第三回】なごみの湯とBERG(前編)

TVドラマ「孤独のグルメSeason3」がいよいよ来週7月10日(水)より放映開始! さらに注目の集まる「孤独のグルメ」の原作者・久住昌之が今回ふらっと訪れたのは、荻窪。連載第三回は気合を入れて早朝から銭湯に向かったが、ちょっと二日酔い……!? 二日酔いで朝から風呂に入って大丈夫なのか?? 痛快「風呂」×「グルメ」エッセイ!

 第三回は、もうちょっと早く起きて、はっきり「朝風呂!」って感じのに入ろうと思った。それで、でもがんばりすぎると、この連載の意図にあわないような気がして(ウソばっかり。ちょっとでも寝坊したいから)、近場で朝風呂に入れるところを探した。
 そしたら荻窪の駅のすぐそばに、あるじゃない「なごみの湯」。
 ここは昔から知っている。
 昔は「湯~とぴあ」というダサイ名前だった。
  その店名が嫌だった。「とぴあ」が平仮名なのが甘ったるくて嫌だった。さらに「~」のこねくりが嫌だった。「ゆ~もあ」のつもりなんだろうか。すぐわかる ツマラナイ駄洒落を、さらに噛んで含めるようにいじった店名だ。まるっきり、センス無い。そんなところに入る自分が、許せない。
 と、若さのせいで、その名前を忌み嫌っていた。
 当時は喫茶店の「営業中」の札が丸っこい文字で「あきないちゅう」と書いてあるくらいでも、気に障ったものだ。
 えっらそうに。どんだけ自分がセンスあったんだ、かっこよかったんだ!
 それが、
 今は、そんなことに、いちいちムカつかない。
 飲食店のメニューで「森の木こりのわがままサラダ」とかそういうのが、いい歳して口に出すのが恥ずかしいから、やめてくれ!と心で思うくらいだ。
 
 でも若いボクは、たぶん友人に誘われ、内心あまり行きたくなかったが、バイト帰りかなんかに行った。
 湯~とぴあには、当時から何種類かの風呂があって、たしか女性の館内着がムームーだった。
 ムームー。これまた変なものだ。名前が変なのは、もともとハワイのものだからだろう。
 昔、よくオバチャンが真夏に、普段着として派手な柄のを着ていた。おばあちゃんもきていた。楽だからって。今思えばノーブラだった。全然やらしくないどころか、やめて欲しかったが。なぜか田舎でも多く見られた。田んぼとムームー。今思うと、ちぐはぐもいいところだ。
 ボクはまだ子供だったから、ハワイのものとは、思いもよらず「変な名前の派手過ぎブカブカ過ぎな服」と思っていた。
 そのイメージがあったから、最初に湯~とぴあに行った時、ちょっと驚いた。
 昔の田舎のオバチャン着を、若いコが無理矢理着させられているみたいで。
 男はアロハみたいなのと、膝までのダブダブ半ズボン。
 男女ともに派手な花柄だった。なんだろ。ハワイなんか行ったことある人、今より全然少ない時代だ。

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ふらっと朝湯酒

久住昌之

三度TVドラマとなることが決定した「孤独のグルメ」の原作者久住昌之が、新たに提案するのが“ふらっと朝湯酒”。その名の通り、朝からお風呂入って一杯飲るという試みを、やってみようというエッセイである。朝から飲むからって、♪朝寝朝酒朝湯が大...もっと読む

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yanabo いま、一番愉しみな連載はこれです。荻窪の早朝銭湯に二日酔いのクスミ先生が、挑む。 5年弱前 replyretweetfavorite