ユウカはベッドから目が覚めたあとに、水を飲もうと寝室にある冷蔵庫の扉を開けた。 中にはミルクとミネラルウォーターが置いてあった。
「さすが、アキさん。ちゃんと常備してるんだね」
ミルクもまだ買ったばかりらしく新鮮で、アキがまだ寝ているうちにミルクを一杯飲むことにした。
コップに注いだミルクは午後の光に照らされて一点の曇りもないほど純白で、「白ってやっぱり純潔っていう感じよね。だから花嫁衣裳って白いのかな……」と自分の身と比べて、ミルクの純白を少し恨めしく思った。
今朝は、アキと一緒にそのままベッドで運動をしたあと、すぐにスヤスヤと寝入った。 なんだか、心が無性にむしゃくしゃして、何もかも忘れたいとユウカは思っていた。
久しぶりに訪れたアキの家は、初めてこの家を訪れたときと何も変わらず、ユウカを 迎え入れてくれた。
山の中腹に位置しているアキの家(正確には元夫の竜平さんの家だが)は、周りが静穏に包まれて、耳を澄ますと、ときおり鳥獣の鳴き声がする。
竜平さんも今は亡く、葬式でアキにあった時は、この家を手放すと言っていたが、竜平さんとの子どもがお腹の中にいるんなら、きっと事情も変わってくるだろう。
ユウカは遺産相続の件とか、法律とかその辺についてわからなかったが、やっぱりアキさんは転んでもただじゃ起きない女だ、と思っていた。
なぜ、アキは自分にこんなに世話を焼いてくれるんだろう? と思いを巡らし始めた時、アキがベッドから起きてきた。
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