努力が実る瞬間は絶対くる

伝説の棋士から一転、愛くるしい癒しキャラの「ひふみん」として芸能界でバツグンの存在感を放つ加藤一二三氏。どんな場面でも前向きに生きる姿勢の根本には、いったい何があるのでしょうか。 著書『幸福の一手 いつもよろこびはすぐそばに』から、よりすぐりのエピソードを特別公開します。 第5回は、努力を続けるための考え方について。

努力は「臨界点」に達してこそ実る

「努力は必ず実る」と説く書物は多いものです。

 もちろん私も、そうであってほしいと思います。

 ただ、努力が実を結ぶには「臨界点」とも呼ぶべきものが存在する気がしています。

 たとえば隕石にまつわる、次のようなエピソードがあります。

 隕石に摂氏800度の熱を加えると、そこから水が出てくるのだそうです。 ただし、750度の熱を加えても、水は出ないのだとか(これは学生時代に本で読んだ知識なので、現在は異なった説が出ているかもしれません)。

 この隕石の事実は、大きな示唆に富んでいます。 「800度」という「臨界点」に達しない限り、隕石に決定的な変化は現れないのです。


「6時間」かけて見つからなくても、「7時間」目には見えてくる

 じつは将棋という勝負の世界でも、まったく同じことがいえます。

「6時間」考えていい手が見つからなくても、「7時間」考えるといい手が見つかることがあります。

 つまりこのとき、「7時間」というのが、最善手を見つけるのに欠かせない間の長さであり、私にとっての「臨界点」なのです。ほんの少しでも「臨界点」に満たないと、最善手は見つからないということがありえるのです。

 たとえば、6時間考えたところで「もう努力は実らないだろう」と諦めてしまっては、それまでのがんばりが水の泡。費やした時間もエネルギーもムダになってしまいます。

 思い起こせば1968年。大山名人に挑んだ「第7期十段戦」の第4局で、私は一手に7時間をかけました。しかし、そのおかげですばらしい最善手を見つけることができ、それが原動力になって十段になれたという経験があります。

 もちろん、このような「長考」のおかげで、終盤では持ち時間が少なくなり、秒読みに追い込まれることもあり、「痛しかゆし」という側面はあります。

 しかし必要に迫られると、人は能力を伸ばせるもの。 「長考」をしたいがあまりに、早指しにも長けるようになり、やがては「一分将棋の達人」と褒めていただくまでになりました。

 つまり「臨界点」に至るまで努力を重ねるには、自分で環境や条件を整えたり、調節したりと、まったく違う方面での努力が必要になることがあるのです。


「時短」では見えてこないもの

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この連載について

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幸福の一手 いつもよろこびはすぐそばに

加藤一二三

「大丈夫、あなたの幸せは、用意されているから」 伝説の棋士から一転、愛くるしい癒しキャラの「ひふみん」としてバツグンの存在感を放つ加藤一二三氏。どんな場面でも、笑みを絶やさず、前向きに生きる姿勢の根本には、ゆるぎない信仰がありました...もっと読む

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コメント

hifumikato 連載第5回目 『』 |加藤一二三 @hifumikato | 8ヶ月前 replyretweetfavorite

hifumikato 6時間かけて見えなかった絶妙手でも7時間目には見える瞬間が訪れるから、人生は奥深いのです。 8ヶ月前 replyretweetfavorite

shogitarou36 (`・ω・´) 「臨界点」が人生かけても届かないとこにあるとしても (`・ω・´) わるくない取引だよ 10ヶ月前 replyretweetfavorite

shigekey "「6時間」考えていい手が見つからなくても、「7時間」考えるといい手が見つかることがあります。"|加藤一二三 @hifumikato | 10ヶ月前 replyretweetfavorite