写真で話そう

自然を装った自然さ」よりも「適度な緊張」

自然な表情、自然な笑顔、写真を撮るときに好まれる常套句ですが、カメラを向けられて自然にできる人など、ほとんど存在しません。ポートレートを撮る時の少しの緊張こそが、被写体を引き立てるのです。

ワタナベアニです。いつもはいかにもポートレートという写真ですけど、今日は本番を撮る前のウォーミングアップ的な、スナップとの中間を探ってみます。

俺の好みですが、写る人は、私はいま撮られているのだという緊張が微妙に伝わる方が好きです。よく、自然な一瞬の表情を、なんて言いますけど、誰かにカメラを向けられて自然でいられるはずがないんです。スナップならいいですが、ポートレートだと「自然を装った何気ない自然さ」になってしまいますよね。それは緊張しているより嘘っぽい。

ですから、ちゃんとしたポートレートを撮る前に、こういうスナップとポートレートの中間のような写真を撮りながら、精神的にも物理的にも距離を詰めていきます。緊張というのはそれほど持続しませんから、1回目のシャッターより5回目、それよりは10回目と、徐々に慣れてきます。

自然にいるべきところで撮り始め、慣れてきた頃に自分が撮りたい場所に移動してもらいます。モデルでもない人がいきなりスタジオの真ん中に立たされてもガチガチになりますからね。かと言ってカメラに慣れすぎてもダメです。何かを演じようとする余裕が出てくるからです。俺にとっての理想は、ギリギリ緊張は解けていないけど写真を撮られる覚悟はできてきた、くらいの佇まいです。

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ワタナベアニ

写真家・ワタナベアニさん。年中無休、四六時中、カメラのシャッターを切り続けています。この連載ではそんなワタナベアニさんのライフワークともいえる、ポートレート写真を掲載していきます。レンズのむこう側で写真家は何を思っているのか、その様子...もっと読む

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elephant_0655 |ワタナベアニ https://t.co/U2qkUOn049 「小林直己と写真」をテーマとして考えたら、この連載記事はとても勉強になる 実践できてないけれど、いつも「なるほどなー」と… https://t.co/BnX0FifsJ4 6ヶ月前 replyretweetfavorite