「もうそろそろ当たるはず」
年末ジャンボ宝くじも、お年玉つき年賀はがきも、なかなか当たりませんよね。当選発表のたびにみんな、「こんなに毎年外れてきたのだから、もういい加減当たっていいはず」と、思うことでしょう。実際のところ、回数を重ねると、確率はどの程度アップしていくものでしょうか?
思考実験5 ギャンブラーの誤謬
とある有名なカジノで1人の男が悩んでいました。この日、男がこのルーレット台に着いてから、3回連続で赤が出ています。
「うーん、また赤か。3回連続で赤とは少し珍しい。そろそろ黒が出るのではないか?」
男は黒に賭けました。しかし、結果はまたも赤でした。
「そうか……。しかしそろそろ黒の番だろう」
男はそのまま黒に賭け続けました。そして、男の不安と怒りはどんどん大きなものになっていきます。なんとこの日、男がこのルーレット台に着いてから、8回連続で赤が出ているのです。そして、9回めのゲームが始まりました。
コロン!
「また赤か! なぜだ、この台は赤が出るように調節されているのか! クソッ」
男は3回連続で赤が出たときから、次は黒だろう、さすがにその次は黒だろう、と、黒に賭け続けてきました。
それなのに、これで9回連続の赤です。
さて、次は黒が出る可能性が少しは高まるのでしょうか。もしかしたら、この台は赤が出るように調節されている疑いがあるのでしょうか。
感情が判断を鈍らせる
本来、ルーレットには、赤と黒以外のマスもありますから、正確には赤が出る確率と黒が出る確率は50%ずつではありませんが、ここでは計算と思考を単純にするために50%として考えていきます。
最初に赤が出る確率は2分の1(50%)です。2回連続で赤が出る確率は、最初に赤が出て、さらに赤が出たので、4分の1です。同様に、3回連続で赤が出る確率は8分の1となります。確率的に8回中1回の出来事ですから、たしかに男の考えるとおり、〝少し珍しい〟現象のようです。
これを9回連続まで計算していくと、512分の1となります。512回中1回の確率ですから、とても珍しい現象です。1日9回のゲームに参加したとして、1年で一度もお目にかかれない可能性もずいぶん残ります。
これが、もし10回連続で赤となると、なんと1024分の1という驚異的な出来事になります。100分率に直すと約0・098%です。こんな驚異的なことが起こるとは思えないという男の心情もわかるような気もしてきます。
では、男が考えるように、次は「黒」になる確率が少しは高いのでしょうか。
今度は、9回連続で赤の後に黒が出る確率を考えてみます。
9回連続で赤が出る確率は先ほど計算したとおり512分の1です。100分率に直すとだいたい0・2%くらいです。この次に赤ではなく黒が出る確率はどうなるでしょう。先ほどより少しは上がるでしょうか。
ここまでの計算で、もうおわかりでしょう。
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