言葉はプレゼントに似ている。いいか悪いか、決めるのは相手。

一生懸命選んだプレゼント。もちろん、相手に喜んでほしい。でも、送り手がそのプレゼントにどれだけの思いを込めようとも、あげた途端すでにそのプレゼントは受け手のものなのである。そして、喜ぶかどうかは、もらう人がそのプレゼントにベネフィットを感じるかどうか。送り手は、意外なくらい弱者なのだ!! 話題の『伝わるしくみ』から、特別連載。

『伝わるしくみ』山本高
マガジンハウス

言葉はプレゼントに似ている

「伝える」ということを「プレゼント」に例えてみる。

 ある女子が彼氏へのクリスマスプレゼントを考えた。付き合ってもう数年になる。キーホルダーだのネクタイだの、例年通りのありきたりのものではもう驚いてもらえないかもしれない。3日間考え抜いて「手編みのセーター」を贈ることにした。もちろん彼女のお手製である。

 なにぶん初めての手編みである。マニュアル本を読み、練習し、わからないところは経験者に尋ね、仕事が終わって帰宅したあと夜眠いのも我慢し時間をかけて丁寧に編み上げた。すべては彼氏のためである。立派な箱を用意して包装しクリスマスイブを迎える。差し出すと、彼は例年とは違うパッケージに驚き期待したような顔で「開けていい?」と聞く。もちろん!

 反応は、「何これ?」。「手編みのセーター」と彼女。「今時手編みのセーターなんか着る?」と彼(秒殺)。

 その手編みのセーターには彼女の、時間も労力もお金も愛情も情熱も配慮も夢も汗も、もしかしたら涙も込められているが、「関係ある/ない」→「トクする/そうじゃない」でいうと「彼女からもらったわけだから関係はあるにはあるけど/着てみたところでオレはトクしないな」と、彼は判断したのだ。
(もうちょっと違う言い方はあるんじゃないのとは思うが)

 この切ないクリスマスの物語は、「伝える」ことに似ている。それどころか、そのものにも思える。プレゼントが言葉にあたる。

「言葉のメカニズム」にあてはめてみる。

プレゼントは贈る人ともらう人をつくる。プレゼントはもらう人の手に渡る。
プレゼントを贈ることのよってもらう人を贈る人の望む方向(喜んでもらう)へ動かそうとする。
 プレゼントはもらう人へ、こんなの欲しかったでしょ? と提案していると考えることもできる。
 提案である以上、贈る人は喜ばれること以外を求めてはいない。
 しかしその提案(こんなのどう?)に喜ぶかどうか、すべてを決めるのはもらう人である。
 喜ぶかどうかを決める判断の基準は、もらう人がそのプレゼントにベネフィットを感じるかどうかである。

送り手という弱者

「言葉を伝える」ことと「プレゼントを贈る」ことは、切ないくらい似ている。

 送り手がそのプレゼントにどれだけの思いを込めようとも、あげた途端すでにそのプレゼントは受け手のものなのである。
「オレのあげたプレゼントだからオレのものだ」という理屈がないように、送り手の言葉は発した途端にもう受け手のものである。

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