「ゲームのルール」を知っているか——2007年、35歳、手に入れた資産はガッチリ守る
私はかつて借金が500万円以上あった。しかし、その後の10年間で資産を1億円にまで増やすことに成功した。今ではお金に困ることはまったくない。お金のために働くステージはとっくに卒業している。 「そんなことが可能なのか?」と思われたかもしれない。 心配は無用。可能だ。
この連載では、私がドン底だった時代にどんな本を読み、そこからどんな知恵を授かり、どう行動し、その結果どんな変化が起きたのか? そのすべての歩みをご紹介したい。 私は多くの本を読み「お金のプロフェッショナル」たちの知恵、哲学、ノウハウのエッセンスを抽出した。
すると、共通する「法則」が浮かび上がってきた。 それを私は「1億円の法則」と名付けた。 この法則をきちんと理解すれば、私が 10 年かけてきた試行錯誤で得た成果をこの1冊であなたは手にすることができる。
法則30 「敗者のゲーム」に巻き込まれない
私は投資などの複業のおかげで、本業のアウトソーシングが可能なだけのお金を手にすることができた。
しかし一方で、このIPOと中国株を中心にしながら資産運用をするという方法に限界を感じ始めてもいた。
限界を感じ始めたのには、2つの理由がある。
ひとつ目は、「ITバブルの崩壊」だ。 私が本業のアウトソーシングを決意した2006年は、ホリエモンこと堀江貴文氏や、村上ファンドの村上世彰氏が、証券取引法違反で逮捕され、ITバブル、IPOバブルが崩壊した年でもある。
それまではこのバブルのおかげで、私は「ローリスク、ハイリターン」でIPOの売買を行なうことができていた。しかし、この事件を契機にIPOの件数が少なくなっていくことが予測された。 2つ目は、IPOは「やりたいこと」ではない、ということだ。
私のやりたいことは、「ファイナンシャル・インディペンデンス(経済的独立)」を達成して自由な時間を得て、本を書いたり、講演を行なったりすることだ。
IPOは、あくまで「ファイナンシャル・インディペンデンス(経済的独立)」を果たすための「手段」でしかない。 またIPOは、つねに多数の銘柄を頻繁に売り買いしなくてはならない。
私は利を得るために、デイトレーダー並みに忙しく取引をしていた。そうした生活に疲れを感じてもいた。このまま続けていては、本業をアウトソーシングできたとしても、「やりたいこと」を実現していく時間が得にくいだろうと感じた。
たしかに、IPOは短期間でお金を儲けられる素晴らしい手段だった。私はこのおかげで、目標時期よりもかなり早くお金を増やすことができた。
しかし私の資産総額は、もう「ファイナンシャル・インディペンデンス(経済的独立)」を果たす一歩手前まで来ていた。もうすでに、リスクや手間をかけてまで、しゃかりきにお金を増やす必要はなくなっていたのだ。 前に「資産形成期」と「資産運用期」の話を少ししたが、この段階では「資産運用期」にそろそろ移行すべきだと判断したのだ。
一気にお金を増やせなくてもいいから、堅実にお金を増やせるような資産運用の方法にシフトしていきたい。
そんなときに出会った本が、『敗者のゲーム──なぜ資産運用に勝てないのか』だった。
本書は、運用哲学の基本を説いた投資家のバイブルだ。
投資の世界において平均を超える勝ち組になろうとするのではなく、敗者にならないためにはどうしたらよいか、長期投資に必要な戦略や指針を解説している。
この中の一文が、私の目に飛び込んできた。
資産運用と呼ばれる「マネーゲーム」も、最近数十年で「勝者のゲーム」から「敗者のゲーム」へと変わってしまった。
証券運用の世界で根本的変化が起きたのだ。
「敗者のゲーム」とは何か?
