他に手段がないと理性ではわかっても、わが子を犠牲にできるか

ビジネスシーンでの例題が考えさせられると好評の新刊『生き残れるビジネスマンになる21の思考実験』からの連載。第1回第2回では、あのサンデル教授の「ハーバード白熱教室」でも議論された世界一有名な思考実験「トロッコ問題」を考えました。今回はそのバリエーション「泣き声のジレンマ」で、「わが子に手をかけることができるか」という究極の選択に迫ります。

理性と感情のせめぎ合い

 さて、トロッコ問題には、ほかにもいくつかのバリエーションがありますが、それについては拙著『論理的思考力を鍛える33の思考実験』(彩図社、2017年)に収録しましたので、ここでは別の新たなバージョンを考えてみたいと思います。

 新たにこんな問題も作られています。哲学者であり、心理学者のジョシュア・グリーンによる難題です。

思考実験3 泣き声のジレンマ

 あなたの住む村は敵軍に占領され、いまも村には多くの敵軍の兵士がいます。

 あなたはいま、自分の赤ん坊と、村人たちと共に、とある家の地下室に隠れています。敵軍に見つかれば確実にあなたも赤ん坊も村人たちも殺されてしまうでしょう。

 そんなとき、あなたの赤ん坊が泣き始めました。この声に気づかれ、敵軍の兵士がやってきてしまえば、全員が殺されてしまいます。赤ん坊を泣き止ませるには、あなたが赤ん坊の口をふさいで窒息死させる以外にはありません。

 あなたは赤ん坊を泣き止ませますか。

思考実験1「暴走トロッコと5人の作業員」での多数派は、犠牲者を1人とする「レバーを切り替える」という意見であり、思考実験2「暴走トロッコと大きなリュックの男」での多数派は、大きなリュックの男性を突き落とすことなく、5人が犠牲になるほうを選ぶという意見でした。

 グリーンが提案したこの問題では、これら2つのトロッコ問題よりも意見が割れるそうです。その理由を探っていきたいと思います。あなた自身の意見をどちらかに決めてから読み進んでください。

 まず、思考実験2「暴走トロッコと大きなリュックの男」との共通点を考えていきます。

 大きな共通点は、あなた自身の手で1人を死に追いやる行為だという点です。そうしない場合、多くの犠牲者が出るという点も一致しています。

 では、違いはどこにあるでしょうか。

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この連載について

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生き残れるビジネスマンになる21の思考実験

北村良子

変化の著しい昨今、ごく普通のビジネスマンも前例のない難しい状況での決断を迫られがちです。正解なき問題にいかに立ち向かうか。その判断力を養うのに最適なのが、あのサンデル教授の「ハーバード白熱教室」で有名な「思考実験」です。この連載では、...もっと読む

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