① 陣地を囲い合ってそれが多い方が勝ち
② 相手の石を囲むと取れる
という2つの根っこから囲碁を見てきました。
この連載は囲碁の入門と謳っておきながら、ここまで「ルール」という言葉はあえて使いませんでした。そして本日、第4回で待望?のルールの登場です。
根っことルールは何が違う?
囲碁は数千年前の中国で発祥したとされており、現在は世界中にたくさんのプレーヤーがいます。この長い歴史の中で、囲碁の「根っこ」だけは変わらずに共通のものとしてあります。しかし、勝敗を決するために必要とされた「人間が決めたルール」が、実はいくつかあり、そしてそれは時代や国によって少しずつ違います。具体的に言えば、引き分けをなくすための決まりのようなものです。
根っことルールは何が違うのかと問われた時に、他の盤上のゲームを見てみるとそれがよくわかります。
インドが発祥とされる将棋系のゲームは、西洋にも発展し、チェスに形を変えました。アジアには中国将棋(シャンチー)、韓国将棋(チャンギ)などがあり、そして日本の伝統である日本将棋があります。
将棋系に共通することは、「相手の王様を取った方が勝ち」という根っこです。駒の動きなどのルールは、その土地の風土に合わせて人々が工夫したことが伺えますね。将棋系はそれぞれのルールによって特色が出ていますが、囲碁は時代や国が違っても、ほとんど同じ形態で楽しまれています。つまり、根っこの存在感が強いゲームと言えそうです。
さて、根っことルールの違いがわかったところで、今回と次回では実際にプレーする場合のルールについてお話しします。「はじめからルールの説明をしてほしかった!」という方もいらっしゃるかと思いますが、囲碁にとってルールは枝葉。根っこがわかっていれば、枝葉は簡単に理解できます。
着手禁止点
図1
囲碁は基本的にどこに打っても良いのですが、白の立場から見ると、AやBの場所は石を置いてもすでに活路がなく、打った瞬間取られる形になってしまいます。こういう場所を「着手禁止点」と呼び、白は打つことができません。 ただし、黒が打つことはできます。黒は打っても取られる形にはならないからです。
図2
たとえば、図2も白から見るとAはすでに包囲されている(=活路がない)場所なので、着手禁止点です。
では、次の図3はどうでしょうか? 黒と白の両方の立場で考えてみましょう。
図3(問題)
いかがでしたか? まずは黒番(黒石を打つ人)から答え合わせです。
図4(解答1)
黒1に打つと、黒石6個の集団になりました。しかし、その集団は周囲を白石に囲まれて活路がないため、打った瞬間取られる形になってしまいます。したがって、「黒にとって黒1は着手禁止点」です。
図5(解答2)
今度は白の立場で考えてみます。白1は周りを黒に囲まれて着手禁止点のように見えますね。ですが、黒の形をよく見てください。白1に打つことによって、黒5子も活路がなくなっています。この場合は白1で黒5子を取れる、つまり黒5子の活路をすべて塞いでいるので、白1に打つことができるのです。白1に打つと、
図6
このような形になります。相手の石を囲むと取れる、という根っこの決まりが強く、着手禁止点のルールよりも優先されているのがわかります。
理解を深めるために次の図7を見てください。
図7
白が1に打ったところです。ここで「あれ? ちょっとおかしいな」と思われるかもしれません。そうなのです。白1の周りにはすでに黒の壁ができており、脱出できそうにありません。 しかし、白1は必ず黒に取られてしまう運命にありますが、まだ活路が1つだけあいているため、ルール上は打っても良い場所になり、着手禁止点ではありません。 そうは言っても、取られることがわかっていてここに打ちたい人はいませんよね。ですが、不思議なことに、周囲の状況が変わると白1が良い手になることがあるのです。
図8
図7に、白石を3つ加えました。さて、先ほどと何が違うのでしょうか?
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