テーブルを囲んだ幸安インターたちは、顔を見合わせていた。誰か答えてくれるのを待っていそうな、微妙な雰囲気。
見合ってしまう理由は簡単で、実際のところ、幸安インターたちはみんなライバルだからだ。幸安委員会からの任務は実地試験なのだと、誰もが知っている。そして自分の点数を上げるよりは、誰かの失敗を報告するほうがずっと楽。
そういうのが周知の事実として、暗黙に了解されているんです。
一緒にやろうと言う仲間が、一番、信用ならない。そう考えている幸安委員もいる、なんて、解お兄さんから聞いてしまったことがある。私も学校で教えられている。クラスの誰かが不幸の徴候を見せたら、速やかに担任に報告するのが義務なんです。
その義務は、幸福安心委員も例外にはなってない。お互いを監視する任務は、市国民の基本として身についているはず。だから交わされるみんなの視線が、とても微妙。
この中から、正規の幸福安心委員に合格するのは、多分、ひとりくらいなのだろう。
だから漣くんに対しては、みんなちょっぴり距離を置いている。チームメンバーに入ってきてもらったら困る、強力なライバルになりそう、という思いがあるのかも。というか、あって当然だ。
普段ぼんやりしてる感じの漣くんは、話が本題に入ると、途端に雰囲気が変わる。
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