プロメテウス・伊藤計劃/計画・屍者の帝国

「新・山形月報!」の第二回目は、映画『プロメテウス』に始まり、ウラジーミル・ソローキン『青い脂』や国書刊行会のものを中心とした海外文学を眺め、そして伊藤計劃『屍者の帝国』と向き合う高密度の内容です。ご堪能あれ!

仕事柄、出張が多いもので、映画を観るときも「これは機内でやりそうだな」と思うとついついパスしてしまうため、映画館で観るのは『ゾンビ・ストリッパーズ』とかろくでもない代物ばかり。これではいかんと思って、こないだリドリー・スコット期待の新作『プロメテウス』を観てきたんですが……。

なんというか、微妙だなあ。まず予告編で出ていた通り、なにやら時代も地域もちがう世界中の遺跡で、同じ星座を目指して指さす巨人の絵があったというだけで、そこが人類の起源だ、人類の創造主がそこにいるにちがいない、と言って、たぶん日本の一年分の国家予算を注ぎ込んでも足らなさそうなすごい宇宙船を作ってでかけていくんですよ。

えー、なんでそれだけで、創造主がいるなんて思うんですか! たとえば世界中で北斗七星やアンドロメダは結構メジャーな星座であれこれ神話になったりしてますけど、だれもそれだけで宇宙船飛ばしたりしませんよ?? そこまで話を進めるのは飛躍がすぎませんか。そしてその飛躍した社長さんにかわるお目付役としてシャーリーズ・セロン様がくるんだけど、結局この人、別にいなくても全然かまわなくね? 話の中でもまったく活躍しないんですけど。どうせ無駄にいるなら、もっとりりしいかっこよさを発揮したサービス場面がほしいですわ。

さらに遺伝子って、飲んだらただのタンパク質で分解されちゃうんですけど。川に流しても何も起きませんよー。それに、どうして創造主のところに行ったら不老不死にしてもらえると思うわけ? ぼくのところに昔の報告書がやってきて不老不死にしろとか言い出したら、即座にシュレッダー送りよ。さらに、あのイカはなんだ! エサも喰ってないのにでかくなるな!

と、いろいろ不満の多い映画で、特に脚本とかストーリー作りの基本があまりにおざなりではないかと。帰って『エイリアン』を観直したが、「狭いところにエイリアンと閉じ込められてコワー!」というきわめて単純な話をうまーく作ってあって、改めて名作。やはり物語能力って重要だと思う。そして映画がダメになっている理由の一つは、そういううまい物語作りに必須の細かい伏線やほのめかしを、観衆が読み取って理解する能力が下がっているせいもあると思うのだ。

……というわけで、最近わさわさ出ているおもしろげな小説をたくさん読もう。まず、レオ・ペルッツ『夜毎に石の橋の下で』(国書刊行会)。

夜毎に石の橋の下で
夜毎に石の橋の下で

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山形浩生

経済、文学、コンピュータなどの多方面で八面六臂の活躍をする山形浩生さん。その山形さんが月に一度、読んだ本、気になる現象について読者にお届けする密度の濃いレポートです。

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