こちら、幸福安心委員会です。

第5回 序幕 【オンディーヌ 〈No.01_39〉】 3年前

女王サイレンの監視体「オンディーヌ」は普通の人間の振りをして暮らしている。小学生の緑川初音も、オンディーヌのひとり。通学バスの中で、任務発生…?
人気ボカロ楽曲「こちら、幸福安心委員会です。」のノベライズ第2弾の発売を記念して、第1弾ノベル『こちら、幸福安心委員会です。』の一部を公開します。

【オンディーヌ〈No.01_39〉】3年前

 私の名前は、翠川初音みどりかわはつね。といっても、それは表向き。
 本当には、オンディーヌ〈01_39〉という監視体の名前がある。水辺の女王サイレンの目と耳になって、市国民の幸福と安心を監視するのが任務なんです。

 私は、今日は特別な任務を受けている。救いようのない、とても悪い不幸分子を処分する、大切なお仕事を義務づけられた。
 そういう大事な仕事の途中だというのに、私は、他のことが気になって仕方がない。
 今は市バスに乗って、いつも通っている小学校へ向かっている。同乗している無数の乗客とは違って、隣に座っている男の子は、私にとって特別な存在だ。黄波漣。冷たい感じのする男の子なんだけれども、本当は違う、と私は知っている。

 ほぼ満員の市バスの中で、搭乗口近くのポールに押しつけられそうになっている私の横に、漣くんは立っている。市バスが揺れると、乗客も揺れる。どっと私のほうに倒れかかってくる乗客もいる。
 すると漣くんは、その間に体を挟む。両腕を壁に突っ張って耐える。
「すごく邪魔。おじさん、大人なんだから、しっかり両手でつり革に掴まりなよ」

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes・note会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

ケイクス

この連載について

初回を読む
こちら、幸福安心委員会です。

wogura /うたたP /鳥居羊

巨大ウォーターフロントにある「みずべの公園市国」。そこは完全で完璧な女王サイレンと呼ばれるAI(人工知能)が統べる国家だ。サイレンは自らの分身である“オンディーヌ”と、市国民のなかから選ばれたエリート集団“幸福安心委員会”を使って市国...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

Tweetがありません