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新幹線走行中の激震
富士山を左に見ながら東海道新幹線に乗っていたら、突然、社内で携帯の音が一斉に鳴り響いた。緊急地震速報だ。同時に急ブレーキ、速度が落ち始めたところで、カタカタカタ……。
いつもの車内の揺れとは少し違う。揺れがどんどん激しく、大きくなっていく。車窓の富士山がぶれて見える。おや? と思ったその瞬間……。
ドーンドーン!
ものすごい衝撃とともに、体が投げ出された。キャー、ギャーという悲鳴を上げて、人が宙に浮く。ギギギー! 車両が大きく左右に揺さぶられ、レールとこすれる金属音が耳をつんざいた。棚の荷物が飛んでくる。あちこちで悲鳴が聞こえる。
車両は何とか止まった。だが、地面全体がまだ大きく揺れ動いている。右へ左へ、その中、片手に握りしめていた携帯の画面に何とか目をやると、「東海道沖を震源にM8・0」と速報が出ている。東海地震だ。この揺れだと東海地震と東南海地震が連動したかもしれない。
ガタン! 車両の後ろが沈み込んだ感覚がした。座席の背もたれにしがみつきながら、延々と続く激しい揺れに耐えた。
生きた心地はしなかったが、揺れは収まったようだ。体中に痛みが走る。周りには動けない乗客もいる。
そして、再び携帯のアラーム音が鳴った。
「緊急地震速報 四国沖で地震 最大震度7(推定)」
ああ、もう南海地震まで連動している。もうろうとする意識の中で、車掌の指示に従って外に出た。眼前に広がっていたのは、無数の煙が立ち上る街と、遠くに見える富士山。その中腹から煙が立ち上っているように見える。そのとき、遠くから叫び声が聞こえた。「津波が来るぞー!」
私は、絶望感に襲われながら、とにかく線路から離れ高台に逃げようと足を前に運んだ。
……これはあくまで想像のシミュレーションの世界です。もちろん、私もこんな地獄絵に遭遇したくはありません。しかし、あり得なくはないと思って、新幹線に乗るときに心構えはしています。これよりもっと酷い惨事が、日本各地で同時発生する。それが南海トラフ巨大地震の恐ろしさなのです。
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