九螺ささら「きえもの」

九螺ささら「きえもの」【アボカド】

殺したい奴がいる。
「食べ頃だな」作家はアボカドサラダを作り始める。
――電子雑誌「yomyom」に連載中の人気連載を出張公開!



 森のバターを閉じ込めたアボカドの皮は出来立ての堅牢な扉




 殺したい奴がいる。

 殺さなければ自分が死ぬ。だから、命を賭して殺さなければならない。

 俺はあるミステリー作品の作中人物だ。

 作者はデビューしたばかりのミステリー作家。

 彼の連載の中で、俺はもうすぐ殺される。

 俺は外界に出る手段を手に入れた。

 真夜中だけ、俺は外に出られる。

 俺はこの世の仕組みを知った。

「中」と「外」は少し違う。

 例えば、中での手榴弾は、外でのアボカドだ。

 中でのアボカドは、外での手榴弾だ。

 作家は、中と外を行き来する。


 俺は、殺される前に奴を殺す。


 あるミステリー作家の家に「お中元」と書かれた宅配便が届いた。

 差出人の名は「FIXER」

 開くと一ダースのつやつやのアボカド。

 作家は思い付く。

 そしてパソコンの前に座り、手榴弾をアボカドと見間違えて投げる南の島の村人を描いた。

 投げられた手榴弾は彼を直撃した。


「食べ頃だな」

 作家はアボカドサラダを作り始める。



「入りたい」「出たい」と希求するベクトルその激しさを生命と呼ぶ


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三宅陽一郎,金子竣,知念実希人,青崎有吾,千街晶之,飯豊まりえ,九螺ささら,恒川光太郎,米原幸佑,辻村深月,乾緑郎,青柳碧人,垣谷美雨,中山七里,門井慶喜,武田綾乃,宮木あや子,最果タヒ,ふみふみこ,小林エリコ,新納翔,カレー沢薫,トミヤマユキコ,手塚マキ,柚木麻子,吉川トリコ,はるな檸檬,新井久幸
新潮社
2018-09-21

この連載について

初回を読む
九螺ささら「きえもの」

九螺ささら /新潮社yom yom編集部

初の著書『神様の住所』がBunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞した歌人・九螺ささらによる、短歌と散文が響き合う不思議な読み物。電子雑誌「yomyom」に連載中の人気連載を出張公開!

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