著者は、アメリカの株式市場を例にこう表現している。
株式市場に、個人投資家ではなくプロの機関投資家が多数参入するようになってしまった。その数は市場の90%を占めるようにもなってきている。
機関投資家とは、銀行や生命保険会社、証券会社、投資ファンドなど、企業体で投資を行なっている投資家のことだ。個人の投資家よりも大口の金額を扱うため、その取引が市場に与える影響は大きい。
このような状況の中ではアマチュア個人投資家は決して勝つことのない「敗者のゲーム」をせざるを得ないというのだ。 これはゴルフ好きのサラリーマンが石川遼選手に真っ向勝負を挑むようなもの。アマチュアがプロに勝てるはずがない。
戦う前から敗者になることが決まっている、これが「敗者のゲーム」である。
また、この本では「機関投資家も『敗者のゲーム』を始めている」と続ける。 株式市場が機関投資家だけの場所になり、プロ同士で熾烈な争いをするようになってしまった。
アマチュアを相手にしていたときに圧倒的な強さを誇っていたプロも、プロ同士となると苦戦を強いられる。 石川遼選手だって、プロの試合では優勝はおろか、予選落ちすることだってある。プロの世界は、勝ち続けることが難しい場所なのだ。
投資で勝ち続けることは難しい。
著者はこう続ける。
「短期的にマーケットで『勝つ』ことはできても、長期にわたって市場の平均以上の成績を出せる投資家はほとんどいない」と──。
アメリカの株式市場での投資家の姿が、ITバブル崩壊後の日本の投資家の姿に大きく重なったのだった。 これ以上IPOを続けても、「敗者のゲーム」に巻き込まれるだけだ。
最悪、資産を大きく減らす事態にもなりかねない。 私は今までの資産運用について、根本的に考え直すことにした。
ポイント:負けるゲームに参加しないようにしよう
法則31 答えは「インデックス•ファンド」
では、「敗者のゲーム」に巻き込まれない資産運用の方法はあるのか?
前書にはこう書かれている。
勝つためにもっとも簡単な方法は、インデックス・ファンドを活用する方法である。
「インデックス・ファンド」とは、投資信託のひとつ。
投資信託の運用は大きく分けて、この「インデックス・ファンド」と「アクティブ・ファンド」に分けられる。 まず、「アクティブ・ファンド」について説明をしよう。
これは、債券や株式などの投資先や投資割合について、投資のプロ(=ファンド・マネージャーと呼ばれる人)がすべてを決めて運用するというものだ。
投資のプロは英知を結集して、ファンドの基準価額が市場平均株価を上回ることを目標に運用を行なう。日本の大部分の投資信託がこのタイプにあたる。 「投資のプロが運用してくれるなら安心できる」。もし、あなたがそう思ったとしたら大きな間違いだ。
さっき話したとおり、この「アクティブ・ファンド」こそ、「敗者のゲーム」の最たるものなのだ。 『敗者のゲーム』によると、プロの運用するファンドの動きを25年間分抽出してみたら、その4分の3以上が「S&P(スタンダード・アンド・プアーズ)500株価指数」を下回ったという。
「S&P500株価指数」というのは、アメリカの日経平均株価のようなものである。 「アクティブ・ファンド」は市場平均株価を上回ることを目標に運用を行なっているはずだ。それなのに4分の3は勝てないというのが現実なのだ。 そこで登場するのが、「インデックス・ファンド」だ。
これはファンドの基準価額が、ある指数(インデックス)に連動した値動きをすることを目標に運用するものだ。 インデックスとは、日本の場合、日経平均株価以外のTOPIX(東証株価指数)などのこと。インデックスに連動するということは、市場平均に近い値動きをするということだ。 つまり、こういうことになる。
「アクティブ・ファンド」は市場平均を大きく上回る可能性があるかもしれないが、逆に大きく下回る危険もはらんでいる。
一方、「インデックス・ファンド」は、つねに市場平均に近い値動きをしているので、大きな勝ちもないかもしれないが、負けることもない。
「インデックス・ファンド」は、「負けない投資」なのだ。 しかも、市場というものは、長期的に眺めれば、1度暴落しても必ず持ち直すという値動きを今も描き続けている。
この法則を信じれば、長期運用を前提にさえすれば、「インデックス・ファンド」は負けないどころか「いつかは勝つことのできる」投資方法なのだ。 ウォーレン・バフェットの名前を聞いたことがない人はいないだろう。
世界最大の投資持株会社である「バークシャー・ハサウェイ」の筆頭株主であり、同社の会長兼CEOだ。 彼の長期投資のスタイルを手本とする人は多い。
また、偉大な投資家というだけでなく、慈善事業にも積極的で大富豪になった今も、質素な生活を送っている。世界中の投資家の尊敬を集めている人物だ。
『敗者のゲーム』の中では、私の尊敬するバフェット氏の言葉を引用しながら、こうも言っている。少し長くなるが引用してみる。
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