あなたの秘めた優先順位が露呈する究極の思考実験(後編)

ビジネスシーンでの例題が考えさせられると好評の新刊『生き残れるビジネスマンになる21の思考実験』からの連載。前回は、暴走トロッコが5人の作業員をひき殺そうとするとき、他の1人を犠牲にして5人を救うのか、それとも5人をそのまま見殺しにするのかという究極の選択を考えました。「1人を犠牲にする」が多数派だったのですが、ちょっと条件を変えると状況は一変します。それはなぜでしょうか?

思考実験2 暴走トロッコと大きなリュックの男

 ある晴れた日のこと、線路の上で5人の作業員が作業をしています。あなたはいま、線路の真上に架かる橋の上にいて、そこから作業を見ています。橋の上にはあなたともう1人、男性がいます。男性は巨大なリュックを背負っており、身を乗り出して作業を見ているため、いまにも下に落ちてしまいそうなほどです。

 そこに、たくさんの石を積んだ大きなトロッコが猛スピードで走ってきました。トロッコはブレーキが故障しており、作業員たちの力では止めることができない状態です。

 暴走トロッコが迫っていることに気がついていない作業員たちは黙々と作業に取り組んでいます。巨大なリュックの男性も気がついていないようです。

 このままでは暴走トロッコは、さらにスピードを上げて5人の作業員に激突します。激突された作業員は5人とも死んでしまうことが確実です。

 このすべてを理解しているあなたは、5人の作業員を助ける唯一の方法を知っています。それは、巨大なリュックの男性の足をつかんで、橋から線路の上に落とすことです。そうすれば、リュックと男性がブレーキとなり、トロッコは止まることがわかっているとします。また、男性は確実に落とせるとします。そして、あなたが線路に飛び込んでもトロッコは止まりません。

 あなたはどの作業員ともリュックの男性とも面識はありません。また、リュックの男性も作業員とはなんら関係はありません。あなたがどんなに大きな動きをしても、大きな声を出しても決して作業員は気づくことはありません。あなたがリュックの男性を突き落としたからといって、社会的に不利になることはいっさいないとします。

 さて、あなたは巨大なリュックの男性を突き落としますか。

多数派と少数派が逆転したのはなぜ?

思考実験1で、レバーを切り替えることを選んだ方は、今回もアクションを起こすほうを選んだのでしょうか。それとも違う結論だったでしょうか。

 おそらく今回は、巨大なリュックの男性を突き落とさないほうを選択した方が多いのではないでしょうか。思考実験1とは異なる結果です。それはなぜでしょうか。

 検討にあたり、思考実験2の状況を整理すると、今回も次の3ポイントに集約できます。

①人数は1人と5人で、犠牲者の差は4人である

②片方は「巨大なリュックを背負った男性」を突き落とす必要がある

③もし自分がいなかった場合は5人が犠牲になる

思考実験1と比較すると、2つめのポイントだけが変化しています。

 そして、この1つのポイントの違いによって、多数派が入れ替わったわけです。思考実験2では、「男性を突き落とす」と答えるアクション派が激減し、そのまま何もせずに5人の作業員が犠牲になるほうを選択する非アクション派が圧倒的に増えるのです。回答の割合でいうと、思考実験1とほぼ真逆の結果になることが過去の調査でわかっています。

 これはなぜでしょうか。思考実験1も思考実験2も、アクションの結果は1人が死ぬか5人が死ぬかのどちらかです。違うのはその過程です。そこにはいったい何があるのかを詳しく考えていくことにしましょう。

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生き残れるビジネスマンになる21の思考実験

北村良子

変化の著しい昨今、ごく普通のビジネスマンも前例のない難しい状況での決断を迫られがちです。正解なき問題にいかに立ち向かうか。その判断力を養うのに最適なのが、あのサンデル教授の「ハーバード白熱教室」で有名な「思考実験」です。この連載では、...もっと読む

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tokuyoshikeiji 2の多数派意見は犠牲者を減らすという望ましい結果に至る行為にあえて抵抗するのですから冷静に結果を見すえた最善の選択とはいえないという見方… https://t.co/WIqFiBs1bq 2年弱前 replyretweetfavorite