病人が検査すると90%陽性」は「陽性なら90%病人」と同じ?

ビジネスシーンでの例題が考えさせられると好評の新刊『生き残れるビジネスマンになる21の思考実験』からの短期集中連載。前回につづき、「数字は苦手!」な方こそ知っておきたい、危ない落とし穴の見抜き方をレッスンします。

苦手を避けるほどヤバい

 前回は、「続けて赤が出ると、次こそ黒だろう」とつい思ってしまう、心理の落とし穴について解説しました。数字への苦手意識が強く、数字を避けようとすればするほど、足をすくわれます。次の思考実験でも、架空の病気とその発生確率から、数字と心理について考えてみたいと思います。

思考実験6 シコージ病とマサノリの憂鬱

 住環境や食生活の変化からか、最近増えているといわれているシコージ病。発見者の名前からこう名づけられたこの病気の致死率は30%と高く、原因不明であることから、テレビでも特集が組まれ、注意が呼び掛けられています。

「10万人に1人といわれるシコージ病ですが、最近増えているそうです。最初は風邪のような症状なんですね」

 情報番組の司会者が専門家に注意点を聞いているようです。

「はい。倦怠感や熱っぽさから始まります。人によっては症状が出にくい場合もあります。咳は伴いませんので、1つの判断材料になるかもしれませんね。もし、倦怠感や熱っぽさが1週間以上続くなら病院で検査を受けてみてください」

「どのような検査なのですか?」

「血液検査ですね。新たに開発された検査法で、シコージ病にかかっている場合は90%の確率で陽性反応が出るのです。いっぽうでこの病気でない人に陽性反応が出てしまう確率はわずかに0・5%です。かなりの精度といえるでしょう」

「皆さん、この病気は早期発見が重要です。ためらわずに医療機関を受診してください」

 マサノリは、来月から3カ月間海外出張の予定があったので、とくに倦怠感はないものの、念のために検査を受けておくことにしました。そして5日後、マサノリは結果を聞くために検査をした病院に向かいました。

「うーん、陽性ですね……」

 医師は難しい顔をしてマサノリにそう伝えました。

「えっ、私はシコージ病なのですか⁉ 来月からタイに出張なのですが……」

「あといくつか検査をしましょう。それでシコージ病であるか、シコージ病ならばどのくらい進行しているかを調べます。では3日後の土曜日、午前中にいらしてください」

 病院から家に向かう間、マサノリは「90%」という重い数字に肩を落としていました。

「自分は90%の確率でシコージ病なのだから、会社に伝えておいたほうがいいな。長い闘病生活になるかもしれない。自覚症状がないのだからきっと早期だよな。せめて早期だと信じるしかない」

 マサノリの考えは正しいでしょうか。本当に90%の確率でシコージ病なのでしょうか。

「陽性反応が出たら90%シコージ病」なのか

「シコージ病にかかっている場合は90%の確率で陽性反応が出るのです」という専門家の話から、マサノリは、検査で陽性反応が出た自分は90%の確率でシコージ病だと考えました。

 本当にそうでしょうか。

A シコージ病の人が検査を受けると、90%の確率で陽性反応になる

B 検査を受け、陽性反応だった場合、90%の確率でシコージ病

 このAとBは同じことを言っているのでしょうか。どうやら、マサノリは同じことと考えてしまったようです。

陽性反応が出てもかかっていない人が意外に多い

 ここで気になるのは、「この病気でない人に陽性反応が出てしまう確率はわずかに0・5%です」という専門家の言葉です。つまり検査を受けた人のうち、陽性反応が出ても感染していない人が0・5%はいるということになります。

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生き残れるビジネスマンになる21の思考実験

北村良子

変化の著しい昨今、ごく普通のビジネスマンも前例のない難しい状況での決断を迫られがちです。正解なき問題にいかに立ち向かうか。その判断力を養うのに最適なのが、あのサンデル教授の「ハーバード白熱教室」で有名な「思考実験」です。この連載では、...もっと読む

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