」って言ったら、「まぁ当分仕事こねぇだろうな」とか言うんだよ。そんなこと言われたらドキドキするよな(笑)。だからけっこう気合い入れたよ。この一発目が名刺代わりにならなきゃいけないし、ほかの人とはまったく違う感じにしないといけないし、それまでにないような漫画の単行本にしないといけなかったからね。

──好きにやらせてもらえたんですか?

山口 そうだね。だいたい漫画のデザインのディレクションをする人って当時はあんまりいなかったんだよ。ほとんどの場合、先生が描いてきた表紙用のカットを大きく入れて、書名と先生の名前を大きく入れるだけっていうのがほとんどでさ。でも、オレは新人も新人だけど、悩みに悩んでいろいろアイデアを出したのよ。で、山崎紗也夏先生も当時新人で初めての単行本だったから、先生の絵自体もそこまで認識されてないじゃん。だからデザイン的に目を引く方がいいんじゃねーかって話になったのよ。で、漫画の内容が顔はブスだけど身体はエロいっていう女が主人公。それでオレが考えたのが、主人公のブサイクな顔の絵をでっかいお面にしたのよ。で、体はセーラー服を着た生身の女の子の写真を撮って、っていう。これは担当の人も先生も面白がってくれてさ。

──生身の身体って、グラビアアイドルの人とかで撮影したんですか?

山口 いや、そこまでの金はないから小学館に出入りしてたバイトのお姉ちゃんに頼んでセーラー服着てもらったのよ(笑)。で、写真を網点でけっこう粗くして、文字も全部オレが手描きにして。

──全部手描きの装丁って当時としては珍しいですよね。

山口 珍しかったよ。ふざけてんのか? って感じだったろうな。よくいえば当時としては斬新だったと思うよ。一発目だったけど、やりきったね。ちなみに沖さやか先生の2作目の『マイナス』もけっこう評判良かったんだよ。

──黒板にチョークで描いたようなデザインのやつですよね。

山口 そうそう。連載途中で人肉食描写が問題になって雑誌が回収騒ぎになったりしたんだけど(笑)。あの漫画は高校教師の話だから、近くの学校まで黒板の写真を撮りに行ったのよ。で、タイトルのまわりに落書きしてあるんだけど、それもオレが考えたんだよ。あんなふざけたデザイン、よく許してくれたよなぁ。

97年は出版バブルのピークだった

──その後も立て続けに仕事が来たんですか?

山口 そうだね。最初っからめちゃくちゃ忙しかったんだよ。仕事なんてまったくないと思ってフリーになったのに、意外にもガンガン舞い込んできちゃったね。

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ワイルドチェリーライフ 山口明 童貞力で一億総クリエイター時代を生きる

山口明 /市川力夫

とびきりかっこいいデザインだけでなく、還暦目前のプロ童貞としての独自の視点に基づく発言とライフスタイルも多くの業界人から支持されている山口明(58歳)の人生を追い、劇的に変化を続ける男女問題、やがて人口の約4割が独身世帯「ソロ世帯」に...もっと読む

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